東京の映画シーン

銀幕の都、東京

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東京の映画シーン

ハリウッドのリメークによって、日本映画は世界的にしっかりと認知されるようになった。日本映画の歴史は今を去る19世紀の「芸者の手踊り」にまでさかのぼる。一般大衆が映画を見るようになったのは20世紀の始め、海外からの輸入無声映画だった。外国語の字幕が理解できない観客のため、雇われ弁士が物語を説明した。弁士はやがて邦画および洋画の講釈で人気アーティストになった。この初期時代の特筆すべき映画に、精神病院の小間使いをテーマにした衣笠貞之助の「狂った一頁」(1926年)がある。その映像と技術は衣笠の力量を現すものとして、現在でも心を揺さぶり、日本映画揺籃期の洗練性の証となっている。

黄金時代

1930年代は、日本映画「黄金時代」の幕開けだった。小津安二郎、溝口健二、成瀬巳喜男などの気鋭の監督のほか、前評判がそれほどでもなかった清水宏などの監督が映画技術を駆使した作品を制作した。小津は、有名な「東京物語」(1953年)などの戦後作品でより知られているが、戦前の作品もさらに先駆的で、変化に富んだ同様に老練なものがある。この時期は、日本のスタジオ・システムが勃興した時期でもある。ハリウッドの同業と同じく、松竹、東宝、大映、日活など大スタジオが監督を契約で縛って、その作品内容を支配するようになった。映画制作は繁栄する極めて利益の多い実業となり、スタジオが鉄の支配力を振るった。 第二次世界大戦のあおりで、映画制作は主に戦意高揚ものに限られたが、戦後になって落着きを取戻した。黄金時代は小津、溝口および成瀬が活躍した1950年代の半ばから末まで続いたというのが一般的見方だ。さらに、日本映画の次の40年間を決めた黒澤明のような新星が陸続と現われた。この時期に、市川昆、増村保造や勅使河原宏など才気煥発な監督が出現した。

ヌーベルバーグ

1950年代末期と60年代の初頭には、スタジオ・システムが以前にもまして興隆したが、ヌーベルバーグ(フランス語で新しい波)運動の新進気鋭の監督がこれに挑戦した。この運動は大松竹スタジオが若者のファンを惹きつけるために起したものだった。大島渚、今村昌平、羽仁進、吉田喜重その他が、日本の社会問題を暴き、西洋の価値観や唯物主義に疑問を呈し、性などタブー視されたテーマを扱う映画を制作した。また、監督を縛るスタジオ支配を破ってやがては自立を果たし、芸術的に価値ある独立プロ日本アート・シアター・ギルドを形成した(ATG)。 1970年半ばのヌーベルバーグ衰退で、日本映画の危機が始まった。数年前から観客動員数が落ち続け、新進の監督が少なくなった(黒澤、今村などはいまだ健在だったが)。この流れは1980年代を通じて続いた。日本映画の興行収入の大半はまだ国内制作映画で占められていたが(他の国にはない珍しい現象)、スタジオ制作の映画は型どおりのメロドラマばかりで興行的にはうまくいかなかった。1972年に大映が破綻し、日活はソフト・ポルノ制作に転向した。

再生

1990年代に入って、日本映画は、当代の映画制作者では最も国際的名声を博した北野ビート武や、岩井俊二、黒澤清、塚本晋也、篠崎誠、市川準などの若手/斬新な監督が現れて精力的な再生を成し遂げた。鬼才宮崎駿が率いる日本アニメが海外市場を席巻し国内に莫大な収益をもたらし始めた。宮崎の「千と千尋の神隠し」(2001年)は日本での歴代最高収益を上げた。ハリウッドもこの時流に相乗りして、中田秀夫のホラー・ミステリー映画「リング」(1998年)、「リング2」(1999年)、「仄暗い水の底から」(2002年)や清水崇の「Juon/呪恩」(2003年)などの国内ヒット作品のリメーク版を成功させ興行収入を稼いだ。

入場券情報

東京で映画館に行くのは安くない。当日券で普通1,800円(特典者は1,000~1,500円)はする。節約したければ、コンビニやプレイガイドで前売券をおよそ300~500円安く買うことだ(あるいは、入場券が1,000円になる月の初日を狙う)。この方法の難点は、切符が映画指定で販売され、映画館指定ではないことだ。そのため、理屈では、最新の評判作を目当てに観客が押し寄せることがある。座席指定でないため、観客は常に1時間前から並び開場と同時に最上席に殺到する。新宿、銀座、渋谷その他繁華街の映画館の大部分はこのシステムで運営されている。指定席はピアなどのプレイガイドで予約できるが、200~1,000円は余計にチャージされる。映画館によっては安いところもある。その入場料を以下にリストした。新しい種類の複合施設は、販売時に座席指定の入場券を割増なしで提供するので、希望が持てる。 大抵のハリウッド製、あるいは外国の映画は元のまま日本語の字幕入りで上映される。映画館によっては邦画を英語字幕で上映することがある(普通は日曜日の最終上映時)。訪日時が秋なら、二つある国際映画際の一つに出くわせるかもしれない。東京国際映画フェスティバルと東京フィルメックス(http://www.filmex.net)で、邦画が英語字幕入りで見られる。上映する映画のリストは、メトロポリス、ジャパンタイムズか東京Q (www.tokyoq.com)でチェックすればいい。

Tokyo City Guide (Edition 5)から翻訳、編集

※掲載されている情報は公開当時のものです。

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