サーカスと料理、ルナ・レガーロ

日本初、エンターテインメント&レストランの融合を体験する

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サーカスと料理、ルナ・レガーロ

2010年4月29日、世界でも類をみない超絶空間が東京・日比谷に出現した。期間限定のエンターテインメント&レストラン『ルナ・レガーロ 月からの贈り物』だ。ビルが密集した一角に突如現れた巨大テントには400もの席が設けられ、その空間の中でサーカスと料理の“融合”を目の当たりすることができる。サーカスはロシアが世界に誇る『グレート・モスクワ・サーカス』のアーティストたちが披露、料理は日本を代表するスターシェフ4人が一皿ずつプロデュースしたコース料理となっている。ここでは、その“融合”のほんの一部を紹介する。『ルナ・レガーロ 月からの贈り物』は期間限定ではあるが、東京公演は2010年8月1日まで開催され、また2010年秋には大阪公演の開催、2011年春には名古屋公演の開催が決定している。

舞台と客席との融合

巨大テントの中に入り、舞台はどこかと見渡すと、中央の少し開けた空間に視線が向く。床には丸い月が描かれており、その頭上には1台の空中ブランコがぶら下がっている。客席はその丸い月を囲むような形で東西南北に配置されているので、このわずかな空間が舞台なのだと分かる。舞台は狭く、また客席との境界もない。客席は1テーブルに2人が向かい合わせで着席し、最前列のテーブルと舞台との距離はわずか2メートルほど。ダンサーが刻むステップの振動が床からビンビンと伝わってくる。パフォーマンスが始まると円形の月がみるみるせり上がり、サーカスのアーティストたちは、高さ1メートル、直径わずか3.6メートルほどの舞台で演技を披露する。狭い舞台でのアクロバティックな演技は、観るものにアーティストたちが舞台から落下してしまうのではないかという恐怖心を与える。また、空中ブランコなどの前後左右に揺れるパフォーマンスでは、3D映像のようにアーティストたちが迫ってくる迫力に驚く。舞台の狭さ、客席との距離がパフォーマンスの魅力を高め、相乗効果を生んでいる。

スターシェフたちの融合

料理はコースで提供されるが、一皿ずつプロデュースしているシェフが違う。中華、イタリアン、フレンチ、そしてスイーツと、ジャンルの違うシェフが、“月”というテーマで一皿ずつプロデュースし、トータルでひとつのコース料理を完成させているのだ。最初に提供される『蒸し鶏包みのフルムーン~赤と黒の魅惑のソース添え』をプロデュースしているのは中華の菰田欣也。『スーツァンレストラン陳』のシェフで、2004年、中国で行われた第5回中国料理世界大会で、日本人初となる金賞を受賞した強者だ。2番目の料理『ローマで見た月 2色のリゾットとトリュフの香り』を担当したのは、イタリアン・ブームの仕掛け人、ヒロ山田。3番目の料理『風味豊かな赤ワインと牛肉・野菜 ムーンマリアージュ』は、フジテレビで放映されていた人気番組『料理の鉄人』で、フレンチの鉄人として名を馳せた坂井宏行が担当。そして最後の一皿『いろどり野菜アイスとジンジャームーン』は、野菜を使ったスイーツという新境地を開拓し、今、注目を集めているパティシエール柿沢安耶が担当した。当然のことながら、それぞれのシェフの味をひとつのコース料理で味わうことができる店は他にはない。『ルナ・レガーロ』の料理は、まさに日本を代表するスターシェフたちが融合したからこそ、味わうことができる究極の料理なのだ。6月いっぱいは、この4人の料理が、7月から8月にかけては、イタリアンの落合務、中華の脇屋友詞、パティシエの辻口博啓、和食の笠原将弘がプロデュースした料理が提供される。この時期を逃したら、二度と味わうことができないコース料理の贅沢さを堪能してほしい。


料理とサーカスの融合

料理とエンターテインメントを同じ空間で堪能するショーのひとつに、ディナーショーがある。ディナーショーは、食事をしてから歌手の歌声に耳を傾けるという構成が一般的だが、『ルナ・レガーロ』は違う。コース料理と、グレート・モスクワ・サーカスのパフォーマンスが交互に繰り返されるのだ。まず一皿目は、菰田欣也シェフによる『蒸し鶏包みのフルムーン~赤と黒の魅惑のソース添え』。夜空に輝く美しい満月をモチーフにした料理で、蒸し鶏で作られたドーム型の満月にナイフを入れると、中から海老や枝豆などカラフルな食材が元気よく飛び出してくる。そして一皿目がウェイターたちの手で片づけられると、いよいよサーカスのパフォーマンスが始まる。登場の合図で、四方から飛び出して来たアーティストたちが最初に行うのが『バンキン』だ。バンキンは、人間の力だけで人を宙へ飛ばし、飛ばされた人間がくるくると舞う空中アクロバット。空中を縦横無尽に飛び回るパフォーマンスを観ていると、まるで本当に無重力の月の世界にいるようだ。こうして驚きの料理とサーカスは繰り返され、私たちは未だかつて観たことのない、料理とサーカスの融合を体感する。この複雑な構成がスムーズに進むのは、料理を作る人と運ぶ人、すべてのオペレーションが巧みに計算され、融合しているため。なにしろ、400名もいる観客すべてに、ほぼ同じタイミングで料理が提供されるのだ。トレーニングは入念に行ったという。“料理とサーカスの融合”、それはパフォーマーだけでなく、シェフやウェイター、ウェイトレス、すべての人々が持てる力を出し尽くして融合した、総合芸術なのだ。


パフォーマンスと衣装の融合

グレート・モスクワ・サーカスの衣装を手掛けたのは、アーティストの石井竜也。一見するとモノトーンで控えめな印象だが、会場の照明が落とされると、月のように妖しく光る仕掛けになっている。グレート・モスクワ・サーカスの空中ブランコは、“エアリアル・アダージョ”といって、空中ブランコの上でしなやかでロマンチックな技を披露するもので、衣装の輝きが演技を一層華やかに演出している。


ライブパフォーマンスとVTRの融合

ショー全体の進行を行うのは、俳優・唐沢寿明が扮する“ルナ・パトローネ”。人を驚かせることが大好きなルナ・レガーロのマスターだ。彼は会場が暗転すると、会場内に設置された6ヶ所のスクリーンに登場し、巧みな話術で、次なるパフォーマンスへと誘っていく。スクリーンにはスターシェフたちのプロフィールや、料理のコンセプトを紹介するVTRも流されるため、あらかじめ知識を得てから、料理を味わえる。どんなシェフが、どんな思いで料理をプロデュースしたか、きちんと理解した上で味わう料理は、また格別だ。

ルナ・レガーロ 月からの贈り物 プレビュー公演

場所:日比谷パティオ特別会場(詳細はこちら
期間:2010年5月30日(日)まで
料金:特別価格 1万4000円(税込み・料理含む・飲み物別)

ルナ・レガーロ 月からの贈り物 本公演

期間:2010年6月1日(火)から2010年8月1日(日)まで

テキスト 基太村京子
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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