インタビュー:ジェイソン・クルーズ

Part 2

インタビュー:ジェイソン・クルーズ

Photo by Takashi Koga

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―ご自身のアート(www.amerikanblackheart.com)についてお聞かせください。どのようにして始められたのですか?アートスクールに通われたのですか?それとも独学ですか?

Jason : 高校を中退して、アートスクールの奨学金はあったんだけど、同時期にストラングアウトを結成して、世界中をツアーし始めたんだ。選択肢は二つ:アートスクールに入学して絵を習うか、世界中をツアーしながら絵を描くか。で、結局学校へは行かずツアーをしながら絵を描くことに決めた。学校ではあらかじめ持っているテクニックに磨きをかけることくらいしか教えてくれないからね。どうやったらいいアーティストになれるかは教えてくれない。反対に世界にツアーに出る事でそれが分かる。

―では幼少の頃から絵は描いていらっしゃったんですか?

Jason : そうだね、子供の頃からずっと。それで、だいぶ前にファット・レコーズ(所属レーベル)のファット・マイクがパンク・ロック・コンフィデンシャルって雑誌を作っていて「お前、アーティストだろ?なんか絵描けよ、ジンに載せてやるから」って言ってきたから、何点か作品を提供したんだよ。出来上がった雑誌を見て、もしかしたら絵を描くのもアリだなって思って本格的に始めたんだ。曲作りはやっぱりチームワークだし、他の人の意見も取り入れなければいけないから、その過程で自分の意志とは反する方向に行ったりもするけど、絵に関してはどこまでも自分の好きなようにできる。限りない自由を与えてくれるんだ。

―アメリカ国外でアートショーはされたことありますか?

Jason : まだないんだ、ぜひともやってみたいけどね。特に日本は俺のアメリカっぽいスタイルを受け入れてくれると思うから今度はアーティストとして来てみたい。もう少し滞在して、日本のアートシーンのリサーチをしたり、その業界の人とも会ったりしたかったな。アート方面での繋がりはまだないからさ。特にアンダーグラウンドなアートシーンにいる人たちに会ってみたい。日本でアートショーをするのが次のゴールだね。

―影響を受けたアーティストはいますか?この前のライブではバスキアがプリントされたTシャツを着られていましたし、Andy Warholという曲もありますよね。

Jason : しばらくタトゥーアーティストもやっていたことがあるんだけど、タトゥーはとにかく細かいし、繊細さを求められる。バスキアからは子供のようになんの制約もなく自由に絵を描くことを教えてくれたよ。たまに技術面でどうしても自分の中で納得できない時があるんだけど、そういう時もバスキアとアンディー・ウォーホルを思い出して、あんまり根詰めないようにしているんだ。少し位はみ出したっていいじゃん、もっと自由になって、キャンバスをぶっ壊してやれ位の気持ちでね。完璧で細かい描写をしたい自分もいるけど、それを踏み倒してめちゃくちゃにしてやりたいっていうもう一人の自分もいるんだ。

―絵のモデルにされているのは想像上のものですか、それとも実際に何かを見て描かれているんですか?

Jason : 両方だね。絵の他に写真も撮るんだけど、写真に絵を描くこともある。それをまた他の絵とあわせたり、写真サイズから始めて最終的には大きいキャンバスに移したりね。どういうものにするかあらかじめプランは立てるんだけど、最後に自由にできるスペースは残しておくって感じかな。

―作品を拝見すると、明るくて楽しい雰囲気のものよりどちらかというとダークな雰囲気のものが多いように思えますが、性格や心情を現しているんでしょうか?

Jason : 分かんないな、俺の彼女に聞いたら分かるんじゃないかな(笑)子供の頃からダークな部分を持ち合わせていたんだ。どうしてか分からないけどね、一筋の希望はいつでも持つようにはしているけど。うまく表現できないな(笑)。

―ザ・ハウルというバンドでもシンガーをされていますが、ソロでやられているものとはまた別のものなのですか?

Jason : いや、同じものだよ。ザ・ハウルも今回連れてきたかったんだけどね。曲は全て自分で書いている。ストラングアウトに長年いることで他の音楽も書かないと、って気持ちになったんだ。アコギを弾くのが至福のときでさ、楽しいからやっていられるんだよね。アメリカンミュージックが大好きだから、そのジャンルでもやってきたいと強く思っている。

―ストラングアウトのストレートなパンクのスタイルと全く違うものなので新鮮ですね。

Jason : そうなんだよ、ストラングアウトのファンは全く想像してない音。(笑)別プロジェクトで同じようなことやってもしょうがないしね。でも、実際歌詞を見比べると割と同じようなことを歌っているんだけどね。音楽のスタイルが違うだけでさ。

―一児の父親で、バンドのボーカルで、アーティストでと幾つもの顔をお持ちですが、どのようにしてうまくバランスを取られているのですか?

Jason : (笑)とにかくこなしていくしかないんだよ。守るべき家族ができた今となっては特にね、やるしかないんだ。全てのことを100%の力でね。ギターを弾くにしても、絵を描くにしても真剣勝負、中途半端はもう許されない。アーティストとしてちゃんと家族を養えて、常にクリエイティブでいられる環境があるならそれで十分だ。だから、今のところはなんとか大丈夫!(笑)それで将来娘に何かを残してあげられたらいいなと思う。世の中の悪を全て取り払って、美しいものだけを残してあげたいんだ。

―最近おすすめの本や映画などの作品はありますか?

Jason : Alain de BottonのReligion for Atheistsという本を最近読み終えたよ。すごく興味深い内容だったから、この本についてだったら何時間でも話せるよ(笑)人生に対して自問自答を繰り返したり、自分の居場所がなく孤独感に苛まれたりしていたらこの本を読んでほしい。俺の人生を変えたとは言わないけど、物事の見方の再確認ができたよ。万人向けの内容ではないと思うけど、この本には、どっぷり浸かることなく、宗教のいい部分をかりてきて、日常生活の色々な場面に当てはめて活用してみようってポジティブなメッセージが込められているんだ。神を信じない、宗教には頼らない、じゃあその後には何があるか?人として生まれた以上、いい人物でありたい、真っ当な人生を送りたい、生きることの目的や意義を見出したいと思う。神や宗教にすがらなくても、世の中にはそれを達成する手助けをしてくれるものがあるって事が書いてある。いい本だよ。あともう一冊はHoward ZinnのA people's history of the United States。これは読み終えるのに一年位かかったよ。(笑)一章読み終えるごとに考え込んじゃうからさ。本当のいい本ってこういう考えさせられる本の事を言うんだろうね。今までの物事の見方を覆されるからね。ツアーでアメリカを離れるようになって自分の国を客観的に見つめ直す事ができるようになった。アメリカ人を批判する訳では全くないけど、やっぱりもっと外に出て見解を広めて他の国の人と交流をして、自国を見つめ直した方がいいと思うんだ。だから旅に出るって本当に人生に於いて重要なことなんじゃないかな。

―では最後になりますが、日本のファンやこのインタビューを見てくれている人たちに何かメッセージはありますか?

Jason : ライブに足を運んでくれてありがとう。さっきも言ったけど、常にクリエイティブでいられるのは本当に恵まれていると思う。その機会を与えてくれている人たちには心から感謝しているよ。


インタビュー さいとうしょうこ
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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