2012年06月18日 (月) 掲載
他のバンドはもっと売れているのかもしれない、いや、格段に売れているのかもしれない。だが、ミステリー・ジェッツは20代のUKインディミュージックファンの心を掴んで離さない。当初はイギリスのエキセントリックミュージックを代表する、シド・バレットの後継者かと噂されていた彼らだが、ロンドンのテムズ川の中に浮かぶ孤島、イールパイ島出身であり、ボーカルのブレイン・ハリソンの実の父親、ヘンリーがかつてバンドに在籍していた事実も十分エキセントリックだ。しかし、2006年のサイケデリックでひねくれたデビュー作、"Making Dens"をリリース後、バンドはよりポップなサウンドを追求し続く、"Twenty One"と"Serotonin"をリリースし、インディディスコのヒットを生み出した。
The Count & Sindenとのコラボ曲、"After Dark"(YouTube)でサウンドに於いてHot Chip寄りになったものの、4枚目の本作、"Radlands"ではまた全く違う方向性へと向かった。"Radlands"はテキサスのオースティンでレコーディングされ、アルバムを通して、ニール・ヤング、レイナード・スキナード、70年代中盤のフリートウッド・マック等のサザンロックのテイストが感じられる仕上がりだ。
タイムアウト東京はロンドンのブリクストン・アカデミーでのライブを終えた直後のブレインにアルバムについて、今回来日時に出演するホステス・クラブ・ウィークエンダーについて話を聞いた。その中でも、バンドのギタリストであるウィリアム・リースが井上和香と恋愛関係にあると言うインターネット上の噂についての話題も興味をそそられるところだ…
― ブリストン・アカデミーでのライブはかなりの盛り上がりだったそうですね。
Blaine Harrison:うん、かなりね。ロンドンで大きなライブをやるのはかなり久しぶりだったから、すごくスペシャルだったよ。お祝いムード満載でさ。アルバム4枚分位祝った感じだね。何時間でもライブしてたかったけど、やらなくて良かった。
― "Radlands"ツアーでは収録曲を実際のアルバムとは異なるアレンジでプレイされていますよね。
Blaine Harrison:そうだね。ミキシングとかその辺に関してはスタジオでは出来てても実際にそれをステージで再現するのは難しいからね。でもすごく有機的でからくりも全くないまっすぐなアルバムだから、そういう意味に於いてはごくごく自然な流れなのかもしれない。
― 過去二枚のアルバムと比べると、本作"Radlands"は色が全く異なりますよね。やはり"Serotonin"後、バンド内で一区切りつけたい気持ちが強まったからなのでしょうか?
Blaine Harrison:そうだと思う。"Serotonin"と"Twenty One"はアルバム自体はポップじゃなくて、メインになる曲だけがポップだったんだと思う。それがシングルカットされてね。でも今回のアルバムはそうはしたくなかったんだ。イギリスのインディーのシングル曲市場は終わってるよ。誰ももう7インチなんて出さないし、全部デジタルになっちゃって、CDすら作らないだろ?だから、今回のリリースはアルバム自体に焦点を定めたかったんだ。すごく解き放たれた気分だったよ。ポップな曲を書くのはすごく好きなんだけど、ここ2作はずっとそれだったから、そこから離れたのは良かったと思う。
― 音楽ブログなんかで取り上げられるためにも、ありがちなポップシングルのようにキャッチーなものに仕上げなければいけないと思いました?
Blaine Harrison:そうなんだけどさ、そういうブログを賑わせてる曲って実際にメインストリームのラジオなんかでかかってるのとは必ずしも同じじゃないんだよね。例えば、レディオ1聴いてみると分かるけど、(因みに僕も僕の周りも誰も聴いてないけどね。あまりにもひどいから。)ギターが入った音楽は一切かからないんだ。いや、Zane Lowe辺りのDJはFoo Fighters、Maccabees、The Vaccinesとか今旬のバンドをかけるかも。でも結局中堅どころはかけないんだ。
― 遠く離れたアメリカで、アメリカの音楽に影響を受けながらのレコーディングで新境地は開けたと思いますか?
