インタビュー:ジェイムス・ブレイク

「絶え間ない、環境の変化みたいなものを楽しんでいる」

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インタビュー:ジェイムス・ブレイク

© Muir Vidler

electraglide 2013で再来日を果たすジェイムス・ブレイク。タイムアウトロンドンが、彼の遠距離恋愛、ブライアン・イーノとのコラボレーション、密かに書き溜めているポエムについて聞いたインタビューを紹介。

ジェイムス・ブレイクが音楽を諦めていたら、きっと今頃、素晴らしいカウンセラーになっていただろう。わずかに下がった唇とモップヘアが醸し出す、物憂げな雰囲気に親近感が沸く。周囲を誘うほど穏やかで、自分が何を言いたいのか明確に理解しないまま、言葉を口にすることはない。にもかかわらず、人の話しを熱心に耳を傾け、相手の秘密を引き出す。彼と話していると、自分の恋愛話もそうだし、失敗に終わった過去の遠距離恋愛についても話す必要があると感じてしまう。彼は「いよいよ、別れを告げる覚悟ができたのかな?」 と、感傷的な想いが襲っては消え、と繰り返す私に尋ねる。そして「それは、君がある種の試練を乗り越えたということだよ」と言う。

「絶え間ない、環境の変化みたいなものを楽しんでいる」

もし、ブレイクが物事の本質を引き出していしまう力に理由を秘めていたとしたら、それは彼のロサンゼルスに住むガールフレンドとの遠距離恋愛が、今も続いているところにあるだろう。 ブレイクは認める、「空港はシナリオになり得る」と。プリムローズ・ヒル・パブでランチを食べている時のことだ。新たにリリースしたブレークのセカンド・アルバム 『Overgrown』は、ダブステップのビートを鳴らした自身の名前をタイトルにしたデビュー作から離れ、さらにやわらかに歌声を響かせている。これに暗い影を落としているのはガールフレンドの存在だ。彼はどのように、自身の心の動きを見出しているのだろうか。

「良くも悪くも、絶え間ない環境の変化みたいなものを楽しんでる。ある意味、ちょっと空回りとも言えるけど、自分の時間の使い方を導いてくれるんだ」 この交際関係は、ただブレイクを作曲に向かわせるだけではない。彼は頭の中で歌い、iPhoneに歌詞を打ち込む。そして他の点においても、彼をより良い方へと運んでいるようだ。「そうだな……コーヒーを作る、チェスをする、より良い人間になる。実際に誰かと心を通わせることができ、僕が彼らと繋がっていることを、相手に感じさせることができるんだから」

「ブライアン・イーノが僕に言ったのは、くだらないコードを外せ、ということ。自分がどうしようもないピアニストで、それしか弾くことができないようなコードのことさ」

デビュー作の成功で、ブレークは世界中を飛び回ることになった。それは、RZAやカニエ・ウェスト、ジョニ・ミッチェル、ジャスティン・バーノン(ボン・イヴェール)、そしてブライアン・イーノを含むファン達との交流やコラボレーションに繋がった。とはいえ、彼はゲームで一番になっても、ポケットの中に大金があっても、ロンドンのクラブでイベント (1-800 Dinosaur at Shoreditch’s Plastic People) を開催しても、ほんの24年間の人生経験にもかかわらず頭の中に成功の文字はなかった。逆に名声は彼を円熟させ、これらのコラボレーションは堅実に、ブレイクの力となった。

「ブライアン・イーノが僕に言ったのは、『Retrograde』のくだらないコードを外せ、ということ」と、アンビエント音楽の開祖と、その彼のロンドンの自宅での作業を語る。「自分がどうしようもないピアニストで、それしか弾けないようなコードのことさ。彼はすぐにそれを見抜いたんだ」

「彼のところにいた時、アイデアがほんの少ししかなくて。でもそれを彼は導くように、そして率直に助けてくれた。スタジオに行って、スタッフにパッケージングしてもらう僕にとって、それは正反対のものだったよ。彼は実際にそんな鮮明な瞬間を育くんで、鈍いものを対照的に美しいものに作り上げるんだ」

ブレイクの外見上の禅は、とてもイーノ風である。彼はいつも冷静に見える。ただそれは、インタビューの中で彼がポエムを書いていることを明かすまでだった。「電車に乗ってたんだ。君に読んであげようかな……」 が、突然、彼は考えを変え、恥ずかしがるそぶりを見せた。それは何か? 「昨夜の電話のせいで、気分が乗らないんだ」「彼女から?」「そう。言いたいことがあったんだけど、それを言うことでさらに関係が悪くなりそうだったから、書き留めることにしたんだ。そうするのが好きなんだ。不必要な対立を避けるのには、良い方法だよ。クソみたいな詩だけど、仕方ないよね」

そのポエムがクソだとは全く思えないが、池のようなブレイクの冷静さの中に、さざ波を垣間見えたのはよかった。彼の音楽がそうであるように、表面下で仄暗い何かがうごめいていることを、明らかにしていたから。

原文へ(Time Out London)

ジェイムス・ブレイクがヘッドライナーを務めるelectraglide 2013のイベント情報

Interview by ジョニー・アンサール
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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