黒木瞳 『SADA〜戯作・阿部定の生涯』 1998年
2011年05月10日 (火) 掲載
多くの日本映画に出演し様々な役をこなした女優、京マチ子は、時代を超える最高傑作、黒澤明の『羅生門』(1950年)や溝口健二の『雨月物語』(1953年)をはじめ、1950年代だけでも60本以上の作品に登場した。アメリカのコメディ映画『八月十五夜の茶屋』(1956年)では、マーロン・ブランドと競演し、ゴールデングローブ賞にまでノミネートされる。この作品で日本人に扮するブランドの奮闘ぶりは、なかったことにした方が彼のためにもいいだろう。
『地獄門』(1953年) での袈裟御前は衝撃だった。『赤線地帯』(1956)での官能的な娼婦、ミッキー役も忘れがたい。
寺島しのぶの“美”は決して伝統的なものではないが、他の女優たちが尻込みするような役を大胆に演じてきた。ということは、もちろん濡れ場シーンも多い。2003年に『ヴァイブレータ』と『赤目四十八瀧心中未遂』で数々の賞を総なめにし、2010年は『キャタピラー』でベルリン国際映画祭最優秀主演女優賞に輝いた。
寺島が出演する作品は、セクシーというよりは物騒な役柄が多いが、『赤目四十八瀧心中未遂』の気まぐれな綾役ははまり役だった。作品自体は不作に終わったものの、『愛の流刑地』(2007)での不倫に陥る主婦役もはまり役だった。
女性のみで構成される宝塚歌劇団の最も有名な卒業生のひとりが、華麗に女優へと転身した黒木瞳だ。海外のファンには2002年のホラー映画『仄暗い水の底から』で知られているが、数多くの賞を受賞した『失楽園』(1997)を代表とする、リスクの高い役柄にも果敢に挑戦している。
『化身』(1986年)を皮切りに、セクシーな役が続くが、彼女が最もエロティックだったのは役所広司との不倫愛に溺れる人妻を演じた『失楽園』だ。大島渚の『愛のコリーダ』の足下には及ばないが、『SADA~戯作・阿部定の生涯』(1998年)の阿部定役も必見に値する。
凛子(母親からは本名の百合子で呼ばれている)は、女優キャリアの駆け出しとなった7年間は、インディーズ映画の端役として演技をしてきた。2006年に出演した『バベル』で彼女は一挙に国際的なスターダムにのし上がった。日本人女優としては50年ぶりに、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされ、“危険な日本人女性” 役の座を不動のものにした。
『ナイト・トーキョー・デイ』(2009年) で演じた、殺し屋。昼は魚市場で働くが、次のターゲットと知らずに孤独なスペイン人男性と恋におちる。『ブラザーズ・ブルーム』(2008年)でのバン・バン役はセクシーとは形容しがたいが、短期でけんかっ早いところに興奮する人もいるかもしれない。
2009年に紫綬褒章を受章した松坂慶子がこれまでに出演した映画は80本以上、テレビドラマは100本を超える。これまでの受賞歴はそうそうたるもので、日本アカデミー賞主演女優賞を『青春の門』、『蒲田行進曲』、『死の棘』で受賞している。
女優キャリア全体を通じて、松坂にはどこかエロティシズムが漂う。『夜の診療室』(1971)でセックスについて語る大学生役や、まだ青年の真田広之との恋物語『道頓堀川』(1982)、流刑になり年老いていく花魁を演じた『るにん』(2005)などがそうだ。
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