2010年04月20日 (火) 掲載
中目黒に、ニューヨークスタイルのベーグル専門店『ベーグル スタンダード』がオープンした。中目黒駅から山手通りを目黒方面へと10分ほど歩くとポルシェのビルがあり、そのすぐ隣の店舗で焼きたてのベーグルを販売している。
オーナーを勤めるのは薮下穂。29歳という若さながらも、同店をオープンさせるまでにさまざまな経験を積んでいる。2002年に大学を中退して渡米、まずはニューヨークのレストランでアルバイトをしながら、料理と英語を同時に勉強した。2003年にニューヨークの料理専門大学に入学し、2005年の卒業後にスペインへと渡って修行を重ね、同年日本に帰国。在日米国大使公邸でおよそ1年間アシスタントシェフとして勤務し、その後、メニューのコンサルタント会社勤務を経て、再び2009年にアメリカへと渡る。ニューヨークの有名ベーグル店『コッサーズ・ビヤリーズ』に直談判し、3ヶ月間でベーグル作りを学んだのち、2010年3月に自身の店『ベーグル スタンダード』を構えた。
薮下が東京にベーグル店をオープンさせた理由は2つある。「東京には天然酵母や国産小麦を使ったベーグル屋がたくさんあるけれど、本場の味と違うという声が多かった」ことと、「東京にはたくさんの外国人がいるのに、日本人の生活とすれ違っていて、情報がクロスしないことがもったいない」と思ったことだ。実際、『ベーグル スタンダード』には、近隣に住む外国人がたくさん訪れている。焼きたてをほお張りながら店から出て来たアメリカ人客に話を聞くと、「こうしてベーグルをかじっていると、ニューヨークの朝のようだよ」と笑顔を見せた。
薮下に味の秘密を聞いたところ、「日本は白いもの信仰が強く、白砂糖や食パンなど、精製された材料を使うことが多い。ベーグルも小麦の芯だけを用いた粉を使っている場合が多いので、やわらかくて味が“きれい”になりすぎている。ニューヨークのベーグルは、1ドル以下のものばかりで、そんなに洗練されていない。僕のベーグルも、もっと“雑”で“汚い”感じを出したかった。だから、ちょっと色が濃くて、堅い。万人受けするかどうかはわからないが、ニューヨークのベーグルを食べたことがある人は、本場の味だと思ってもらえると思う」と話す。
店で提供されているベーグルの種類は『プレーン』『セサミ』『シナモンレーズン』『ブルーベリー』に『ポピーシード』など、常時5、6種類がそろう。フィリングされたベーグルは、『ツナサラダ』『ドライトマトクリームチーズ』『スモークサーモン』『フィグクリームチーズ』など。直径約11センチの大きめなベーグルは、ぎゅっと目がつまっていて、ひと口かむごとに、小麦の味が広がってくる。ずっしりと重みがあり1つでもかなりの食べ応えだ。オープンして1ヶ月の現在、店頭でベーグルをトーストするなど個人のニーズに合わせたサービスは展開していないが、店が落ち着いてきたら、徐々に増やしていく予定とのこと。
『ベーグル スタンダード』の店さきには、ベンチが2つ置いてある。ニューヨークスタイルのベーグルの味を再現するだけではなく、まさにさまざまな人種と情報がクロスするニューヨークスタイルのネットワークが、中目黒の小さなベーグル屋のベンチから広がっていきそうだ。
(『ベーグル スタンダード』ヴェニューはこちら)
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