インタビュー:ソウル・フラワー・ユニオン

中川敬が二日酔い状態とは思えない口調で語った、新作『キャンプ・パンゲア』ほか

インタビュー:ソウル・フラワー・ユニオン

国内屈指のライブバンドとして、またはアイリッシュ・トラッドやレゲエなど世界各地の音楽を吞み込んだ村祭り系(?)ロックバンドとして、幅広い支持を獲得しているソウル・フラワー・ユニオン(以下SFU)。待望の新作『キャンプ・パンゲア』は、ここ最近の好調ぶりが存分に発揮された充実作となった。今回は、別働隊であるソウル・フラワー・モノノケ・サミットでも活動し、ボーカル/ソングライターとしてSFUを引っ張る中川敬にインタビュー。3時間にも及んだ赤坂BLITZでのライブの打ち上げで朝まで吞んでいたという中川だが、その言葉は二日酔い状態とは思えないほど力強いものだった。

昨日のライブはいかがでした?

中川:いい夜やったね~。ツアー最終日で、メンバーの演奏も良かった。なによりもお客さんがいい笑顔を見せてくれるから、こっちも奮い立つよね。毎回幸せな気持ちでやらせてもらってますよ。

ツアーの選曲はどうやって決めるんですか。なにせ膨大な演奏曲候補があるわけですが。

中川:毎回大変。神の啓示とかあったらいいんやけど、オレ、無宗教やし(笑)。まず、ツアーの1カ月前ぐらいに40~50曲のリストをメンバーに送る。それからリハをやっていく中でだんだん絞っていく感じかな。やっぱり年々、選曲も難しくなってきてるね。望まれる代表曲が多すぎる(笑)。30~40代が客層の中心になってくるとライブ来るのが1年に1回の人もいるから、ある程度代表曲をやってあげないとっていう使命感みたいなものもあって。ローリング・ストーンズの気持ちが分かってきたね(笑)。

SFUの活動において、ライブはどういう位置づけにあるんですか。

中川:メンバーそれぞれによって違うとは思うけど、オレにとってはライブこそが人生そのもの。3カ月に1度、東名阪でワンマンをやるっていうのは12年間続いてて、ある種、それを軸に人生が回ってる。

じゃあ、昨年リリースされたライブ盤『エグザイル・オン・メイン・ビーチ』は、SFUのライブパフォーマンスの魅力を伝える、というのが大きな目的だったんですか。

中川:ま、そこまで考えてなかったけどね。なにせフルサイズのライブアルバムは10年作ってなかったから。レコード会社もいくつか跨いでるので、ベスト選曲のライブ盤の必要性を感じて、いわゆるゼロ年代のSFUがライブでやり続けてきた代表曲を全部入れちゃえと。まずSFUを聴こうと思ったら、最新作と『エグザイル・オン・メイン・ビーチ』を買ってもらえたらいいんじゃないかな。

10月にはSFUが中心となって開催しているフェス『Peace Music Festa! 辺野古2010』が沖縄の辺野古で行われましたが、いかがでした?

中川:大成功やったよ!今まで5回やってきて、「やっと突破した!」っていう感覚がある。辺野古の状況を知らない人にどうやって説明すべきか難しいところもあるけど、ざっくり言って、辺野古っていうところには、地元の推進派、もしくは推進派と言われる状況に置かれてる人も多く住んでる。それは他の基地や原発の町でも同じ構造があると思うけど、反対運動をやってる人たちと地元の人たちの間に壁があったりするわけ。今回は伊丹英子(注:SFU唯一の沖縄在住メンバーで、フェス実行委員の一人)以外のスタッフがウチナーンチュばっかりやったことも、ある種、突破できた大要因やね。そのことによって地元の推進派の人たちとの邂逅、結果的に協力も得られて、「基地に対する考え方は違うけど、音楽を通して辺野古の未来を考えること自体は賛成だ」という言葉が出てきた。地元の社交街に通い続けた沖縄のミュージシャンたちの大きな成果やね。お互い、音楽を愛してる人間同士やったんよね!

やっぱり音楽じゃないと突破できないこともある、と。

中川:そう、やっぱり音楽は重要。今回は子供から爺さん婆さんまで集まってくれて、ある種、村祭りっぽくなった。ようやく雑多な人たちが集まる祭りになってきた。まず、那覇から辺野古まで行くのに結構時間がかかる。だから辺野古に客を集めるっていうこと自体が大変で。本当は、続けたい祭りではないやん?基地なんかなくなるべきなんやから。赤字を抱えながらやってるし。これからは辺野古の人たちと共に一緒に作り上げる村祭りのようなものになっていくんじゃないかな。そういう予感があるね。

最近はマキシシングルを数枚作った後にオリジナルアルバムをリリースする、というサイクルが続いてますね。

中川:年に2回ぐらいレコーディングに入るんやけど、その途中経過をマキシシングルで見せながら、2年ぐらい経つとアルバム1枚分ぐらいのボリュームになってる、そういうやり方やね。8曲とか9曲入ったマキシシングルをどんどん間に挟むことによって、「今はこんな感じです」って。半年に1回のラジオ特番のような感じやね。

理想的なサイクル?

