東京、美しい文具に出会える店15

数十円から楽しめる小宇宙、東京の個性豊かな文具専門店を巡る

子ども時代に使い始め、生涯を通して私たちのそばにある生活の道具、文具。たった数十円の小さな実用品から、蒐集家を魅了する逸品まで、機能性と美しさの両方を求められるステーショナリーの世界は広くて深い。職人やデザイナーの情熱から生まれた結晶のようなローカル製品、海を越えてやってきた異文化の香り漂う輸入文具。そんなステーショナリーへの愛が詰まった専門店が東京にはいくつもある。ここでは、タイムアウト編集部が選んだ個性豊かな15軒を、各店に尋ねたいちおし商品とともに紹介する。


PAPIER LABO.

千駄ヶ谷にある「紙と紙にまつわるプロダクト」を扱うショップ。印刷や加工、素材にこだわったオリジナル製品とともに、国内外の小さな活版印刷工房やアーティストなど、独自の視点で選んだ作り手たちの美しい紙製品と文具が並ぶ。紙や文字、印刷好きにはたまらない店だ。
そんな同店のいちおしは、代表の江藤公昭がデザインを手がけた『One Word Card』(216円)。優しい手触りの厚手の紙に、箔押しで「Thank You」「Happy Birthday」「Nice」の一言が記され、側面も箔で彩られた小さなカードは、シンプルな佇まいに職人の技術がキラリと光る、美しい一品だ。そのほか、家を建てるときに出る木の端材で作った家型の鉛筆削り『PENCILVILLA』(1,512円)や、鹿児島の職人が薩摩つげの枝で作る、世界に1つだけの『昇文堂印鑑』(8,640円)もおすすめ。また、名刺やDM、結婚式の招待状といった各種印刷物や、紙にエンボス加工を施せるオリジナルのエンボッサーなどの注文も承っているので、ぜひ気軽に訪ねてみてほしい。
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scos

本郷の東京大学近くにある輸入文具店。ドイツをはじめとするヨーロッパ諸国の、色鮮やかな文具や紙製品がぎっしりと詰まった店内は、好奇心をくすぐって止まない宝箱のようだ。オープンから15年目を迎えた今も、まだ見ぬ文具を探して、ヨーロッパに足を運び続けているという店主のセレクトは、新製品からデッドストックまで幅広い。
そんな同店のいちおしは、ドイツの『Herlitz A5ソフトノート』(648円)と2015年に発売されたペン『Schneider Slider TouchXB』(399円)。前者は、その使いやすさとデザインの美しさから、10年以上も取り扱っている定番品。方眼と横罫の2種類があり、150シートもある大容量のページが嬉しい。また、角が丸くなっており、鞄の中で傷まないのもポイントだ。後者は、スマホやタブレットの入力に便利なタッチペンとボールペンが1本になった優れもの。とても軽いので持ち運びにも邪魔にならず、値段も手頃なのが素晴らしい。そのほか、ドイツ作家が手がける『Gollnow Paper Creations』の立体動物カードもおすすめ。ぜひ店頭で手に取ってみてほしい。
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書斎館

青山の骨董通りから路地に入った場所にひっそりと佇む、筆記具の専門店。小さな庭のようなアプローチを抜けると、静かなミュージアムのような非日常の空間が広がっている。美しくディスプレイされた世界各国の万年筆、昭和の古雑誌が並ぶ書棚。洗練された雰囲気ながら、古い学習机などが置かれた空間はノスタルジックな空気も漂う。忙しい毎日だからこそ、あえて手間のかかる万年筆を使い、その手入れの時間までをも愛でる。そんな静かな時の流れを楽しむ「大人のゆとり」を提唱している。
そんな同店のいちおしは、イタリアで1982年に創業した『デルタ』の万年筆『ドルチェビータ ミディアム オリジナル』(86,400円)。南イタリアの太陽のような、鮮やかなオレンジが印象的なボディは、伝統職人が1本1本丁寧に削り出した、ハンドメイドのレジン製。「Made in Italy」の品質の高さと華やかなデザインが、特に男性に人気だという。そのほか、同店が扱う万年筆は、1万円から、10万円を中心価格帯に、愛好家向けの珍しい限定品や蒔絵など、上は250万円までの3000本が揃い、海外からも顧客が足を運ぶ。自分や誰かへのギフトに、あるいはいつか手にしたい1本をゆっくりと探してみてほしい。
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カキモリ

