東京オルタナティブアートスペース

新しいアートが生まれる、新しいギャラリーのカタチ

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東京オルタナティブアートスペース

世界有数のクリエイティブシティーのひとつである東京。この街の“芸術”は、伝統的なものから、アンダーグラウンドまで様々なレイヤーから構成されている。中でも、今を生きるアーティストやアートファンが関わる現代アートを取り巻くシーンは、日々刻々と進化を続け、表現の視点、アウトプットも多様だ。現代だからこそ赤裸々に表現される時代背景を兼ね備えた心情。作品に滲み出た感覚は独特の表現を持ち、独自性を高めている。

これらの新たな表現が産まれる場所も、当然のように活性化している。“なければつくればいい”というようなD.I.Yの精神の定着や、アートの可能性が広がっていることによる周辺領域からの参画など状況の変化も手伝って、単なる“箱”に留まらない、それぞれの持ち味を活かした強いキュレーションを持った“箱”が目に見えて増えている。

東京の現代アートシーンで、自分の好みの作品、さらには新しい価値観を見つけるのであれば、東京中に点在するヴェニューの中なから、比較的新しいギャラリーやアートスペースなどに注目してはいかがだろう。触れてはいけないアンダーグラウンドな世界、興味を唆る未知なる作品に出会うべく東京らしい、“オルタナティブ”現代アートスペースをセレクトした。


恵比寿『ギャラリー ここ』


2010年10月、東京・恵比寿に誕生した不定期開催のギャラリー。都心で、ソファやイスに座りながら現代アートをゆっくりとゆったり見て過ごす空間を作るというのがコンセプト。メゾンマルタンマルジェラなどを展開するスタッフインターナショナルジャパンがスペースを所有し、同社の広報と編集者により運営されてる。オープニング展は、ライアン・マッギンリーなどを扱うニューヨーク『Teamギャラリー』のグループ展を開催。2011年4月には、音楽家・渋谷慶一郎による公開制作を“展示”として見せるユニークな企画を展開。音楽を作る過程・行為そのものを一般公開し、ustreamもされた。2011年5月には、ホンマタカシ『Seeing Itself<建築写真編>』 を開催、建築写真というテーマに合わせ、会場構成を若手建築家・大西麻貴が担当したのも話題になった。

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吉祥寺『Art Center Ongoing(アートセンター・オンゴーイング)』

2008年にオープンしたオルタナティブアートスペース。若手を中心に、今後、時代を担うであろうアーティストの展覧会を月2回ペースで開催している。他のコマーシャルギャラリーに所属しているアーティストが、この場所ならではの企画展することも多く、従来の展示方式とは違った自由な雰囲気でアートを体験できる。各展覧会の期間中には、トークショーやライブなどのイベントも開催し、アーティスト達とのつながりの機会も提供。2011年4月からは有料化(400円で、セレクトティー付き)した。1階のカフェスペースでは、手作りのバンズを使ったハンバーガーや、ラクサなどこだわりの料理とお酒が味わえる。

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高円寺『ASOKO』


高円寺に点在するカルチャーをわずか6畳ほどのスペースに凝縮したかのような空間、『ASOKO』。小さなインディペンデントギャラリーであり、ライブ / クラブスペースであり、そして大衆酒場でもあるこのスペースの中は、常に“何か”で満たされている。作品の横で焼き肉を味わえるような場所は、いくら東京が広くてもここぐらいのものだろう。突飛な一面にばかり注目が集まるが、基本的には来訪者をあたたかく迎え入れてくれる空間だ。

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清澄白河『SNAC』


無人島プロダクションと吾妻橋ダンスクロッシングによる共同プロデューススペース。2010年4月に商店街の居酒屋を改装してオープンした。これまで八木良太、Chim↑Pom展、田口行弘などの無人島プロダクションの所属作家の展示を行ってきた他、岡田利規、マームとジプシー、快快などクロスオーヴァーな人気を獲得している表現者が登場する企画も数多く行われてきた。トークショーや演劇などの場合、数十人ほどの小スペースなので、予約はマストだ。

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清澄白河『ギャラリーカウンタック清澄 / アインシュタインスタジオ』


東京都現代美術館の近くにある撮影スタジオとギャラリーを兼ねたハイブリッドスペース。“ギャラリー”として運営する場合は、カウンタックギャラリーの所属作家の展示を中心に展開。所属作家のひとりである近藤恵介は、2010年末には彫刻家の冨井大裕と、2011年には作家の古川日出男と2人展を開催し、表現の可能性を広げている。撮影スタジオとしては、日々の撮影業務の傍ら、若き写真家の才能を発掘する目的でフォトコンペティションを開催。第3回(www.einstein-studio.com/epc/)は、7月3日までエントリーを受付し、7月16日に審査が行われる。審査員は、“フクヘン”こと鈴木芳雄、花代、岩渕貞哉(美術手帖編集長)などが、担当。各審査員賞受賞者によるグループ展を、年末にかけて、タイのno space、ベルリンのimbus europae、そして、東京の同スペースで開催する予定だ。

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馬喰町『gallery αM』


武蔵野美術大学が運営するギャラリー。毎年度ゲストキュレーターを迎えて、独自のテーマに基づいた企画展を行っているが、作品の売買によって運営するコマーシャルギャラリーとは違っていわゆるノンプロフィット(非営利)の形態をとっており、純粋に展示の企画内容と美術作品のおもしろさを楽しめるという数少ない場所である。これまでに若手~中堅どころの作家が質の高い展示を行っており、鑑賞者としては現代美術の先端に気軽に触れられるのが嬉しい。もともとは20年前に吉祥寺に開設、2002年にクローズして以降は特定の場所を持たずにプロジェクト活動を継続し、2009年から馬喰町にギャラリーを新設した。界隈はここ数年でギャラリーやクリエイターの事務所が集まっており、アート鑑賞ツアーをするのにも最適なスポットとして注目されている。

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池尻大橋『PUBLIC/IMAGE.3D』


池尻大橋駅から歩いて3分ほど、クリエイティブスタジオ『ANSWR(アンサー)』のオフィスに併設するオルタナティブスペース。2009年11月にオープンした。デザインプロダクトの開発や販売、トークショーやライブなど、さまざまな表現で発信することを可能にするカルチャースペースだ。

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銀座『ヴァニラ画廊』


銀座6丁目、古びたオフィスビルの4階にあるギャラリー。エロスやサディズム、フェティシズムなどをテーマにした、様々なスタイルの作品を扱う。これまで、『人造乙女博覧会 II』、三代目彫よし 刺青原画展『水滸列伝図』、田亀源五郎展『WORKS』、釣崎清隆写真展『DEADLY SPEED』釣崎清隆交通事故死体写真の世界などが開催された。

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曙橋『AISHO MIURA ARTS』


商店街の一角にある、一軒家を改装したギャラリー。菊地良博、小池一馬、彦坂敏昭、久保田沙耶、/山田周平、ホリスブラウンソーントン、村山悟郎、袴田京太朗、秋山祐徳太子、松本春崇ら、解析の限界を突破するアグレッシブな次世代の作家を紹介する。

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国分寺『mograg garage』


東京・国分寺に、ガレージを改装した小さなアートスペースとして誕生した。作品のある空間=アートスペースであり、既存の“体裁の整った”スペースで展示・鑑賞することだけがアートとの出会いの場ではないということから、表現者とそれを受け取る側が出会うことのできる場所として、人を繋げ、新しい発見が生まれる空間となっている。イラスト、絵画、グラフィックを中心に1980年代生のアーティストが多く所属する。

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テキスト qurea
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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