インタビュー:吉岡徳仁

気鋭のクリエイターがクリスタルで創り出す、光にあふれた世界

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インタビュー:吉岡徳仁

Tokujin Yoshioka, lit by his work 'Crystallize'


画家が「光を描きたい」と追いはじめて100年あまり。吉岡徳仁も「光」を求め、表現してきた。この秋、東京都現代美術館では展覧会『吉岡徳仁—クリスタライズ』が開催されている。エスカレーターで展示室へ降りると、氷の中にいるような、霜に囲まれたような感覚に襲われる。自分の居場所がどこかさえつかめなくなるような空間が広がるインスタレーション。驚かされたのは、身体を取り囲む空間だけではない。水が張られたキャビネットの中では結晶が生成され、空気が吹き込まれてあたかも呼吸しているかのようだ。500個ものクリスタルプリズムを集積してつくられた『虹の教会』は、館内の吹き抜け空間に自然光を届けている。美術館に広がる白い世界で自分の存在を見失い、感情を揺り動かされたひと時。この感情を震わせる根源、吉岡の追い求める「光」とは一体何なのだろうか? そのエネルギーの実態を掴むべく、インタビューを敢行した。


東京都現代美術館で個展という話があったとき、最初はどう思われましたか。

吉岡:初めてお話をいただいたのは2009年のことです。その後、2011年に東日本大震災があり、自分にできることは何かということや、ものづくりについて、真剣に立ち返って考えました。自然の怖さや自然の生命、その人間の関わりについて考えるきっかけとなる表現をすることで、何か私が役に立てることはないかという思いが強く生まれました。そのタイミングで、東京都現代美術館で個展をするお話をいただけたことは、自分にとって非常に大きな契機だったと思います。


今回の東京都現代美術館に限らず、これまでも『セカンドネイチャー展』(2008年、21_21 DESIGN SIGHT)、『ネイチャー・センス展』(2010年、森美術館)など、展覧会という形式で作品を見せていらっしゃいます。美術(アート)をどう捉え、考えていらっしゃるのでしょうか?

吉岡:例えば、イサムノグチ(日系アメリカ人で国際的に活躍した彫刻家、1904〜1988)のように、アートだのデザインだのといったジャンルに対しての意識は私自身になく、純粋に創りたいと思うものを創っています。そうして出来上がったものが、ある時はアートであったり、建築、デザインとさまざまな形で捉えられる、自由な表現だと思っています。それは見てくれる方に決めてもらえれば良いことで、歴史を超えることのできる作品を創りたいと考えています。


展示されているどの作品も「キレイ」とか「美しい」だけでなく、ノーブルな感じもあり、吸い込まれそうになります。吉岡さんの美意識は、どこから来ていたり、何か気にされていたりしますか。

吉岡:単に美しいというだけではなく、自然の壮大な力や怖さといった、自然が生み出すエネルギーを意識して、まるでそこにいのちを吹き込むようかのように意識して作品を創っています。人間の想像の範囲を超えたものに美しさや魅力を感じているからです。私は常に、その場所でしかできないものを創りたいと思っています。今回の東京都現代美術館の展覧会では、大きな吹き抜けの空間を意識して「虹の教会」を構想しました。この作品は、光についての緻密な研究と実験から生まれました。また、20年ほど前から透明な素材を使っています。それは光にもっとも近い素材であり、また光の感覚に近いものとして、心に突き刺さるような何かを表現したいからです。


吉岡さんにとって、「光」とはどういう意味を持っていますか。

吉岡:人間にとって普遍的で、神秘性のあるもの。光が自然と人間の関係において、答えがなく、計算して捉えることのできないものだからこそ魅力を感じ、私は光を表現し続けていくのだと思います。


展覧会『吉岡徳仁ークリスタライズ』の詳しい情報はこちら



※本記事はタイムアウト東京マガジン創刊号より転載

Photo by 豊嶋希沙
Interview by 藤田千彩
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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