蔵前の国際通り沿いにある、「書く」という行為にフォーカスした文具専門店。店内で作るオリジナルノートや筆記具、インク、レターセットなど、使い心地にこだわってセレクトした文具を取り扱う。壁面にずらりとディスプレイされた万年筆は、自由に手に取って試し書きすることが可能だ。
そんな同店のいちおしは、看板商品の『カキモリのオーダーノート』(800円〜)。ノートを構成する各パーツを選べば、スタッフが10分ほどで「自分だけの1冊」を製本してくれる。表紙、中紙、留め具ともそれぞれ数十種類を揃え、その多くが近隣エリアの職人やメーカーに発注したオリジナルパーツだ。近年は、イラストレーターの安原ちひろ、代官山のcoccaらとコラボレーションするなど、「横のつながり」を大切に、ものづくりの幅を広げている。そんな「Made in Tokyo」のオリジナルノートを求め、平日でも多くの人が訪れる同店。時間に余裕を持って出かけ、こだわりの組み合わせをじっくり選んでほしい。2014年には、オリジナルインクが作れるラボのようなインク専門店、ink stand by kakimoriを隣にオープンした。
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アンジェ ビュロー KITTE丸の内店

東京駅前の商業施設、KITTE内にある「書斎」をテーマにした文具店。京都の人気雑貨店が手がける同店は、落ち着いた木目調の空間に、大人のための上質な文具やデスク周りの雑貨、書籍などが並ぶ。東京駅前という場所柄、国内外から訪れる買い物客でいつも賑わっている。
そんな同店のいちおしは、組み立て式のシャープペンシル『Varacil』(972円)。立体パズルのようにひとつひとつパーツを組み合わせて作る「Made in Japan」の遊べる筆記用具だ。接着剤を使わず、組み立てた後でまたバラバラにできるので繰り返し遊べ、日本らしい「面白文具」として外国人客にも喜ばれているという。そのほか、机の上をすっきりと見せてくれる「道具箱」もおすすめ。同店の内装を手がけた家具店、STANDARD TRADEで製作した、シックな木製の『オリジナル道具箱』(23,760円)から、1,000円以下で買える気軽な紙製のものまで、予算や好みに合わせて選んでほしい。毎月のように大きく入れ替えるという美しいディスプレイも魅力の同店。訪れるたびに発見がある。
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GOAT

御徒町の小さなビルの3階に、2012年にオープンした文具専門店。店主は、東京が誇るノートブランド『LIFE』のデザインを手がけるグラフィックデザイナー。『LIFE』『ツバメノート』『榛原』『文化事務用品』『菅公工業』といった「Made in Tokyo」の文房具を中心に揃えており、職人やデザイナーが製品を生み出す現場を知っている店主ならではの、文具への愛情が伝わってくる。
そんな同店のいちおしは、イラストレーター、ますこえりとのコラボレーションから生まれたオリジナルスタンプ『マスコハンコ』(小972円、大1,296円)。レトロで遊び心ある絵柄が魅力の人気商品だ。文京区の老舗ゴム印メーカーによる「Made in Japan」の品質の高さにもこだわっており、「OK」「ありがとうございます」「謹呈」「祝」「愛」「請求書在中」など、現在12柄を展開。事務的な伝言もこのスタンプひとつでぱっと和やかになる。そのほか、細部までこだわりの詰まった「東京文具」と出会いたいなら、ぜひこの「East Tokyo」の小さなセレクトショップを訪ねてみてほしい。
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デルフォニックス渋谷

