インタビュー:注目のシンガーROX

「東京は、実際に来てみると、何もかもが想像以上にすごかった」

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インタビュー:注目のシンガーROX

イギリスのBBCが選ぶ期待の新人『BBC Sound of 2010』にリストアップされ、平成のローリン・ヒルとの呼び声が高いROX。2010年6月に初来日を果たし、29日にはタイムアウトカフェ&ダイナーでアコースティックライブが行われた。ジャマイカ人とイラン人のハーフで、サウスロンドン出身の22歳。ジュード・ロウやオーランド・ブルームも卒業した、イギリスのミュージカル劇団『ナショナル・ユース・シアター』に5歳のころから参加、人前でパフォーマンスすることが大好きだというROXに、デビューアルバムについて、また大好きなファッションの話などを聞いた。

平成のローリン・ヒルとも言われていますが、それについてはどんな気持ちですか?

R:子どものころから彼女の音楽を聴いていたので、すごく嬉しいです。ただ、私はあのレベルにはまだまだ達していません。彼女のようになるのが自分の目標だけど、なかなか難しくて、もっともっと頑張らないといけないなと思っています。

ニューアルバムに参加しているプロデューサーやバックミュージシャンには、グラミーを3度受賞したコミッショナー・ゴードンや、AL Shuxなど、大物が多いですが、一緒に音楽を作ってみて、どうでしたか?

R:今回のレコーディングのプロセスは興味深いものがありました。シンガーになりたいと思っていたころに、「レコーディングとはこういうものだ」と思い描いていたことが、実際にやってみると、全然違ったものだったんです。

はじめは、ローリン・ヒルのアルバムも手掛けたコミッショナー・ゴードンとニュージャージーで一緒に作業をし、その時に、ボブマーリーやスカタライツとともに音楽を作ってきたジャマイカのミュージシャンに会い、レコーディングすることができました。ロンドンの家からは遠く離れた場所だったけど、ジャマイカの話を聞いたりして、自分のおじいちゃんの友達と一緒にいるような居心地の良さの中でレコーディングができたので、すごく楽しかったです。友達との約束とか、他の誘惑もなかったし、スタジオはホテルから5分くらいの場所にあったので、レコーディングに専念できたことも良かったと思います。

ただ、ロンドンに戻って、改めてニューヨークで録ったものを聴き返した時に、自分の思い描いていたものと違うなと感じて、一瞬あせったんだけれど、レーベルと契約する前から仲の良かったAL Shuxに頼んでレコーディングのやり直しを手伝ってもらい、私がやりたいことを具現化してもらいました。本当に良い形で仕上げてくれたので、良かったと思っています。

何が“違う”と感じたのでしょうか。

R:決して悪いわけでも、間違っていたわけでもないのだけれど、ロンドンで改めて冷静に聴き返してみると、実際レコーディングしていた時には気づかなかったこと、「曲に対してこのベースラインは合わないかも」とか、「このビートは歌を活かしきれてないかも」とか、細かいところが気になってしまった。もともとは5週間で仕上げるはずだったのですが、結果的に数カ月かかってしまった。その間は、このまま仕上げられないんじゃないかという不安もあったし、計画を台無しにしてしまったんじゃないかとも思ったけれど、頑張った甲斐もあって、最終的には自分が思い描いていたものができたと思っています。

アルバムを聴いたんですが、歌声はパワフルなのに、とてもリラックスできました。特に9曲目の『Precious Moments』が好きで、家族でクリスマスを過ごすような温かさを感じました。

R:ありがとう。『Precious Moments』は、ニュージャージーでのレコーディングのまま、後から手を入れなかった曲のひとつです。いつかこの曲が、誰かの結婚式のテーマソングになれば良いと思っています。カップルの思い出の曲になったりするのも嬉しいですね。

ステージで着るものは自分で選んでいるのですか?

R:とても気の合うアビーというスタイリストがいて、私が好きなものを伝えておくと、すごく素敵にコーディネートしてくれるんです。最近はマルベリーとか、あと、フランスのブランドでアメリカンレトロというのを切ることが多いですね。フランスなんだけど、アメリカなの。おかしいでしょ。それから、ドクターマーチンも好きだけど、ステージの上では、動きやすくて軽めのものを選ぶようにしています。

今回初めての来日ということですが、日本について知っていたことはありますか?

R:食べ物が美味しいこと、ファッションが素晴らしいこと。東京はものすごくペースが速くて、ネオンが煌々としている、と聞いていたのですが、実際は何もかもが想像以上にすごかった。伝統的なルーツを大事にしながら、時代ごとの新しいものを取り入れていくという、健全なバランスがある。東京はすごくモダンだけど、日本人らしさというものを失っていないと思います。ただ、時差ぼけがあるので、本当に自分が日本にいるという実感がまだ湧かないんです(笑)。そして、回復したころには帰るんですよね。

行きたい場所はありますか?

R:ロンドンの友人に、109には行った方が良いって言われていたので行ってみたいです。それから、今回はスケジュール的に難しいけれど、タイムアウト東京で見つけた(笑)『Jam Rock』っていうジャマイカ料理は、次回の来日では絶対に食べに行きたいと思います。

ファッションはどんなものが好きなんですか?日本の“プチプライスショップ”109に興味があるということは、ロンドンのプチプライスショップ、PRIMARKには良く行くんですか?

R:PRIMARKはあんまり好きじゃないの(笑)。PRIMARKで買い物した次の日にクラブに遊びに行ったら、同じ服を着ている女の子が2人もいたの!かぶっちゃうと嫌ですよね。私は、ゆっくり買い物が楽しみたいし、一点ものが好きなので、ヴィンテージものを扱っているお店や、リバティに入っている北欧のブランド『アクネ』とかで良く買い物をします。ロンドンに旅する時は、ぜひ行ってみてくださいね。


ロックスのデビュー・シングル『マイ・ベイビー・レフト・ミー』は、iTunesのポップチャートでトップ10入りしている。一足先に発売となった輸入盤のデビューアルバム『Memoirs』は、品切れ店が続出中。日本版のデビュー・アルバム『メモワール』は2010年7月21日(水)の発売予定だ。

Rox (ロックス)
アルバム:『Memoirs (メモワール)』
レーベル:Rough Trade / Hostess
発売日:2010年7月21日(水)
価格:1980円(税込)
※日本盤ボーナストラック、歌詞対訳、ライナーノーツ付予定

テキスト 東谷彰子
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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