インタビュー:“三十路直前”梅佳代

“笑えるショック”な写真集、『ウメップ』発売記念の写真展が開催中

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インタビュー:“三十路直前”梅佳代

日常にある“思わず笑ってしまうようなシーン”を撮る写真家、梅佳代の写真展『ウメップ』が、表参道ヒルズ地下3階、『スペース オー』で開催中だ。東京では初めての大規模写真展で、2010年に撮影したスナップや大判プリント、映像作品を含め、およそ1700点が展示されている。スナップは時系列に展示されており、会期中に撮った最新の写真も、都度展示されている。梅佳代は、ファースト写真集『うめめ』で、第32回木村伊兵衛写真賞を受賞。その後、『男子』『じいちゃんさま』と写真集を発表したが、『ウメップ』は、およそ2年ぶりの最新写真集となる。写真展の会場で、訪れたお客さんに気軽に話しかける梅佳代に話を聞いた。

Tシャツにパンツ姿というカジュアルなスタイルの印象があったのですが、今日は紫色のワンピースですし、写真展のオープニングの日には、『PASS THE BATON』の緑色のワンピースを着ていましたよね。ドレッシーなんですね。

:いつもカジュアルなんですが、今日はたまたまです。展示の仕込みが始まってからずっとここにおって、洗濯する時間がなくて、着る服がだんだんなくなってしまって。もう、いつもは着ない服しか残ってないんですよ(笑)。でも、カジュアルじゃないという方向で、お願いします!

作品には、梅佳代さんが写っているものも何点かあるんですが、梅佳代さんのカメラを使って撮ってもらっているのですか?仕事道具のカメラを他の人が使うのに、抵抗はないのですか?

:「え?これ、誰が撮ったん?」っていう写真ですね。カメラは仕事道具だと思ってないから、自分以外の人が使っても大丈夫なんだと思います。観光地で、近くにいる人に「撮ってください!」ってカメラをあずけて撮ってもらうのと同じ感覚です。よく落とすし、そんなに慎重になってないんです。(カメラをなでながら)ごめんね(笑)。

写っているものは全て、梅佳代さんの前で起こったことで、とくに演出するようなことはないのですか?

:演出はないです。街中を歩く時は、キョロキョロしている時もあるし、していない時もあるし、意識している時もあるし、していない時もある。まぁでも、だいたいキョロキョロしていますね。写真を撮るためのキョロキョロというより、癖です。まっすぐ歩かないから、一緒に歩いている人には大概イラつかれますね。それから、一緒に誰かとしゃべっていても、注意散漫になってしまって、例えば、その人の後ろにある冷蔵庫や時計が気になってしまったりするんです。日々そんな感じです。

じゃあ、写真を撮る時に、ググっと集中力がわいてくるんですね。

:いや、集中力がないんです。なさ過ぎて。展覧会の写真を決めるのも嫌で、1、2分でやりたくなくなってしまう。でも「嫌やー」とは言いながらも、やらないと始まらないし、ほかの人に迷惑をかけるわけにはいかないのでね。

偶然の出会いや、ふとした瞬間をおさめていくとなると、被写体に対して「写真を撮って良いか」という断りは入れられないと思うのですが、どのように撮影していらっしゃるんですか?

:距離感は保ちながら、あまり失礼にならないように、嫌な気持ちにさせないように気をつけて撮っています。その距離感が一番難しいところです。撮ったら怒られるかも、って思う時もあるから、私の撮影はものすごい早いんです。

そのあっと言う間の瞬間に、自分にとってはちょっと恥ずかしいけど、指摘されて思わず笑ってしまうようなポイントをとらえているんですね。

:ちょっとした“笑えるショック”ですね。嫌だけど、笑える。自分でネタにできる程度の恥ずかしさ。それは、なんとなく加減しながら、とっさの判断で撮って、できあがってから公表するかどうかを決めています。だけど、特に自分で「すごいものを撮ってしまった!」って思っている時ほど、写真で見るとすごくないことが多いですね。最近は慣れてきましたが、自分のテンションがあがり過ぎて、後で冷静になってみると、おいついてないこともありました。

石川にずっといらして、カメラの専門学校は大阪で、今は東京に住んでいらっしゃるんですよね?被写体として東京を見た時に、他の都市と違うところはありますか?