渋谷パルコの地下1階にある、ステーショナリーメーカー『デルフォニックス』の直営店。その洗練されたデザインから同社を海外メーカーだと思っている人も少なくないが、誕生したのは1980年代の東京。初の直営店として1997年にオープンしたこの渋谷店は、機能性と美しさにこだわった自社製品はもちろん、『ラミー』『ロディア』『KAWECO』『BRAUN』といった輸入製品も取り揃え、デスク周りの文具雑貨好きにはたまらないセレクトショップとなっている。
そんな同店のいちおしは、同ブランドを代表する『ロルバーン』シリーズのポケット付メモ(270円〜1,296円)。全13色の鮮やかなカラーバリエーション、鞄の中でも傷まない角丸の丈夫な表紙、目に優しいクリーム色のページ、チケットや小さな資料を入れておける巻末の透明ポケット。すべてのページにミシン目が付いているため、相手にメモを渡すときにもスマートだ。そのシンプルで飽きのこないデザインと使い勝手のよさから、リピーターが多いというのも頷ける。2011年には、パリのルーブル美術館に初の海外店舗をオープンし、印象的な多色展開、使い心地への細やかなこだわり、客の目の前で行うラッピングサービスなど、その「日本らしさ」が人気を集めているという。今後、ますますの飛躍が期待される東京発ブランドだ。
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Giovanni 吉祥寺店

吉祥寺の中道通り沿いにある輸入文具専門店。ヨーロッパの貴族やギルドに愛用された紋章入りの封蝋、中世の錬金術師や天体器具、ダンテが使った羽ペン、メディチ家が集めた珍奇な品々。もしそうした言葉に目を輝かせるような人なら、ここはまさに宝箱のような場所だ。店主がイタリアで直接買い付けた、こだわりのシーリングスタンプや羽ペン、蔵書印、羊皮紙など、ヨーロッパで古くから使われてきた美しい文房具や珍しいオブジェが並ぶ店内は、まるでミュージアムのよう。店内のほぼすべてを「Made in EU」の製品が占め、ヨーロッパ圏外ではここでしか買えないものも多いため、アジア各国からわざわざ訪ねてくる顧客も少なくないという。
そんな同店のいちおしは、ルネサンス期の騎士団や中世都市国家の紋章を彫り込んだシーリングスタンプ『ルネサンスシール』(6,480円)。イタリアの工房に発注した、ここでしか買えないオリジナル商品だ。付属の木製ハンドルも美しい。また、初めての人やプレゼントには、スタンプとハンドルとワックスがセットになった箱入りの『ギフトセット』(2,700円〜)もおすすめ。もし自分だけの1本が欲しいなら、オリジナルデザインのスタンプをオーダーすることもできる。
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つくし文具店

国分寺市の静かな住宅街にある、小さな文具店。角地に建つ白い店舗は、黄色の花を咲かせるモッコウバラに覆われ、傍らの赤い郵便ポストと青い旗とのコントラストが目を引く。店主を務めるのは、デザインディレクターの萩原修。1960年代から90年代まで中学校近くの文具店として営まれた母の店を継ぎ、2004年にリニューアルオープンした。店内には、9種類のオリジナル文具を中心に、店主が作り手の顔を知る他社のプロダクトも並ぶ。
そんな同店のいちおしは、オリジナル文具のなかでも特に思い入れが深い『つくしノート』(2,052円)と『つくしえんぴつ』(972円/箱入り5本、194円/1本)。前者は「創造力を豊かに、自由を広げる」ためのノート。長野の美篶堂による手製本ゆえの開きのよさ、手に馴染む、丈夫なグレーの表紙、絵も文字も自由に書ける無地のページ、美しく見える位置を計算されたゴム留めなど、シンプルな佇まいに細かなこだわりが詰まっている。後者は、あえて柔らかい4B芯を採用した「Made in Tokyo」の鉛筆。サインペンのように太めで短く、筆圧をかけずにすらすら書けるので、コピーライターにも人気があるという。そのほか、どれも使い手の立場から生まれたオリジナル文具は、自由な発想を助けるシンプルな機能美を備えたものばかり。地域との繋がりを大切に、様々なワークショップや展覧会も開催している同店。地域に開かれた「実験の場」として、ただ文具を販売するだけでなく、その可能性を追求している。
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鳩居堂

