三菱一号館美術館オープン

開館記念展<I>『マネとモダン・パリ』で19世紀にタイムトリップ

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三菱一号館美術館オープン

「三菱一号館美術館 外観写真」 写真:ホンマタカシ

2010年4月6日、東京・丸の内に『三菱一号館美術館』が開館した。『三菱一号館』は、三菱が丸の内に建設した初めての西洋風オフィスビル。1894年(明治27年)、開国して間もない日本政府が招へいした英国人建築家ジョサイア・コンドルによって設計された。当時は三菱合資会社の銀行部などが入りにぎわいをみせていたが、1968年(昭和43年)に老朽化のため解体された。その三菱一号館が40年あまりの時を経て、コンドルの原設計にのっとり美術館として同じ地によみがえったのだ。全館に19世紀後半のイギリスで流行したクイーン・アン様式が用いられ、近代的なビルが建ち並ぶ丸の内で異彩を放っている。この三菱一号館が目指すところは、主に、都心にある美術館として街歩きの拠点となることと、100年の歴史を未来に継承することで、今後は19世紀近代美術を中心とする展覧会を開催していく予定だ。

開館記念展<I>『マネとモダン・パリ』も、19世紀に活躍した画家にフォーカスを当てている。エドゥアール・マネ(1832-1883)は、後世の芸術家たちに決定的な影響を与えた、近代絵画史上、重要な画家のひとり。この展覧会は、そのマネの芸術の全容を、当時のパリが都市として変ぼうしていく様子と結びつけながら、代表的作品により展覧したもの。マネの油彩や素描、版画など80点余りが出品されている。また、同時代の作家たちの油彩、建築素描、彫刻、写真など約80点も合わせて展示されており、マネの生きたパリの芸術的な背景も紹介されている。

ここでの見どころは、大きくわけて3つある。まずは、その展示構成。三菱一号館美術館は、そもそもオフィスビルとして設計されたため、大規模美術館のような広い空間は少なく、小さい部屋がいくつも連なっている。そのため、どの作品をどの部屋に置くかは頭を悩ませるところで、部屋ごとに設けたテーマに合わせて作品を配置することは、「パズルを解くようだった」と、館長も感想を述べている。作品は見る順番や配置によって、まったく違った印象になるので、仮に一度目にした作品であっても、この美術館で見れば感じ方も違うのだ。

2つ目のポイントは照明だ。この美術館の展示室には、“作品の保護”と“快適な鑑賞”という2つの条件を満たすため、2種類の光源を持つ最新の光ファイバー照明システムが使われている。そのため、作品が紫外線の影響を受けないことはもちろん、色が鮮明なのだ。特にマネの作品の場合、緑、紫、黒が美しい。筆の繊細なタッチも最新の照明によって浮き彫りにされていて、描き上がったばかりの作品を目にするような興奮に包まれる。

そして最後のポイントは、やはり“本邦初公開作品”だ。今回は、『扇を持つ女(ジャンヌ・デュヴァルの肖像)』『エミール・ゾラ』『ローラ・ド・ヴァランス』の3点が公開されている。『ローラ・ド・ヴァランス』は1863年に画廊に展示されたが、大胆で荒々しいタッチとコントラストの強い色彩が不評で、抗議が集中した作品だ。今、この作品を見ると、批評とは時代に影響されるものであり、作品の完成度とは関係ないことを改めて実感させられる。
このように、日本でマネの作品をまとまった形で見ることができる機会は少ない。しかもマネの生きた19世紀のデザインの建物で見られる機会は、極めて貴重だ。近代絵画の創始者マネの全容、ぜひ堪能してほしい。

「すみれの花束をつけたベルト・モリゾ」 1872年 オルセー美術館 ©RMN(Musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by DNP artcom

開館記念展<I>『マネとモダン・パリ』
期間:2010年4月6日(火)から2010年7月25日(日)まで
閉館日:毎週月曜(ただし5月3日、7月19日は開館)
料金:一般1500円、高校・大学生1000円、小・中学生500円(未就学児は無料)

テキスト 基太村京子
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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