:東京はとにかくすご過ぎる。外国とか行っても、東京はすごい、って思うんです。なんでもあり過ぎるし、人もおり過ぎるし。全部が度が過ぎてすごい。情報が多すぎる。それが嫌だと言う人もいるけど、私はそこが東京の良いところだと思います。私が住んでいた能登半島もそうだけど、情報がないところの方が多いから。私、物欲がすごいんですよ。ずっと田舎に住んでたから、欲しいものがすぐ手に入らなかったんですけど、東京は手に入らないものがないから、本当に、今でもあこがれの地です。

今、一番欲しいものは何ですか?

:もう大人になって、東京におるし、色々たくさん買ったから、欲しいものも減ってきたけど、小さい頃からシールが好きで、今もカメラにたくさん貼ってるし、キディランドも大好きです。無駄にミッフィーちゃんのコップとかたくさん買ってしまって、家に10人くらい人が来ても大丈夫なくらいあります。かわいいものが好きで、そういうものを身近に置いておくのも好きなんです。洋服はだいたい新宿で買いますよ。新宿のビックカメラによく行くので、そのついでにデパートでふらふらしたりします。

最近した一番高い買い物は何ですか?

:テレビです。価格ドットコムで買ったんですけどね。私はテレビが大好きで、家にいる時はいつもテレビを見ているんです。すごく大きい薄型テレビで、友だちには「さすが印税王!」なんて言われて、「違うし!働いたし!」って答えながらいつも見ているんです。だけど、セレブなのはテレビだけで、ソファもないから、地べたに座って見てます。あと、全然料理をしないのに、『ビストロ』っていうなんでもできる大きな電子レンジを買ったんです。妹とかにも、「姉ちゃん、これでなに作ってるの?一体何人家族なん?」って聞かれるくらい大きいレンジなんですけど、「あっためてる!」だけです。それも価格ドットコムで買いました。

テレビが好きということですが、これから先、会いたい芸能人などはいますか?

:いっぱいいますよ!!『嵐』が大好きで、カメラがあったからこそ会えたんですが。テレビをよく見るから、芸能人が大好きなんです。毎回撮影をするたびに、「テレビの人や!」ってテンションがあがってしまう。これから撮ってみたいのは、妻夫木聡さんと、要潤さんです。松坂世代で同い年やし、やっぱり見た目がかっこいいですからね(笑)!

妻夫木さんも要さんも良いですけど、梅佳代さんの写真は誰でも垣根なく主人公になれるのが素敵です。

:全員いてこその、この世というか。みんながいるからこそ、って思う。その場、その日、っていう気持ちで撮っています。

今、29歳で、来年30歳になられるわけですが、20代のうちにやっておきたいことはありますか?

:30になる前にもう1冊本を出したいと思って今回『ウメップ』を出したんだけど、今からだと出産も間に合わんしね(笑)。そんなこと考えたことなかったけど、三十路目指して、なんかやるべきことがあったかもしれん!!だけど、三十路らしい大人な女性になりたいんですよ。私、少年のようですね、って言われて、ちょっと気にしてるんです。妹にも、「姉ちゃん最近おじさんみたいだね」って言われるし(笑)。

30を目前に、自身の身の回りの日常をおさめた写真展『ウメップ』、ぜひ足を運んでほしい。
梅佳代写真展『ウメップ』の詳しい情報はこちら
また、梅佳代の写真展は、10月に大阪でも開催される。

梅佳代写真展「ウメップ:シャッターチャンス祭りinうめかよFIVE」
日程:2010年10月2日(土)から15日(金)
場所:大阪HEP HALL
ウェブ:www.hephall.com/?p=7342

テキスト 東谷彰子
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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