フジロック2010 インタビュー2

ローカル・ネイティヴス、初出場の新人ながらベストアクトと大評判のLAバンド

フジロック2010 インタビュー2

2009年の『SXSW』で一気に注目を集めたローカル・ネイティヴスが、フジロックの、しかもホワイト・ステージで見事な日本デビューを果たした。アフロやトライバル・ビートのベースにノスタルジックなメロディと絶品のコーラスを乗せた……と聞いただけでは、おとなしいバンドを想像してしまうかもしれない。だが、ステージでの彼らは、圧倒的な美しさとインディロックらしいパワフルさでオーディエンスを完全に魅了。大御所から新人まで必見アクトがひしめいていた今年のフジロックにおいて、堂々とベストアクトの高評価とたくさんの新しいファンを獲得した。

その前日、苗場に向かって出発直前のメンバー5人に会うことができた。特によく話すテイラー(Vo、G)とアンディ(B)をはじめ、始終にぎやかなインタビューであったが、収拾がつかなくなりそうな空気が漂うとマット(Dr)がさらりとまとめるという、コーラスワークと同じ抜群のコンビネーションを見せてもらうことができ、ライブへの期待が高まった。初めての東京とフジロック。何もかもが楽しみで仕方ないという様子が印象的だった。

日本に来るのは、今回が初めてですか?

ライアン(G、Vo):僕は15年くらい前に家族と来たことがあるんだ。東京タワーを見たことを覚えている。あれはクールだよね。

まだ出歩いてはいないかもしれませんが、何か印象を受けたものはありましたか?

ケルシー(Vo、Key):みんな、すごく楽しみにしているんだよ。たいてい初めて訪れる街ではオフ日はないものなんだけど、今週末は素晴らしいんだ。明日(フジロックで)ライブをして、その日の夜に(東京に)戻ってきて、その後2日間が完全にオフなんだ。東京を探検できるし、何でも好きなことができる!

何かご予定が?

テイラー:どこに行ったらいいか、全然わからないんだ。おすすめを教えてよ。

何をするのが好きですか?

アンディ:なんでも、だね。

テイラー:食べて、飲んで。日本食も大好きだよ。そうだ!“いかにも”なことは言いたくないんだけど……。日本のカラオケは本当にいいのか、そうでもないのかを教えて欲しいんだ。すごくいいって言われているからさ。

アンディ:本当に“いかにも”だな……。

とても楽しいですよ。全部個室で、タンバリンや衣裳がある店もあって、自由に使えるんですよ。

ケルシー:パーティ・ルームみたいなんだろ。聞いたことがある!

テイラー:楽しみになってきたよ。

アンディ:オー、テイラー。また僕たちを犠牲者にするのか?

英語の歌はあまりないかもしれませんね。

アンディ:それは辛いな。僕たちは日本の歌を知らないし、日本語を読めないからね。ただ画面の文字がハイライトされていくのを見るだけになってしまうね。

テイラー:カラオケに行って、ただ見ているだけって変かな?

食べたり飲んだりするだけでも大丈夫ですよ。

テイラー:飲んで、それとカラオケの映像を見るだけでもいいんだね。

マット:飲で映像を見るだけだよ。テイラー、おまえに言ってるんだよ。

嫌そうですけど、マットも行きますか?

マット:うん。行くことにするよ。

みなさん、本当に仲が良さそうですね。付き合い始めてどれくらいになるんですか?

ケルシー:4年半だね。ライアンとテイラーと僕は高校の頃から近所にいたから、その頃から一緒に音楽をやっていたんだ。で、その1年後にアンディ、最後にマットが入ったのが4年半前。

テイラー:正式に『ローカル・ネイティヴス』がスタートしたのは2年前だね。長い間一緒にプレイしながら、どんな音楽を作って行きたいかを模索していたんだ。当時、みんなが他に仕事をもっていたり学生だったりしたから、まだ“本物のバンド”ではなかった。その間に曲を書いて、気に入った曲をレコーディングしたのが2年前。それで、僕たちは一段階上がった。つまり、本物のバンドになったんだ。

全員がオレンジ・カウンティ出身ですよね。「住人はみんなお金持ち」というイメージがありますが、実際はどんな所なんですか?

