インタビュー:キース・リチャーズ

やり過ぎるロックスターの代名詞、ローリング・ストーンズのギタリストに聞く

Read this in English
インタビュー:キース・リチャーズ

初アルバムから50年が経過した今も、ローリング・ストーンズは他に類のない、ロックンロール界の伝説的な存在だ。マカオでの初ライブに先立ち、ジェイク・ニュービーは象徴的なギタリスト、キース・リチャーズに対して、長年を経た今でもツアーが満足感に満ちたものなのかを尋ねた。

キース・リチャーズに対するインタビューの数分前、電話が鳴った。電話を取ると、女性の声がまもなく彼から電話があると私たちに伝えたのだ。そして再び電話が鳴ったが、聞こえてきたのはリチャーズ独特のゆっくりとした口調ではなく、爆笑する女性の笑い声だった。しばらくすると「悪かったね」と声が聞こえ、「彼女が面白くて」と、話し始めた電話の声は、リチャーズ独特の擦り切れたマトリー(『チキチキマシン猛レース』のケンケン)のような含み笑いに代わった。70歳を迎え、今や5人目の祖父となった今も、ローリング・ストーンズのギタリストはずるいほどチャーミングだったのだ。

やり過ぎるロックスターの代名詞であるリチャーズが、今でも現役だというのは – もちろん幸せなことではあるが – ちょっと信じがたい。しかし確かに彼はここにいて、その遊び心も健在だ。彼は、3月の巨大ツアーに向けてウォーミングアップ中だ。彼と70歳代の仲間であるミック・ジャガーとチャーリー・ワッツ、そして比較的若い66歳のロニー・ウッドは、マカオのベネチアンを訪れる。イギリス流の挨拶を交わし、イギリスの天気について話し合った (「今はどこも水の中だよ!」と言って彼はクスクス笑った) 後、リチャーズは『14 On Fire』に向けたパリでのバンドの準備について話し始めた。

「良くも悪くも、絶え間ない環境の変化みたいなものを楽しんでる。ある意味、ちょっと空回りとも言えるけど、自分の時間の使い方を導いてくれるんだ」 この交際関係は、ただブレイクを作曲に向かわせるだけではない。彼は頭の中で歌い、iPhoneに歌詞を打ち込む。そして他の点においても、彼をより良い方へと運んでいるようだ。「そうだな……コーヒーを作る、チェスをする、より良い人間になる。実際に誰かと心を通わせることができ、僕が彼らと繋がっていることを、相手に感じさせることができるんだから」


キース、あなたと話ができて光栄です。マカオであなたに会えるのを本当に楽しみにしています。

リチャーズ:そうだね、きっと面白くなるだろう。初めて行くところだからね。

ワクワクしますね。あなたは今、ツアーリハーサルの最中ですよね。調子はどうですか?

リチャーズ:絶好調さ。ワルツのようにすいすい準備が進んでいるよ。リハーサルはいつもとても楽しいよ。「そこで止めて」とか「ここをチェックしよう」とかできるからね、面白いプロセスだ。今みんな絶好調で、私は驚いているんだ。理由はわからないが、彼らと演奏すると、そのすばらしさに俺はいつも驚かされるんだ(笑)。

すぐに勘を取り戻せるのですか?

リチャーズ:そうなんだよ。初日、リハーサル会場に到着するといつもちゃんとまとまるか不安になるんだ。でも、部屋に入ってチャーリー・ワッツがドラムを叩き始めると、まるで息をしていることのように自然とまとまるんるんだ。リハーサルでやることは、前にやったことをもう一度やったり手直ししたり、本番で演奏するかもしれない曲をいくつか練習してセットリストを調整することくらいだ。それ以外は即興で演奏したりしているよ。(笑)

50年分のディスコグラフィーをセットリストにまとめるとき、どこから始めるのですか?

リチャーズ:基本的に俺がするのは、ミック [ジャガー] の意見を聞くことだ。シンガーが自信を持って歌い始められるというのは大事だからね。その次にペースだ。速い曲を何曲入れて、ゆっくりな曲を何曲入れるか。2時間分のセットリストをいかにバランスの取れたものにするかなんだ。エネルギー、メロディー、そして曲がバランスよく揃ったら、準備万端、エネルギー全開さ(笑)。


準備中、またツアーに出ることを楽しみにしていますか?

