写真/瀧本幹也
2009年11月23日 (月) 掲載
1995年に『幻の光』で映画監督としてデビューを果たした是枝裕和。2004年に公開された映画『誰も知らない』では、主演の柳楽優弥がカンヌ国際映画祭・最優秀男優賞を受賞し、監督・是枝裕和の名も一気に世界へと広まった。最新作『空気人形』は韓国の女優ペ・ドゥナを主演に迎えた。監督は『子猫をお願い』という作品で、ペ・ドゥナに惚れ込んだという。映画『空気人形』でのペは全身で表現し、全裸になることも惜しまなかった。
「最初に見たときはなんだこの子は?と思いましたね。それで出演作を立て続けに観ました。1回目のソウルでのミーティングでは『人形といものをどう演じていいかわからない』と言われましたが、そのコンセンサスがとれてからは、具体的な作業に移れました。全裸に関しては『役柄ですから、私はそこに何かひっかかるような女優ではありません』と。出演してくれないんじゃないかという疑いは一度ももちませんでしたね。隅田川のシーンなんか、フィルムが20分くらい回ってるんですが、切れなくてね。それに音楽を載せて観てると、癒されました。ただのファンです(笑)。奇跡的な出会い」
今年の東京国際映画祭では、是枝監督の特集が組まれた。自ら1本選んだ作品は08年の『歩いても歩いても』。15年前に亡くなった兄の命日に、家族を連れて実家に帰省する男の家族の物語だ。
「一番国際映画祭ぽくない作品を選ぼうと思って。あれはつくったときに、コレは絶対に海外で理解されないから売れない、とエージェントに言われたんです。でも作りたいものは作れたから、売れなければそれでもいいと押し出した。ところがすごく売れたんです。フランスでは日本よりお客さんも入りました。海外で認められることが良い作品なんだと言う気はさらさらないけど、各国の映画祭を回って思うのは、日本の映画は内向きで完結し過ぎている気がするんです。それは常に国内の興行にだけつなげていこうとするから。それと、『この映画を通して伝えたいことはなんですか』と日本の会見では必ず聞かれるんだけど、自分で自分の映画の解説するほど虚しいことはないんです。それが完結ってことなんじゃないかと。その状態が20年以上続いてるんです。海外市場における日本映画を売ってくれるのは外国人ということになる。そこは変えていかないと」
映画界よりも映画そのものを考えていきたいという思いが伝わる。しばらくはデビューの頃のペースに戻って、次の映画に入るまで十分な時間をとりたいという。
「ちょっと続けて撮ったんですが、だいたい3年に1本がいいように思うんです。燃え尽きちゃったわけではないけど、ここでもうちょっと自分自身と制作体制を見つめ直して次のステップに向かいたい。もう一度鍛え直して“次へ”、という気持ちです。飽きっぽいからなのか好奇心が旺盛なのかわからないけど、いろんなことをやってチャレンジしている方が、淀まないと思っているんです」
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