Shugo Tokumaru at Xland Festival 2012
2012年12月21日 (金) 掲載
トクマルシューゴのような非凡なアーティストを目にするたび、いつか魔法が溶けてしまうのではないかと不安になる。よくいるような、インディ・ポップに精通したマルチプレイヤーになってしまうのではないかと。だがそこまで心配する必要はないかもしれない。『イン・フォーカス?』 は眩い万華鏡のようなアルバムだ。アイデアが深すぎて、ときどき聴くのに疲れてしまうほど。細部まで凝っていて、まるでトクマルが2009年にリリースした『ポート・エントロピー』の問いへの自答のようだ。3分18秒の曲『ポーカー』だけでも、他のインディーグループのアルバム一枚以上のことが一曲の中で起きている。テルミン、レコーダー、おもちゃのアヒル。多重録音の洪水は、口ずさみやすいメロディのしっかりしたサポートがなければ崩壊していただろう。『タイトロープ』はトクマルの最もストレートに心を打つ曲かもしれない。
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2012年は韓国ポップにとって受難の年だったといわれているが、トゥエニィワンの全曲日本語のベストアルバムを打ち負かす存在はいなかった。肩で風をきるバッドガールズたちが繰り出す音楽は、すこしおかしな英語のシャウトアウト『マイ・ガール』、クランチーなダンスホールまで、リズムを完璧に自分たちのものにしている。マドンナの『ライク・ア・バージン』のクロージングカバーを除いて、アルバムは最初から最後まで純粋な近未来的な楽しさが詰まっている。
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灰野敬二の不失者の2003年以降初の新曲。前作とのコンパニオンピースだ。ゆったりとした抽象的なロックの前作、まぶしい いたずらな祈り は、バンドが得意とするテリトリーだが、光となづけよう には心から驚かされた。35分間きっかりの、破砕したおならのようなブルースから、純粋なサイケが洪水のように押し寄せる。ここしばらくの中では一番生意気な感じの灰野のボーカルが、それらを見事にまとめあげているのだ。
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日本のエレクトロシーンから近年続出している若手プロデューサーたちの中でも、ヨシホリカワの音は突出している。千葉県出身のホリカワは、2011年のレッド・ブル・ミュージック・アカデミーに参加した際に注目を集めた。新アルバムでは、アンビエント分野のレコーディングが、“ミニチュア交響曲”に仕立て上がっている。『バブルス』のピンポンボールの使い方は、エイフェックス・ツインの『ブケパロス・バウンシング・ボール』以来の快挙だろう。こうした小さな喜びがこのアルバムの随所にちりばめられているのだ。
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彼女はミステリアスな存在だ。日本と英国をバックグラウンドにもつミチは、2012年のベストアルバムのひとつともいえるポップアルバムを大手レコードレーベルから3月にリリースしたが、その後の活動はあまり目立たない。アルバムリリース後に3回ライブを行ったが、全てを彼女が演奏した。サポートがない理由はわからないが、確かなことは、『セラピー』がもっと多くの人に聴かれるべきアルバムだということ。余計なところが全くない、楽しさがぎゅっと凝縮された一枚で、Jポップというジャンル全体の価値をあげている。
東京のインディーシーンに、ドイ・サイエンスのようなバンドが登場するのは、想像し難い。幸運なことに隔離された(相対的に言って)熊本から生まれた、風変わりなバンドで、彼らの音はダーティー・プロジェクターズの初期の頃のアルバムのように、もろくて奇妙だ。スタッターファンクで筋を無視した構成で、オフキーなコーラス・ワーク。インフォメーションは、じれったさに苛立つか、瞬く間に恋に落ちるか、両極端な反応に分かれるだろう。
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もう彼らのようなグループは出てこないのではないだろうか。下山は関西音楽シーンの黄金時代を思い出させる。タイムアウトに近いある人曰く、彼らのステージは「クィーンのカバーを歌うためのバーファイト」のようだという。ステージ場の激しいアクトはさておき、『かつて うた といわれたそれ』 は、サイケデリクノイズよりかは、バットホール・サーファーズスタイルの、驚くほどローファイなパンクジャムを、粗いジャンプカットのエディットで煮込んだ一品だ。事実上聴くに耐えないアルバムとして、素晴らしい快挙だ。
あまり表舞台には立ちたがらないアメツブの3枚目のアルバム。このアンビエントで美しいアルバムは、フィールドレコーディングとピアノの断片、かすれたボーズ・オブ・ユニット風のメランコリーさが光る美しい曲が満載だ。アメツブはアイスランドをよく訪れるそうだが、まさに旅には最高のサウンドトラックと言えるだろう。今年は日本でも、エレクトロニカ領域から派手なアルバムが何枚かリリースされたが、繰り返し何度も聴きたくなるのはこの一枚だ。
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丸山武明はまだ誰も知らなかった時代にダブステップ始めた第一人者。だが彼の最新アルバムはどこか時代が古くささを感じさせる。ハイプサイクルが加速するにつれ、ダブステップはもう時代遅れなのかもしれないが、『ニュー・エポック』は最高に素晴らしいアルバムだ。丸山も他と同様、エア・ブレイカーの「バビロン・フォール」のようにヘッド・バンギングのハーフステップをするが、特筆すべきはタイトルトラックのフューチャリスティックな大作。長年の友人であるコード9も絶賛するはずだ。
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京都の女性歌手、Cuusheは、彼女に影響を与えたコクトー・ツインズ、チルウェーブ、ジュリア・ホルターらといった存在を越えてはいないものの、この昇華したEPでかなり近くなっているといっていいだろう。3枚組の3インチCDセットには、3曲の新曲の他に、ゲスキア!、モーション・シックネス、タイム・トラベル、ジュリア・ホルター、そして彼女自身による、オリジナルを引き立てさらに広げたリミックス曲が収録されている。
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