フジロック2010 インタビュー1

ニューキャッスル出身の新人、デトロイト・ソーシャル・クラブ

フジロック2010 インタビュー1

オアシスやプライル・スクリームがライブのオープニングアクトに抜擢したことで話題を呼んだイギリス、ニューキャッスル出身のバンド『デトロイト・ソーシャル・クラブ』。アークティック・モンキーズやカサビアン、ザ・テンパー・トラップを手がけたジム・アビスがプロデュースしたデビューアルバム『Existence(イグジステンス)』が2010年7月7日にリリースされ、初来日のステージはフジロック・フェスティバル2010で飾った。ヴォーカル、ギターのデヴィッド・バーンに、フジロックでのパフォーマンスや日本の印象について話を聞いた。

もとは6人のグループでしたが、フジロックは初めて5人でパフォーマンスしたステージでしたね。どうでしたか?

D:2年間もずっと一緒にプレイしてきた旧友のメンガーがいないのはとても寂しかった。だけど、5人で続けていく未来に向けて、前向きで楽観的な気持ちもあって、その最初のショーをフジロックでできたというのは、とても幸せなことだ。これ以上のセッティングはなかったと思うよ。

この曲は、観客の心をつかんだ!と思った瞬間はありましたか?

D:アルバム『イグジステンス』の1曲目、『Kiss The Sun』をステージに出ていくと同時にやったんだけど、すぐに皆が踊り始めてくれて、反応を見るのがとても嬉しかった。それから、『Sunshine People』って曲で最後を締めくくったのだけど、皆の愛を感じることができたと思う。だけど、本当に暑くてね。僕はバカみたいに白いスーツを着てステージに立っていたから(笑)、気を失いそうになってしまって、1曲カットせざるを得なかったんだ。くらくらしてしまってね(笑)。でも、本当に素晴らしいパフォーマンスになったと思っているよ。

フジロック・フェスティバルが、他の都市で開催されるフェスティバルと違う点や、特別なことはありましたか?

D:場所が素晴らしいことがまずあげられるね。実は僕ら、ヨーロッパを離れてアジアに来るのは初めてなのだけど、空港から会場まで移動する間に目にした田舎の風景も素晴らしかった。それから、ヨーロッパのフェスティバルは、やはりお酒が中心になることが多くて、それはそれで楽しいのだけど、日本のフジロックにはもっと先進的でスピリチュアルなものを感じる。言葉にするのは難しいけれど、とても深いものがあると思う。

誰か他のアーティストのライブを観たりはしましたか?

D:日曜日にAIRとMASSIVE ATTACKを観たかったのだけど、土曜日に出演した後、すぐ東京に戻って来なくてはいけなくて、観られなかった。とても残念だよ。だけど、バックステージでたくさんのアーティストに会えたのは嬉しかったね。

苗場から戻って東京ではどんなことをして過ごしたのですか?

D:他のメンバーはすでにイギリスに帰ったのだけど、僕は日曜日が1日オフだったんだ。だけど、時差ぼけと、前の晩に飲んだ緑茶が効いて眠れなくて、明け方から半日寝てしまってね。その後、明治神宮に行って、本物の日本を見せてもらった。東京は都会だから、H&MとかZARAとか、ヨーロッパにもあるお店が建ち並んでいて、どこか本物の日本を観ている感じがしていなかったんだけど、神社は素晴らしかった。でも、うろうろしていて暑さ負けしてしまって、正直、二日酔いもあったし(笑)、息も絶え絶えになって、すぐにホテルに戻ってしまったんだ。夜は映画『キル・ビル』にも登場した『権八』に連れて行ってもらったよ。とても楽しい食事だった。

4歳の娘さん、エルちゃんにはどんなお土産を買ったんですか?

D:暑さ負けしてしまったから、結局まだ何も買えていなくて、とても罪悪感でいっぱいなんだ。空港に何かかわいいものがあると良いけどね。

ところで“エル”という娘さんの名前は、ファッション誌と同じスペルなんですか?

D:そうだよ、“Elle”。彼女が生まれる前に、僕は女の子の名前を5つ考えなきゃいけなかったんだ。それで、彼女の母親が男の子の名前を5つ考えていたの。もし、女の子が生まれたら、母親が僕のリストから名前をピックアップすることになっていたんだ。4つ考えた後、もう1つリストに加えるものをずっと考えていたのだけど、雑誌の『ELLE』を読んでいて、ぴんときたんだ。母親もそれが気に入っていたし、生まれた瞬間、やっぱり“Elle”だ、って思った。どこに出かけるのにも、彼女の写真は必ず持ち歩いているよ。最近ね、僕が朝寝坊をしていると起こしに来るんだけど、それでも僕が寝続けていると、カメラを持ち出してきて、僕のねぼけた顔を写真に撮るんだ。そうするともう、僕も起きざるを得ないことを知っているんだ(笑)。

東京からロンドンまで、長いフライトですが、どんなことをしていますか?

D:寝るか、映画を観るか、しゃべるか。だけど、真面目な話をするとね、地元にいるとゆっくり言葉を書き留めたりする時間がないけど、飛行機の中では色んなことを考えられるので、とにかく色んな言葉を書くんだ。それから、曲のアイディアを書いたりもするよ。まぁ、12時間くらいのフライトの後に、僕の場合はマンチェスターからニューキャッスルまでの道のりもあるからね!色々できる良いチャンスだよね。

そうそう、ニューキャッスル出身なのに、どうしてバンドは『デトロイト・ソーシャル・クラブ』と名付けたのですか?

D:アメリカの影響を強く受けていて、音楽的にいうと、ボブ・ディランとかね。音楽的に好きな場所で、アメリカの大学に通っている時に、とても興味を持ったのが、デトロイトという街なんだ。それから、ソーシャル・クラブというのは、僕の出身地であるニューキャッスルには、工場とかが多くてね、働く人たちが1週間のうさをはらすので集まって飲んだりすることをソーシャル・クラブと言うんだよ。バンドの名前は、アメリカと、そういういかにもイギリスのものを混ぜた名前にしてみた。ニューキャッスルという街は、かつては工業地帯であんまり美しい街ではなかったけど、最近は博物館や美術館もたくさんできて、素敵だよ。ちょっと郊外に出れば、歴史を感じられる街並みが残っているから、日本の人たちは大好きだと思う。ロンドンを旅した人はだいたいエジンバラに行っちゃうけど、ぜひその途中にニューキャッスルにも寄ってほしいね。

もちろん、また日本にも戻って来たいよ。今、インタビューを受けている、この会議室の壁の向こうにいる人たちにかかっているんだけどね(笑)。

『Existence(イグジステンス)』
2010年7月7日(水)発売
2200円(税込み)

テキスト 東谷彰子
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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