2015年02月04日 (水) 掲載
西武新宿駅から本川越駅までを結ぶ、西武新宿線。黄色い電車が各駅停車する、新井薬師前、沼袋、野方の駅前は、その3駅から程近いJR中央線の中野や高円寺駅前と比べて知名度も低く、のどかな雰囲気が漂う。そんな「用事がなければ降りない駅」とまで言われがちな場所だが、降りてみれば西武新宿線の谷根千的存在と言っても過言ではないほど、味わい深い街だ。今では数少なくなった銭湯や卓球場が地元の人で賑わう沼袋、野方の商店街は活気に溢れ、新井薬師前には有名な梅照院から非常に個性的な公園まである。そして、どの駅前もグルメスポットとして、主に飲ん兵衛たちから、厚い支持を得ているのだ。勝手ながら、タイムアウト東京はこの取材を機に、新井薬師前、沼袋、野方を、西武新宿線の新沼野(あらぬまの)と命名した。知られざる西武新宿線ワールドにどっぷりと浸かってみてほしい。
野方は5つの商店街がある、ショッピングの街。どの商店街も賑わっているが、この記事では北原通り周辺のグルメスポットと、野方本町通りにある2軒の店に焦点を当てた。また、野方はラーメン激戦区でもある。野方ホープを筆頭に数々の店がしのぎを削っているが、野方はラーメンだけではないということも知ってほしい。
1936年の創業以来、親子3代続く、野方の台所として地元民に愛され続ける食堂。店内は平日休日問わずいつでも賑わっており、女性1人の客も多い。そして、昼からビールを飲んでもあまり罪悪感が湧かないのもポイント。料理の美味しい居酒屋として、夜訪れるのもあり。野方食堂でランチをとる際、ぜひ試してみてほしいのが、『A定食』(920円)。野方食堂名物の『とりから』と、豚肉生姜焼き、味噌汁、白飯、漬け物2品という、ボリュームたっぷりの定食で、特に自家製のタレに漬け込まれた大きな鶏の唐揚げは絶品。1度訪れれば、また必ず再訪したくなる魅力溢れる店だ。
せっかく野方を訪れたなら、野方ホープの本店詣では欠かせない。野方駅から徒歩10分ほど、環七沿いにある同店は、かつてのラーメン激戦区、環七沿いのラーメンブームの一翼を担っていた老舗。以前と比べラーメン店が少なくなった今でも、その人気は衰えていない。看板メニューの『野方ホープラーメン』(740円)は、鶏ガラと香味野菜の合わせスープと野菜のスープ、ゲンコツと背ガラと豚のスネ肉のスープを合わせたトリプルスープが特徴。とんこつベースのまろやかな甘みが美味しい。背脂量は調節可能だ。
ランチを済ませたら、商店街で買い物をしよう。ここでは北原通りにある、惣菜屋、弁当屋、ベーカリーと、野方本町通りにある手焼き煎餅店をピックアップ。どの店も駅から徒歩5分圏内だ。両手を絶品グルメでいっぱいにしよう。
野方駅の北口と南口にある惣菜店、とりふじ。ここは焼き鳥メインの惣菜店だが、頼むべきは『マグロメンチ』(190円)と、『スパイシーポテト』(130円)。どちらも1つ食べれば満腹になりそうなボリュームが特徴。魚の臭みのないタマネギベースのメンチや、スパイシーで味付け濃いめのポテトを買って帰宅後、電子レンジで温めれば、立派な酒のつまみになる。家族への土産や夕飯にも最適だ。
家族で営んでいる、アットホームな弁当屋。様々なセットがあり、どれもグリーンサラダや好きなおかず、パスタやライスなどを日替わりメニューから選ぶことができるのが楽しい。どのメニューも野菜中心、家庭的な味付けで、地元の主婦やOL、1人暮らしの学生たちに大人気。晴れた日にはここで弁当を買って、2駅ほど先の哲学堂公園まで、30分ほど散歩するのもあり。たくさん歩いて野菜をもりもり食べれば、きっと健康になれるはず。
2014年11月にオープン以来人気の絶えない、とても小さなベーカリー。店内が狭いのもあり常に混雑しているが、同店のパンは待つのも苦にならない美味しさ。クロワッサンやデニッシュ、カレーパンなどが人気だが、すぐに売り切れてしまうことも。写真の『フランボワーズデニッシュ』(216円)は、バターたっぷりでサクサクのデニッシュに、甘酸っぱいフランボワーズジャムとチーズが乗った、見た目も美しい逸品。一口食べれば幸せな気分になれる。
1933年創業の手焼き煎餅店。創業以来変わらない味を守りつつ、常に新しい味を創作しており、店内には、常時20種類の手焼き煎餅と60種類のあられが並び、季節ごとに異なる風味を楽しむことができる。とろろ昆布を巻いた薄焼き『磯の雪』や、チーズに青のりの風味が絶妙にマッチした『青のりチーズ』など、様々な種類の煎餅の小袋が150円前後で購入できるので、手土産にも最適。可愛らしい店構えと細々とした煎餅の小袋に、ついつい買いすぎてしまうこと間違いなし。
食べ物ばかり買い歩きして疲れたら、コーヒーでも飲んで一休みしたいところ。野方に来たら絶対に訪れたい喫茶店が、無垢。この店で地元の常連客や店員の話し声に耳を傾ければ、野方がとても住みやすく魅力的で、愛すべき街だということがわかるはずだ。
地元民に愛される喫茶店。店内は常連客で溢れており、いつ訪れても活気がある。この店を訪れたらぜひ頼みたいのが、『ケーキセット』(650円)。『クリームチーズ』、『オレンジチーズ』、『モカチョコチーズ』、『レアチーズ』など、様々な味の手作りチーズケーキと、熱い石釜ブレンドの組み合わせがおすすめだ。ほかにも、カレーやパスタ、あんみつやトーストなど、喫茶店メニューが一通り揃っている。親しみやすい店員や地元民の話し声もどこか心地よく、誰もがほっと一息つける暖かい空間だ。
野方に来たなら絶対に行くべき店として、野方食堂や無垢などを挙げたが、もうひとつ、酒好きならば行かねばならぬ店がある。それは、焼きとん界の名店、秋元屋だ。焼きとんを楽しんだあとに訪れたい、2軒目の店もピックアップした。
「やきとん」と書かれた紺の暖簾が目印の、焼きとん界の名店。新鮮なもつを使った『ちれ味噌焼き』をはじめ、『はつ』『たんした』『かしらあぶら』『つくね』などの豊富なメニューを120円から楽しめる。液体状の味噌ダレに浸けながら焼き上げる味噌焼きに魅了されるファンは多い。『もつ煮込み』(380円)も人気だが、名物の『半焼きちれ』は1度試しておきたい。やきとんの味付けに迷った場合は、店員におすすめを聞こう。味噌焼きを食べつつ『シャリキンホッピー』を煽れば、最高の気分になれる。
テントで過ごす時間を味わえるような雰囲気が魅力のカフェバー。夜が更けると、どこからともなく人が集まってくる、アットホームな店。様々な種類の燻製も美味しいが、『香味野菜のスパイシーキーマカレー』(850円)や、『テント タコライス』(800円)もおすすめ。どれもほのかにスパイシーだが優しい味付けで、何度でも食べたくなる。燻製などのつまみにはビールが最高に合うが、冬はホットワインやホットサングリアを飲むのも良い。ほかにもワインや焼酎、カクテルなど、バーメニューが揃っている。
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