Blaine Harrison:いい質問だね。アメリカではフォーク、カントリーミュージックが根ざしてるからね。でもアメリカを選んだのは、カントリーのアルバムを作るためじゃなくて、自分達を全く新しい環境において何が起きるかをこの目で見たかったからなんだ。テキサスを選んだのも、別にテキサスっぽい音を作りたかった訳じゃなくて、ただ単に多分ロンドンから一番離れてそうな場所だからって理由だったんだ。
― それでは、今回のアルバムではこれといったコンセプトは存在しなかったのですか?
Blaine Harrison:前はレコーディングするとき、何をアルバムに入れたいかとかプランを立ててたこともあるんだけど、スタジオ入りした途端そんなものどこへやらって感じだったんだ。今回のアルバムは実験的だね。いや、実際の「実験」っていう意味ではないんだけど、作る過程が完全に有機的だったっていう意味ね。詳細なプランも何も立てなかったよ。
― 前回の来日時、トランプルームでDJをされましたし、2010年にはThe CountとSindenと'After Dark'でコラボしていらっしゃいましたが、バンドをダンス方面に持っていこうと思ったことはありますか?
Blaine Harrison:二枚目のアルバムはErol Alkanと一緒に作ったんだ。実際にダンスアルバムを作りたくて彼に声をかけたんだよ。スタジオに入って即、Erolに「僕たちの曲を刻んで、シーケーンサーにかけて、808キックドラムを全てのベースに入れてくれ」って頼んだんだ。そしたら、「オッケー分かった、僕がティーンエイジャーだった頃に聴いてたSuedeとかPulpみたいな感じの音のアルバムにしてみるよ」って言われてさ。ちゃんと話がかみ合ってないような気もしたんだけど、結果的にはすごくうまくいったから良かったよ。Erolとの共同作業は本当に楽しかったよ!
― かなり若い頃にバンドを始められていますよね。その当時、父親をバンドメンバーにすることで若いバンドが陥りがちな落とし穴にはまらずに済んだと思いますか?
Blaine Harrison:間違いなくそうだね。やっぱりすごく若かったから、ほとんどの場面においてはあえて意識してなかったけどね。レコード契約を結んだ時はまだ18か19だったんだよ。親父もその場にいたよ。ミーティングにも全部出てくれて、ある日こう言ってきたんだ。「契約を結んで彼女とどこかへ行くんでも、何をしてもいいけど、残りの金は全て銀行口座に預金だ。有り金を全部遣いたいところだろうが、そうしなかったことをありがたいと思う日が必ず来る」って。そのおかげで今の僕たちがいるって言ってもおかしくないよ。
― あなた方のウィキピディアに、Williamと井上和香さんの熱愛騒動の件が記載されていたのですが、事実なのでしょうか?
Blaine Harrison:井上和香って実在するの?そんなようなことが書いてあったのは覚えてるけど、すぐに削除されたと思う。また誰かが上げたんだね。まぁ、それがウィキペディアだよね。会ってみたいなあ!ライブに呼ばなきゃだね。
― 以前ほど露出がなくなってしまったと思うので、もしかしたら来てくれるかもしれませんよ。来日時、何か他にプランはありますか?
Blaine Harrison:前回の来日はすごく楽しかったよ。でも、今回はタイトなスケジュールなんだ。アメリカでツアーをするのに、合間に4日あったから日本に行くんだけど、ライブして、すぐとんぼ帰りしなきゃいけないんだ。あっという間だろうね。
― 日本にいる間寝なければいいんですよ…
Blaine Harrison:まさに。でも、日本っていつもそうだよね。日本にいくといつも睡魔との戦いみたいな感じ。フジロックも行ったら全員時差ぼけでさ、飲まなきゃやってられないんだ。あれは楽しかったな。
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