テイラー:そうだね。僕たちはすごくリッチだよ。嘘だけど。

アンディ:違うね。いわゆる郊外で、ビーチカルチャー。

ケルシー:ドラマで見るような、ファンシーでみんなが甘ったれている場所ではないよ。僕らが一緒に住んでいたのはオレンジと呼ばれる内陸にある市で、そこでアルバムの曲のほとんどを書いたんだ。その後に引っ越した街も、シルバー・レイクといってアーティスト・フレンドリーな街だよ。ブルックリンやオースティンに似ているね。

初めて曲を聴いた時、ブルックリンのバンドだと思ったのはそのせいですね。旅をたくさんしている感じもしました。

マット:旅はそれほどしていないな。アルバムを作る前の僕らはツアーをしたことなんかなかったし、オレンジ・カウンティとLA周辺ですべてが終わっていたね。

ライアン:僕らの曲に出ているものは、自分たちが当時または過去に聴いたものや、親が聴いていた音楽、友達が教えてくれる最近のバンドからの影響だと思うよ。ブルックリン、またはオースティンのバンドみたいになろうと意識したことも全然ないしね。ただ一つ考えられるのは、僕らは1人が全部の曲を書くのではなくて、5人がコラボレーションして、全員で一緒に作っているので、そこに多様性が出て、旅みたいなものを感じさせるのかもしれないね。

アルバムのアートワークなども含めた、すべての作業を全員で行っているんですよね。このアルバム・ジャケットを手がけたのは誰ですか?とても素敵です。

ライアン:アンディだよ。

マット:僕はグラフィック・デザインを勉強して、このバンド以前にはデザイナーとしてフルタイムで働いていたんだ。ライアンも広告エージェンシーで仕事をしていたし、全員がそうしたデザイン関係の背景をもっているんだよ。

では『Airplanes』と『Shape Shifter』は誰の曲ですか?全員が歌いますよね?

テイラー:4人、もしくは5人歌うね。『Airplanes』はテイラー、『Shape Shifter』はケルシーがメインだよ。

すごく好きな曲で、ライブで聴きたいと思っています。ただ、この曲を聴いていると幸せなのに悲しい気分になるんです。理由はわかりませんが。

アンディ:うん。わかるよ。幸せな曲を聴いているのに悲しくなったり、悲しい曲を聴いてる時に楽しくなったりすることって、あるよね。

ケルシー:悲しい曲の中に込められた希望みたいなものだよね。郷愁のような。

みなさんのアルバムは、本当にホワイトステージの雰囲気にぴったりなので、楽しみにしています。山に囲まれているので、びっくりするかもしれませんよ。

全員:ビューティフル。楽しみだな。

フジロックで、ライブを見たいバンドはいますか?

アンディ:もちろん。金曜日のライブが終わったら、Dirty ProjectorsやBroken Social Sceneとハングアウトしたいね。

ケルシー:今、ヨーロッパやアメリカもフェスシーズンで、あちこち廻る間に僕たちが大ファンのBroken Social Sceneと仲良くなれたんだ。一緒にプレイしたThe Xxにも、また会うのが楽しみだよ。

会場もとても広いですし、おいしいご飯もたくさんあります。散歩もしてくださいね。

ケルシー:蚊はたくさんいるかな?

今年はダニが多いという噂があります。

ケルシー:オーノー。

テイラー:ケルシーはいつも虫にやられるタイプなんだ。

最近、King of Leonが鳩の糞のせいでライブを止めた話を聞きましたけど……。

全員:(笑)

ケルシー:それは聞いたよ。すごくおかしいよね!ビデオがあるといいな。

みなさんに同じことが起こらないように願っています。だけど、そんなことでライブを止めないでくださいね。

テイラー:『Airplanes』をプレイする前に、ケルシーは蚊に刺されまくって骸骨がキーボードに向かっているかもしれないね。残念ながら、歌は聴けないよ!

日本で初めてのライブはどんなものになるのでしょうか?

ケルシー:ライブでは、アルバムとは違うエネルギーを感じてもらえると思うよ。アルバムはチルアウトのようなリラックスしたものになっているけれど、ライブはずっとエネルギッシュで生々しい感じになるよ。今回のライブがうまくいって、また日本に来られたらうれしいよ。

苗場でお待ちしていますね。ところで、時差ボケは大丈夫ですか?

マット:今のところは大丈夫かな。

日本には、レッドブルでもロックスターより強力なエナジードリンクがありますから、大丈夫ですよ。

ライアン:それは何ていう名前なの?

『リポビタンD』です。

ライアン:『リポビタンD』?。なんだか油っぽそうな名前だな……。

『Gorilla Manor(ゴリラ・マナー)』Local Natives
発売日:2010年8月4日(水)
レーベル:INFECTIONS / HOSTESS
オフィシャルサイト:www.thelocalnatives.com/

テキスト 道辻麻依
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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