インタビュー:Oki Dub Ainu Band

アイヌをルーツに持つOKIが、ダブリミックスアルバム、アイヌ、原発について語る

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インタビュー:Oki Dub Ainu Band

日本人の母とアイヌの父をもつ加納沖は、日本の先住民を代表する存在といえる。だが彼がここにたどり着くまでには長い時間を要した。OKIという短い名称で活動するこの音楽家が、自身のルーツを知ったのは大学生の時。そして、アイヌ伝統の五弦琴、トンコリを用いた演奏を始めたのは30代半ばだった。今では定期的にソロ、または彼が率いるOKI DUB AINU BANDで演奏している。キング・タビーに影響された音の冒険は、ビル・ラズウェルの激情に駆られたエスノフュージョンという終着点に軌道を見つけた。

彼らは2010年、2枚目のスタジオアルバムとなる『サハリン・ロック』を発表。トンコリの源流を訪ねる旅をしたOKIの体験から生まれたアルバムだ。そして、この春、OKIと内田直之がオリジナルトラックをリミックスしたというリミックス盤『ヒマラヤン・ダブ』がリリースされる。『ヒマラヤン・ダブ』 発売記念全国ツアーの最終地点でもある渋谷クラブクアトロでは、リトルテンポとの競演も控えている。

OKIとタイムアウト東京のやや奇妙なメールのやり取りで、最近の旅から、原発のない(そして禁煙の)希望の未来について語ってもらった。

なぜ『サハリン・ロック』のダブミックスを作ったのですか?ダブミックスを作るのは初めてでしたか?

OKI : ダブアルバムは、『DUB AINU』『DUB AINU DELUXE』に続き、3枚目です。『サハリン・ロック』のダブを聴いて見たかったので作りました。

アルバムの資料には、OKIさんと内田さんは最終のマスタリングまでお互いの作ったトラックを聴かないようにしたとありましたが、どうしてそのような方法をとったのですか?

OKI : “お楽しみ”はとっておきました。

『ヒマラヤン・ダブ』の中で、とても満足できたトラックはありますか?

OKI :1曲目のサハリンダブ。全体を通してふたりのミックスの違いがよくわかります。そこが聴きどころです。

現在『ヒマラヤン・ダブ』のツアー中ですが、このアルバムに入ったダブミックス曲もライブで演奏するのですか?

OKI : やってますよ、毎回結果が違うからスリルがある。

ダブ・ダンドの中で、トンコリを使うのは難しくないですか。「ギターにすれば良かった」と思ったことはありましたか?

OKI : トンコリの音量は十分にあって、10年前に比べると格段の進歩をとげています。ギターの曲は最初からギターなので迷いはないでね。

去年、ネパールと台湾のフェスでライブをやりましたが、どんな印象を受けましたか?

OKI :ネパールのオーディエンスはすごいよ、元気だから、コールアンドレスポンスとか反応は世界一です。ネパール人の人柄は好きです。発展途上国といわれ計画停電は日常的、確かに貧乏かもしれない。でもいまの日本を見るとどちらが幸せかとはいえない。日本もネパールくらいの暮らしぶりでもいいと思います。ネパールに学ぶことは多いと思います。

台湾はホスピタリティの国、みんな本当に世話好きなんだ。食べものは世界一うまい。いい国だよ、親日でもある。アイヌみたいな原住民も住んでるし、九州ほどの小さな島だけど深い文化の層がある。いい国だがやはり地震国、原発も3基あるので心配です。3基ならすぐやめられます、日本のようにならないためにも。日本は54基もあるんです!

OKIさんのサイトで「アジアのアンダーグラウンドシーン」という言葉が出てきましたが、それを説明してくれませんか。

OKI:書いてありました?原子力推進派はメジャー、反対派はアンダーグラウンド、その図式は崩れてきている。僕は小学校から真夜中のクラブまで、どこでも演奏します。年齢層の幅は広い方だと思う。クラブは音に没頭できるから好きだ。これでみんながタバコをやめればいいんだけど、次の日に楽器ケース開けるとクラブの匂いがするからね。ほかにいい匂いがするものないの?タバコはやめようぜ。

OKIドキュメンタリーという話も耳に入りましたが、それについて少しお聞きかせ下さい。

OKI : 去年から撮ってます。3月11日以降あらゆる価値観が変わった。ドキュメンタリーも変わると思う。

2009年にアイヌ民族文化祭の特別ゲストとして参加しましたが、アイヌの文化への知識を持っている人や、その文化を守っている人は最近増えていると思いますか。

OKI : 増えています。言葉とかプロフェッショナルな分野でも、30代で大学の准教授になったアイヌもいます。アイヌもここで消えてなくなるわけにはいかないからね。

アイヌでは、災害は神様(カムイ)の不行き届きということで人間は神様に抗議することができる。二度とこの様なことが起きないよう神様に厳重注意する。とはいうものの、神様がいないことには人間もやっていけないので、人間を守ってくださいとあらためてお願いするんです。

人間が作ってばらまいた放射能 -アイヌ語ではたぶんルカニスルクパナ(猛毒素) -は、人間がしでかしたことなので神様にしっかり謝らないといけないと思います。原子力はアイヌの考えに全くあてはまりません。こんな恐怖はかつて経験したことがないです。原子力を推進している人は考えを改め、あらたなエネルギーの開発に情熱をそそいでほしい。

単刀直入ですみませんですが、サハリンでライブをやらないのですか?

OKI:え!?なんかコネクションがあるんですか?いつでも行けますよ!


OKI DUB AINU BAND Presents
『Himalayan Dub~Mixed by OKI vs 内田直之~』
CD発売記念ツアー・ファイナル

出演: OKI DUB AINU BAND、LITTLE TEMPO

日程:2011年4月15日(金)
時間:19時00分 開場 / 20時00分 開演
場所:渋谷クラブクアトロ
イベント詳細

ウェブ:チカルスタジオ www.tonkori.com

Interview by ジェイムズ・ハッドフィールド
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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