銀座の中心、銀座四丁目交差点近くに本店を構える、香と和文具の専門店。1663年に京都で創業し、その薫香は朝廷に献上されてきたという老舗中の老舗だ。明治の東京遷都に合わせ、1880年に東京へ進出し、現在も創業者の子孫によって経営されている。美しいレンガのアーチが目を引く銀座本店には、香や書画用品、はがき、便せん、金封といった様々な和紙製品がずらりと並び、国内外からの買い物客でいつも賑わっている。
そんな同店のいちおしは、京都の色鮮やかな友禅紙を薄型ノートに仕立てた、オリジナルの『マル鳩(キュー)ノート』。A6サイズ(421円)とA5サイズ(583円)があり、中紙は横罫、方眼、無地の3種類、表紙は5つの柄から選べる。そのほか、季節の移ろいを告げる、シルク刷りのオリジナルはがきや、美しい和紙で作られた小物は、手頃な価格で気軽な土産にもぴったり。メールやSNSばかりの毎日に飽きたら、美しい便せんに芳しい文香を添えて、静かに手紙をしたためる日本文化を楽しんでみるのも素敵だ。
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Sublo

吉祥寺通り沿いに建つ、古いビルの2階にある文具店。ぎぎっときしむ木の扉を開けると、商工会館前交差点を見下ろす窓から光が差し込み、どこか懐かしい空気の漂う空間が広がっている。「サブロ」と読む店名は、京都で文具店を営んでいた、店主の祖父の名前に由来する。店主が子どもの頃に触れ、大人になってその魅力に改めて気づいたという「昭和の時代から愛され続ける定番文具」をはじめ、豊富な品揃えの守備範囲は、実用からノスタルジーまで幅広い。
そんな同店のいちおしは、イラストレーターのほしのしほが4種類の絵柄を手がけた、オリジナル商品の『携帯用日付スタンプ』(4,320円)。銀色のスティック型ボディは手のひらサイズで、蓋にインクパッドを納められる。そのほか、店主とつながりのあるイラストレーターたちが描いた、吉祥寺の非公認ゆるキャラ『吉ぞうさん』をはじめとするオリジナルキャラクターや文房具柄などのオリジナル商品を100種類以上展開。特にマスキングテープや包装紙、スタンプの品揃えには目を見張るものがあり、全国から文具好きが訪ねてくるという、小さな有名店だ。
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K.Itoya

銀座で100年以上の歴史を持つ老舗文房具店の伊東屋が、本店近くに2012年にオープンした「大人の隠れ家」がコンセプトの店。本店が毎日使いたい文房具を幅広く揃えるのに対し、こちらは高級筆記具を中心に、ギフトにもぴったりの書斎に置きたいオブジェ、色鮮やかに取り揃えられた国内外の画材や額縁など、クリエイティブな時間を心地良くしてくれるような、洗練されたアイテムが並ぶ。長く大切に付き合いたい文房具を、落ち着いた空間でじっくりと選びたい人には最適の店だ。
そんな同店のいちおしは、今の時代にあえておすすめしたい、美しいオリジナル鉛筆『イートン鉛筆』(75円)と『六角ペンシル』(840円/箱入り12本)。前者は1985年の発売以来、根強い人気を誇る丸軸鉛筆だ。目に映えるシンプルな軸カラー、消しゴムが一体となった無駄のないデザインは、他にありそうでない、洗練された佇まいを見せる。後者は、六角形の軸と柔らかめの硬度を採用し、優しい書き心地にこだわった鉛筆。レトロな紙箱も魅力で、ファンシー文具より美しい筆記用具を子どもに贈りたいという人には、いい候補になるだろう。どちらも名入れが可能なので、入学や開業祝いなどのプレゼントにも人気だ。2015年6月16日には、2013年から仮店舗で営業してきた銀座本店がいよいよリニューアルオープン。文房具好きが一日過ごせる「文房具のデパート」の新たな門出に期待が膨らむ。
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山田文具店

