2014年11月25日 (火) 掲載
クリストファー・ノーラン監督の『インターステラー』は、圧倒的で時間の感覚を狂わせる壮大な宇宙の物語。 アルフォンソ・キュアロンが監督した『ゼロ・グラビティ』は今作のための前振りかのように感じられる。この非現実的で美しい宇宙の物語は、私たちの将来を想像させるような現実も考えさせられる作品であった。
この映画の驚きを内容を明かさずに語るのは難しい。なので、簡単に説明したいと思う。現代からそう遠くない未来で、主人公 クーパー (マシュー・マコノヒー) は、唯一の頼りである巨大なトウモロコシ畑を育てることを仕事とし、義理の父 (ジョン・リスゴー) と小さな子ども2人と暮らしている。そこは、1930年代の大恐慌が滅亡寸前の地球に移植されたような、危うい世界なのである。 ある日クーパーは、年老いたブランド博士 (マイケル・ケイン)が指揮する、地球を救う極秘プロジェクトに参加することを運命づけられる。そこでブランドの娘 (アン・ハサウェイ)と、2人の科学者 (ウェス・ベントリー、デビッド・ジアジー)と一緒に宇宙への果てしない旅へ出ることとなる。このミッションは月へ向かうのとは違い、彼らの目標は土星近くのワームホール(ワープが可能なホール)を通り抜け、生命を維持できる他の惑星を捜すことであった。もちろん、帰って来れるという保証はない。
制作に宇宙物理学者キップ・ソーンが参加しているため、公式やワームホールについて理解が難しいレベルで語られるが、ムードを高める音楽のように聞いてほしい。『インターステラー』は、宇宙がテーマでありながら、ノーランのこれまでで最も現実的な映画の1つである。『ダークナイト三部作』(2005-2012)や『インセプション』(2010)を撮る前の、ノーランの初期のヒット作『メメント』(2000)でも、驚くべき映画の世界を見せつけられていることに気づいた。ノーランはこの点で素晴らしいキャストに上手く助けられていると言えるだろう。今作では、マコノヒーのたくましさと家庭的な男の脆さがうまくはまっており、数十年に渡る宇宙旅行という現実が始まるときの彼の涙には真実味に溢れていた。そして、ケインとハサウェイの父と娘の関係は鋭く残酷に胸に突き刺さる。
今作がスタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』のオマージュであることは確かだ。ノーランはキューブリックの「HAL 9000」を彼なりの解釈で、輝く可愛らしい歩行ロボットを登場させている。 劇中、信じられないような映像に驚き、うろたえそうな静寂とハンス・ジマーの重厚なオルガンの音楽に陶酔してしまうだろう。そして、この映画を観る時は、ハンカチではなく、百科事典を携えて鑑賞することを勧めたい。説明することはほぼ不可能な大胆な想像力に富んだクライマックスのシーンでは科学と悲しみがパワフルに結びつけられていた。
11月22日(土)新宿ピカデリー他全国ロードショー 監督:クリストファー・ノーラン 製作総指揮:ジェイク・マイヤーズ、ジョーダン・ゴールドバーグ、キップ・ソーン 出演:マシュー・マコノヒー、アン・ハサウェイ、ジェシカ・チャステイン、ビル・アーウィン、エレン・バースティンほか 配給:ワーナー・ブラザース映画 (C)2014 Warner Bros. Entertainment, Inc. and Paramount Pictures. All Rights Reserved.
公式サイトはこちら
Copyright © 2014 Time Out Tokyo
コメント