2014年07月02日 (水) 掲載
世界中からセレクトした現代アートを販売するWALLS TOKYOと、タイムアウト東京のコラボレーション企画第2弾。実際に被写体が生活する部屋にWALLS TOKYOのコレクションからセレクトした作品を飾り、その様子を記録。東京に住む人々のリアルな日常にアート作品を介在させることで、作品や東京暮らしの新たな一面を発見し、アートをより身近なものにしていく。
名前:渡辺俊
年齢:25歳
場所:西荻窪徒歩10分1K+ロフト
家賃:60,000円
作品:クリスト『Pink Store Front』1980年 lithograph(246,600円)
西荻窪の住宅街にあるアパートの1階で暮らす、フリーター、渡辺の部屋。漫画や本、映画が好きなサブカルオタクで、部屋のロフトは大量の本と漫画で溢れている。今回、WALLS TOKYOがセレクトした作品は、クリストのドローイング・『Pink Store Front』だ。
クリストは、日用品から、大きな建物、さらには谷や島、海などの自然を梱包するアーティスト。「細部を見えなくすることによって、ものの本来のカタチが見えてくる」と言うクリストは、大きな対象を包む場合、対象を取り巻く社会や政治を説得するところからはじめる。作業にかかる何億もの費用はすべてドローイングを販売した費用で賄い、作品が完成するとすぐに解体し、後にはドローイングや作品の記録物が残る。そのような、対象を梱包する全過程を作品とみなす作家だ。
渡辺は、アートは「世界の不明な部分をあきらかにしようとするもの」だと言うが、それは人生そのものでもあるかもしれない。彼にクリストについての予備知識は無く、今回自室に飾られたドローイングを見た第一印象を、「ホラーな作品」と評した。『Pink Store Front』のドローイングは、扉やショーウィンドウだけが描かれ、しかもそれらは遮断されているので扉の向こうを見ることはできない。扉の向こうを見ることができず、入り口しか描かれていないことに恐怖を覚えるそうだ。
渡辺はフリーターだが、大学を卒業してからずっと就職活動を続けている。アルバイトの傍ら就職活動をしていると、慌ただしく毎日が過ぎ、将来が見えず、自分は一体何をしたいのかが分からなくなるという。興味のある職業のひとつとして編集関係のバイトをはじめたが、想像していた世界と現実とのギャップに苦しむこともあった。しかし同時に、「どうせ何かを売るなら、自分が自信を持って売れるものを売りたい」と、強く思うようになったという。
包まれ、遮断され、隠されることによって明らかになろうとするものは、物の形だけではないようだ。
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