インタビュー:雅-MIYAVI-

サムライ・ギタリスト、雅がのぞかせる父の顔、ミュージシャンの誇り

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インタビュー:雅-MIYAVI-

雅の公式サイトには、彼が“ディオール アディクト”であると書いてあるが、それは本当だった。インタビューで案内された部屋は、彼が来る前から、ほんのりと良い香りが漂っていて、しばらくして現れた雅は、さらに鼻腔を刺激したが、控えめでとても丁寧だった。

もちろん、彼はその良い香りで知られているわけではない。全世界で“サムライ・ギタリスト”として支持され、7枚目のアルバム『WHAT’S MY NAME』をひっさげ、2011年2月9日から、日本7都市、そして2011年3月19日からロンドンをスタートにヨーロッパを巡るワールドツアー“WHAT'S MY NAME? WORLD TOUR 2011”に出る。雅のパフォーマンスは、磁石のように人を惹きつけ、魅了する。2008年のワールドツアーでは、14カ国33都市をまわり、ほとんどのライブはソールドアウトとなった。

それだけの成功をおさめても、彼は驕ることなくとてもソフトで、家族の話や、音楽の話など、非の打ちどころのない英語で話してくれた。彼の英語は、カリフォルニアのアクセントがあり、会話はそこから始まった。

インタビューは英語でも大丈夫ですか?

:もちろん。やってみましょう。

英語が上手ですね。

:上手に話せるふりをしているんですよ(笑)。英語は4年前に勉強しはじめました。ロサンゼルスに3ヶ月間行ったんですが、それだけでは不十分で、向こうの友達を連れて日本に帰ってきました。24時間一緒にいてもらって、ずっと英語で話してた。今は、妻がハワイ出身なのでずっと英語を話しています。やはり英語を話す人と一緒に過ごすことが英語を学ぶ1番良い方法だと思います。

家でも英語で話すんですか?

:そうですね。でも、僕はネイティブに英語を話すわけではないので、子どもたちには日本語で話すようにしています。妻は、英語が母国語なので、英語で話していますね。僕が英語を習得する時に苦労したので、子どもたちには、同じ思いをして欲しくないんですよね。

父親としての生活はどうですか?

:楽しいですよ。独身だった頃とは全然違いますね。家族という存在が、どれだけ大切なものか気づきました。去年のクリスマスからお正月にかけて子どもたちと、僕の母親や祖父、それから妻の家族と一緒に過ごしたんですが、家族で一緒にそういう時間を持つのは久しぶり、というか初めてに近かったので新鮮だったし改めて大切だなぁと思いました。

オフの時間はあるんですか?

:ありますよ。

タイムアウト東京のツイッター・フォロワーが送ってくれた、“雅に質問したいこと”の中に、「どうやって、ファンと家族に割く時間のバランスを取っているんですか?」というものがありました。

:それはけっこう大変(笑)。子どもたちがはしゃいで家中走りまわっているので、仕事に集中したい時は、家にいないようにします。基本的に、作詞、作曲はスタジオでやる。家にいる時は、極力、父親でいるようにしています。

子どもたちは、ツアーに一緒に来たりするんですか?

:来ないです。それはちょっと大変ですね。パフォーマンスに集中したいので、ツアー中に彼らの相手をするのは、難しいです。

メイクアップをして、ステージにあがる時は、普段の自分とは違う人格になっているのですか?“雅”は、キャラクターとしてとらえているのでしょうか?

:別人格になっているような感じもあるけど……ここ最近は、自分自身のことを決まったジャンルに特定しないようにしています。X JAPANやLUNA SEAなど、ヴィジュアル系バンドはものすごく自由な存在でしたし、僕自身もそういうジャンルの音楽をやることで、様々な制限から解放されていました。でも、ここ最近、ヴィジュアル系のイメージが、ミュージシャンとしての自分の表現を制限しているように感じていて。メイクアップをしたり、派手な衣装を身につける理由は、カテゴライズされるためじゃなく、僕自身のオリジナルなスタイルを見つけるためなので。

確かに、貴方のギタープレイは素晴らしく、人を惹きつけます。どうしてあの独特なスタイルになったんですか?