リチャーズ:もちろんさ。50年以上やっているんだ、ツアー会場が自宅みたいなものだよ。自分の家にいるとき以上にアットホームに感じることがあるくらいさ。

他のバンドメンバーが積極的にならないことはありますか?

リチャーズ:ほとんどないよ。本当にやりたいときだけやるからね。だいたいいつもミックが俺に電話をしてきてこう言うんだ。「そろそろ何かやらないか?」そして俺はこう答える。「この電話を待っていたよ。チャーリーはどう思う?」こうして、いつもバンド全体の要望で始まるんだ。過去に5年間ツアーから離れたこともあって、その時はもう電話が来ないんじゃないかと思ったけどね。でも俺は実際、ミック・ジャガーの「ロックな気分なんだ」という言葉をいつも待っていて、それに対しては「オッケー、じゃあ俺は後ろに付くぜ」と言う準備はできている。

将来、そんな電話が来なくなることを予想できますか?

リチャーズ:いつそうなってもおかしくないと思うよ。俺たちは死にかけだからね(笑)。俺たちはみんな年金生活者だよ – 正式にはね – でもそんな感じはしないし、周りもそうさ。そういう血が流れているんだ。この仕事を愛しているからね。大勢の人々の前に立って、「カモン、イェー、イェー、イェー」と叫び、人々がそれに応えてくれる、そんなことって他にないだろう。世界一すばらしい仕事の一つだね。それに稼ぎもいいからね。[笑い声]

昨年のグラストンベリー初公演の感想は?

リチャーズ:あれはとてもクールだった。何年も実現しそうでしなかったライブの一つなんだ。それが昨年やっと実現したんだ。グラストンベリーでは滅多にない好天にも恵まれたんだ。最高だったよ。最高のタイミングだった。その規模には驚いたさ。俺は大きなライブはいくつも経験したけど、グラストンベリーは本当にすごかった。丘一面に観客がいて、その向こうにもまだいるんだ。驚きだよ。本当に楽しかった。気に入ったね。あのときとハイド・パークのときは最高だったね。


ええ、すごいイベントでしたね。

リチャーズ:そうだろう。故郷でもあるからな。地元の人々に演奏するんだ。歓迎されるさ。すばらしいじゃないか。

演奏したことがない場所はもうそんなに多くはないでしょうね……

リチャーズ:マカオを除けばね! あとアブダビだ。この2つは初めてのライブになる。でも、一度演奏した場所に戻るのもとても面白いと思うよ。

こうした長期ツアーに出ると、記憶があいまいになることがありますか?

リチャーズ:いや、ないね。だってどの国も異なるし場所ごとにはっきりとした記憶が残るよ。全部が全部とは言わないけどね。これは多分俺自身の問題が大きいだろうな(笑)。でも、旅というのは本当に興味深い。もし君が仕事を探しているのなら、イギリス海軍をおすすめするよ。世界を見れるんだ、俺はもちろん何度か見たけどね。面白いのは、戻ることなんだ。戻ったとき、何が変わって、何が起こっているのか。どこかに行ってそこで何かをすれば、その場所はずっと記憶と心に残るものだよ。


マカオは初めてですが、香港では2003年に演奏しましたね。そのときの思い出は?

リチャーズ:もちろんあるさ。すごかった。あのエネルギーさ。それに、24時間以内にオリジナルのシャツが作れたことも覚えているよ、あれには驚いたね(笑)。いや真面目な話、香港のことを考えたとき一番に思い浮かぶのはあのエネルギーなんだ。本当にすごかった。活気に満ちた、絶えることのないエネルギーだった。今でも変わっていないと確信しているよ。

今でも音楽があなたの生活の大部分であることは明らかですね。最近はどのくらいギターを触っていますか?

リチャーズ:毎日だよ。腕が落ちないためにもギターは弾き続けているさ。それに毎日アイディアが浮かんでくるからね。5分しか弾かないときもあるけど、でもだいたい毎日少しは弾いている。ギターを弾かない日はピアノを弾いているよ。

では、そういう意味ではあなたは今でもミュージシャンとしての成長を感じているわけですね?

リチャーズ:そうでなければならないと思うんだ。俺はそう思う。自分自身をごまかしているのかもしれないけれど、今でも毎日学び、物事が前進しているということを感じる必要があるんだよ。

原文へ(Time Out Shanghai)

インタビュー ジェイク・ニュービー
※掲載されている情報は公開当時のものです。

この記事へのつぶやき

コメント

Copyright © 2014 Time Out Tokyo