三鷹駅南の三鷹産業プラザ内にある文具専門店。「どこか懐かしくて味のある、ストーリーを持つ文具たち」を揃えた街の文具店として、2008年にオープン。確かなコンセプトと歴史を持つロングセラー商品や、学校や図書館で使われている定番品を中心に、書く、塗る、切る、留める、貼る、綴じる、包むといった日々の行為を楽しくしてくれる、1000点以上の文具雑貨が並ぶ。
そんな同店のいちおしは、小学校の図書室や公共図書館で実際に使われてきた「図書館グッズ」。思わず「懐かしい!」と叫びたくなる『貸し出しカード』(129円)や背表紙に貼る『案内ラベル シール』(64円)、メモやカード入れにも使える『ブックポケット 5枚入り』(108円)など、バーコード管理が主流になった今では目にする機会が少なくなったものばかりだ。そのほか、海外の市場で使われている紙袋、作家もののマスキングテープ、くすっと笑えるデザインのシールやレターセットなど、国内外のまだ見ぬ紙製品を求めて、足繁く通う女性客も多いという。数十円から買い物が楽しめるので、子どもが楽しそうに買い物している姿によく出会うのも印象的だ。
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& note

原宿の明治神宮前交差点近くに、2014年にオープンした小さな文具店。「当たり前のものに自分なりのこだわりを持つ」をコンセプトに、日々の生活のなかで「あったらいいな」と感じた文具をセレクトしている。おしゃれで使いやすい筆記用具やノートといった定番アイテムのほか、日本文化を意識した「和」コーナー、大人の男性に向けた「黒」コーナー、スタッフのイエロー好きから生まれた「黄色」コーナーなど、店内は複数のセクションに分かれている。原宿という場所柄、国内外からの旅行客も多く、日本の名所をミニチュアで再現できるペーパークラフトなど、東京や日本らしさを感じる紙製品も人気だという。
そんな同店のいちおしは、1冊ずつ表情の違う、古い洋書のような『ラフノート』(864円)。不揃いな紙端が味のある、アンティーク仕様のメモパッドだ。そのほか、日本文具大賞を受賞した『365デイズノート』(1,620円〜1,728円)や「文具王」と呼ばれる高畑正幸が考案した『アクセスノート』(2,570円)など、機能性を追求したノートもおすすめ。様々な文具の魅力がぎゅっと詰まった空間で、お気に入りを探してみてはいかがだろう。
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中村文具店

小金井市の住宅街にある、週末のみ営業の古文具専門店。店主は、武蔵小金井駅前で60年続いた街の文具店の3代目。駅前の再開発のために閉店した旧店の倉庫から、昔懐かしい昭和の文房具がたくさん見つかったのをきっかけに、2010年に「Made in Japan」のヴィンテージ文具の専門店をオープンした。廃業を決めた文具店や卸業者のデッドストックの山から発掘された、戦前期からの貴重なアイテムが並ぶ店内は、さながら私設ミュージアム。その噂を聞きつけた、香港や台湾をはじめとする海外からのコレクター客も増えているという。
そんな同店のいちおしは、最近力を入れているという、1点ものの「アップサイクル」商品。これまで蒐集してきた、往時のタイポグラフィや意匠が美しい昭和の古雑誌や広告の実物を表紙に用い、中紙も同時代の古紙にこだわったメモ帳やノートは、東京の職人がひとつひとつ製本した特注品ながら、なんと数百円から購入できる。少々分かりにくい場所にあるが、苦労してもたどり着くべき、隠れた宝石のような店。こういう店があるから、東京は面白い。なお、2015年内には駅近くに移転を予定している。
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テキスト 原田 潤
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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