RBMAインタビュー:Anenon

レッドブル・ミュージック・アカデミー、注目の参加者インタビュー 2

RBMAインタビュー:Anenon

マドリードで開催されたレッドブル・ミュージック・アカデミーの参加者から、タイムアウト東京がピックした期待のパーティシパントへのインタビュー第2弾。期間中、ソフィア王妃芸術センターで開催されたモートン・サボットニックのライブの前座をつとめたロサンゼルスからの参加者、Anenonに話を聞いた。

― RBMAが無事に終わってよかったですね。終わってみてどうですか?どんな様子だったか教えて下さい。

Anenon:RBMAは今まで生きて来た中で一番嬉しい出来事だったって言ってもおかしくないよ、言葉で表すのが難しいほどに。RBMAというこんなにも素晴らしいプログラムに参加することができて、音楽やアートを心から愛して、それに生きる人たちに出会い、共に作業をし、色々な事を分かち合えて、信じられないくらい恵まれた体験だった。あまりにもすごい体験だったから、どう表現していいのか分からないし、全てをここで語る事はできないけど、一つ言えるのは、あり得ないくらい親切でポジティブな参加者やRBMAスタッフのみんなと毎日を共にするのはすごく刺激になったし、モチベーションがあがったよ。この事は一生忘れないだろうね。

― RBMAでは毎日レクチャーがあったと思うのですが、一番良かったのはどのアーティストのでしたか?

Anenon:もちろん!ワンオトリックス・ポイント・ネヴァー、ジョン・タラボット、ナイル・ロジャース、トレバー・ホーン、トニー・ヴィスコンティ、マニー・フレッシュかな。

― RBMAの一番のハイライトは?

Anenon:難しい質問だな~!そうだなぁ、サックスのソロの音を録ってたときにブーツィー・コリンズが僕の耳元で「ピンク・パンサー」って囁いた事か、ソフィア王妃芸術センターでチケットがソールドアウトのショウでプレイできた事かな。ソフィア王妃芸術センターはすごいところだったよ…。

― どうしてRBMAに応募しようと思ったんですか?どのようなプロセスだったんですか?

Anenon:RBMAについてはずいぶん前から知っていたから、なんで去年応募しようと思い立ったのかわからないな…でもRBMAについてはいい事しか聞かないんだ。しかも、毎年プログラム自体が良くなっているらしいし。多分、自分の中で今年はいけるっていう自信があったから応募したんだと思うよ。応募のプロセスはものすごく大変だったよ、個人的な質問も多かったし、それ故に時間もかかった。それだけでもう1個のプロジェクトのようだったよ!

― RBMA終了後、参加者であるyosi horikawaさんとロンドンでライブを行ったようですが、どうでしたか?YosiさんとはRBMA以前もお知り合いだったのですか?

Anenon:うん、ロンドンでのライブはすごく楽しかったよ!オーディエンスは多分、僕らのどちらからもどんな音が出るのか想像ついてなかったと思うんだけど、最終的にはロンドンっ子達の心を勝ち取ったよ。イギリスでの初ライブは大成功に終わったね!Yosiの事はRBMA以前は知らなかったんだ、でもロンドンに共通の友達がいる事が後でわかったんだ。Yosiは優しさのかたまりのようなヤツだよ。彼がマドリードで聴かせてくれた曲は本当に衝撃的だった…RBMAでは楽しく共同作業ができたし、ロンドンも一緒に行く事ができてすごく嬉しかった。一緒に作ったのは僕がサックスを吹いた一曲だけだけど、いい経験になったよ。Yosiには好きなようにしていいよって言われて、そうしたんだけど、いいトラックができたと思う!


― ソフィア王妃芸術センターでのモートン・サボットニックとのライブを拝見したのですが、とても良かったです。彼とライブをしてみてどうでした?

Anenon:モートン・サボットニックの前座を務めるという大役を授かって、少し緊張したけど一曲目が終わってオーディエンスの拍手を聞いて、自分の演奏に集中し始めたらその緊張もどこかへ行ってしまったね。ソフィア王妃芸術センターは、今までパフォーマンスを行って来た中でも一番心に残るヴェニューだったよ。モートンに関しては、常に意識していたし、彼の電子音楽と言うジャンルでの立ち位置も知っていたから一緒にプレイしたことはとても光栄なことだと思う。ライブも僕はどちらかと言うと有機的な音で、モートンは全体を通して電子的な音だったからいいコントラストになってたと思う。

― ご自身の事を少し教えて頂けますか?音楽を始めたきっかけは?facebookのプロフィールを拝見すると、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)で音楽史を学ばれたそうですが、その経験は今のご自身の奏でる音楽に活かされていますか?