:悩んで色々試しているうちに、ベーシストたちからヒントをもらったりもして、始めました。ベースをスラップするように、ギターを弾いたら何か新しい可能性があるんじゃないかな、と思って。最初は難しくて、ピックを使っていたけど、自分の指で弾くようになりました。やっぱり他の誰かがやったことじゃなくて、新しい世界を開きたい。それに、僕は、日本人のギタリストですが、エレキギターも、アコースティックギターも、ドラム、ベース、ロック、ジャズ、そういうものは、すべて西洋の文化で。それらを日本人である僕がやる理由が欲しかった。なので、三味線を弾くように、ベン、ベン、ベンとダウンストロークで弾いています。

それで、自身のことを“サムライ・ギタリスト”と呼ぶようになったんですか?

:最初、外国のファンがそう呼んでくれて、(指を鳴らしながら)“それはいい!”と思って。だけど、自分の音楽を、世界に広めたいだけで、誰かのことを負かそうとしているわけじゃない。ただ僕は、世界に衝撃を与えたいんですよ、剣じゃなくてギターでね。

2009年から2010年にかけてのワールドツアーは、20カ国40公演をまわったそうで、日本人アーティストでは最大規模だそうですね。

:(はにかんだ表情で)そうみたいですね、確かじゃないけど。

どうして、世界の人たちを惹きつけたんだと思いますか?

:今、僕のファンは世界中に広がっている。だから僕は、彼らのもとにパフォーマンスをしに行くだけ。それは、日本国内でツアーをしている感覚と同じで、どこに行っても皆が待ってくれているのはすごく嬉しいです。それに、今はどこにいても、フェイスブックや、ツイッター、Myspaceでつながることができるので、僕のファンがどこで待ってくれているのか、そういうもので知れるんです。5、6年前は、色んな問題で海外ツアーに行くのが難しかったけど、もっと色んな所に行きたい。それも僕が独立した理由のひとつですね。

独立してからはもっと身軽に行けるようになりましたか?

:僕は、“日本一”になることに興味がないんです。ただ、世界に出て、インターナショナルなアーティストになりたい。僕は、日本人として生まれたことに誇りを持っているし、日本人がとても好きだけど、日本でだけギターを弾いて、そして死にたくない。世界には、たくさんの文化があって、様々な人種の人がいて、僕は、音楽でそういう違いを乗り越えられると思うんです。

また、ツアーが始まりますね。ツイッターでは、「何か新しいことをする」と言っていましたが……。

:まず今のドラマーと2人だけのスタイルでヨーロッパにツアーに行くのが初めてなので、ヨーロッパのオーディエンスにとって新しい経験がたくさんあると思っています。

BMXのライダーやスケートボーダーとのコラボレートは、これからもやっていきますか?

:今回は、ドラマーと僕の2人きりです。2人でも充分ロックできますよ、という意思表示。『歌舞伎男子z』では、ヒューマンビートボックスや、タップダンサー、和太鼓などともコラボレートしていたんだけど、またいつかは一緒にやりたいと思っています。でも今は、シンプルに、ドラマーと僕の2人でやりたいと思っています。ソロでやることがとても心地良いんです。すべて僕の責任でやれるのが良いですね。

また折りに触れ、他のアーティストともコラボレートしていくんですよね?

:今年は色々やろうと思っています。

誰か、一緒にやってみたいと思うアーティストはいますか?

:一番はマドンナとか、プリンスとか。プリンスは、本当に天才だと思う。僕が彼に勝っていることがあるとすれば、身長だけですね(笑)!


『雅-MIYAVI- インタビュー』後半に続く


By ジョン・ウィルクス
翻訳 東谷彰子
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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