Anenon:意外かもしれないけど、僕が音楽に初めて深い興味を示し始めたのは2001、2002年の高校を卒業する頃、ヒップホップやDJカルチャーに触れたとき。父親がオーディオマニアで、レコードコレクターでもあったから、音楽は幼い頃から常に身近なところにあった。でも、どういう訳か18歳になってヒップホップのレコードを買い始めるまで一切興味を持たなかったんだよね。そこから、ジャズのレコードを買いあさるようになって、サックスや他の楽器に手を出すようになった。そこからUCLAで音楽史・音楽理論を専攻して、これでもかという位、音楽を吸収したよ。これまた素晴らしい経験で、2年間古典理論も取ったんだけど、これが僕の人生を変えたね。今まで不可能だと思っていた音の捉え方ができるようになったんだ。

― ライブで拝見したような、サックスのインプロヴィゼーションは珍しいスタイルだと思うのですが、サックスはずっとやっていらっしゃったんですか?サックスとエレクトロニカの融合というこのスタイルはどのように思いついたものなのですか?

Anenon:インプロヴィゼーションというやり方は僕の身にしみ込んでいると思うんだ、何年も練習を重ねて来たからね。ソフィア王妃芸術センターでのライブは全てインプロヴァイズしたものだったんだ。すごくワクワクしたよ!ぶっつけ本番でやるものに対して準備をするようなものだからね。それが僕のパッションであり、僕はその中で成長しているんだ。

初めてサックスを手に取ったのは2005年か2006年だったかな。最初は安い学生用のアルトだったんだけど、今はもっと質のいいテナーだよ。周りに一緒にプレイできる才能豊かなジャズミュージシャンの友達がいて、色々教えてもらえてラッキーだったよ。僕はびっくりするようなテクニックは持ち合わせてないけど、サックスに対する純粋なパッションは誰にも負けないし、あとは自分の出したい音が出せるまで練習を重ねるのみだった。サックスってすごく個人的な音を作る事のできる楽器だと思う。だからこそ惹かれたんだろうね。心と身体を通り、僕自身の声となって音が出るんだ。

サックスとエレクトロニカの融合はごくごく自然の成り行きだったよ。エレクトロニカとジャズ/インプロヴィゼーションがずっと好きで聴いて来ているからね。まともに聴けるような曲なるまでにはだいぶ時間がかかったけど。まだまだこの先長い気がするけど、どうなっていくか楽しみで仕方ないんだ!

― サウンドクラウドにあがっている曲を拝聴したのですが、その中の何曲かが(特にWhite Winter Lights)ノスタルジックで、いい意味で切なくなるようなものでした。曲を作る際、ノスタルジアをキーワードにする事もあるのですか?

Anenon:君の言う通り、僕の曲の多くはノスタルジックな感じだね。でもそれを狙っている訳でもないし、キーワードとして頭の中にある訳でもないんだ。純粋なサウンドが作れるように集中するのみで。感情とかキーワードはその後だね。僕のサウンドがちゃんとリスナーに届いて欲しいんだ、それが個人的なものであろうとなんであろうと。だから音楽とかアートっていいなって思う、主観的だから。音楽やアートって、それぞれが経験する事で自分自身の物語を語る事ができるメディアだと思うんだ。

― 影響を受けたアーティストを教えて下さい。

Anenon:キース・ジャレット、ジョン・コルトレーン、サイ・トンブリー、ライアン・ヨーク、ジョン・ケージだね。

― 今後のご予定は?リリースのご予定はありますか?

Anenon:2012年の4月に僕のレーベル、ノン・プロジェクツから初のフルアルバムをリリースする予定だよ。EPもリリースするつもりだけど、日程はまだ決まってないんだ。またツアーにも出たいね。ヨーロッパもまた行きたいし、日本も行けたらいいな!

― RBMAに応募しようと思っている人たちと、日本のみんなに一言頂けますか?

Anenon:応募を考えているみんなへ、国籍に関係なく応募書類を記入するときはとにかく自分らしくいて欲しい。あまり深く考えすぎないで、自分の直感を信じること。RBMAスタッフは本当にみんな純粋に音楽を愛する人たちで、一生懸命に自分のものを作る人たちと出会いたいと思っている。それくらいシンプルな事だと思うんだ!

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インタビュー さいとうしょうこ
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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