中川:そうやね。メンバーそれぞれがSFU以外の活動もしている現状を考えると、理想的じゃないかな。以前のようにメンバー全員を2カ月拘束して、そこでアルバム一枚分の曲数をまとめてレコーディングするっていうのは物理的に不可能だから。数曲ごとに分けてレコーディングしていったほうがみんなも各楽曲に集中できるしね。

でも、そのペースに合わせて作曲していくのは……。

中川:そう、そこが問題(笑)。次も春にレコーディングするつもりやけど、1曲も書けてない(笑)。本当は1カ月に1曲書けたらいいねんけど、なかなかそうもいかない。なんでもええのやったら書けんこともないけど、その辺にはない、ヘンなことをやらなあかんっていう使命もあるし(笑)、同時にポップじゃないと自分の気が済まないし。

以前と比べて作曲ペースはどうですか。

中川:波があるね。(SFU以前に結成していた)ニューエスト・モデルをやってたころは3カ月に1枚シングルを出して、1年に1枚アルバムを出すっていうペースやったから、ツアー中のホテルでも曲を書いてたし。今はそういう無理矢理なことはやめるようになった。やって来るのを待つ、というか。ただこの数年復活してきた感じがあるね。メンバーの存在も大きい。オレはシンガーソングライターじゃなくてバンドマンやから、パッと形にしてくれるメンバーがいると書く気になるんよね。

で、今回の新作『キャンプ・パンゲア』についてなんですが、ギターが高木克さんに変わってから初めてのアルバムとなりますね。

中川:そうやね。ライブ盤(『エグザイル・オン・メイン・ビーチ』)が前のギタリスト(河村博司)の最終作になったんやけど、その意味では確かにひと区切りっていう意識はあって。だから、今回の『キャンプ・パンゲア』は新メンバーになってからのファーストアルバムっていう感覚がある。

バンドが新しくなったような感覚もある?

中川:メンバーチェンジって、他のメンバーにも独特な高揚みたいなものがある。どこか風通しが良くなるというか。たまにメンバーチェンジするのもいいかもね(笑)。高木克はもともとローリング・ストーンズやフェイセズが好きなギタリストで、もっというとオールドタイミーな音楽を指向してて。マウンテン・バラッドやブルーグラスみたいなアメリカン・ルーツ・ミュージックが好きでね。オレや奥野にしてもガキの頃の音楽の入り口がストーンズやリズム&ブルースやったりするから、ある種の方向性の楽曲によっては説明不要なところがある。「こいつにはスライドギター弾かせといたらええわ」みたいな(笑)。

『キャンプ・パンゲア』というタイトルはどういうところから付けられたんですか。

中川:“パンゲア”っていうのは、2億5000万年前に存在したとされている超大陸のことやね。ギリシア語で「すべての陸地」。アルバムタイトルは最後の最後まで悩んで、このアルバムは一体何を歌おうとしてるのか、客観的に聴いて考えてみたりしてね。で、前作は『カンテ・ディアスポラ』ってタイトルやったんだけど、今回も“ディアスポラ(離散)”や“デラシネ(根なし草)”をテーマにした歌詞が多くて、もし許されるんやったら『カンテ・ディアスポラ2』にしたいとも思ったんやけど、それではみんな困る(笑)。マイルス・デイヴィスの『Pangaea』もあるし、比較的語彙の抜けもいいんじゃないかと……響きもなんか可愛いし(笑)。で、“仮の宿・野営地”の“キャンプ”を付けて、『キャンプ・パンゲア』。言葉遊びみたいな感じやね。今までのアルバムタイトルも関係ない言語圏の単語を繋ぎ合わせたりしてるし。『エレクトロ・アジール・バップ』にしろ『ロロサエ・モナムール』にしろ。

『カンテ・ディアスポラ2』というアルバムも思い浮かんだということは、前作の延長上にあるアルバムということですか。

中川:あくまで歌詞の世界の話やけどね。移民であったり人の移動であったり、稀人とネイティブの関係だったり、旅する側と旅される側の関係だったり。歌詞にそういう事象が入り組んでたことに後から気づいてね。

中川さんご自身、意識してたわけではないと。

中川:そう。まあ、オレ自身がそういうことを考える時期なんじゃないかな、ここ数年。

それは何か要因があるんでしょうかね?

中川:自分でもあまり分からないけど……他のメンバーは東京に住んでて、唯一オレは関西に住んでる、とか。オレは子供の頃いわゆる転校生やった、とか。どの町にも2年ぐらいしか住んでなくて、いわば故郷がない。そういう原風景が、年を重ねるごとに作品に顔を出してきてる気はする。20代や30代のときは青春真っ盛りっていう感じで、そういう人生の原風景なんて思い出しもしなかった。でも、例えば、いざ子供ができてみると、自分が子供だった頃の風景が立ち上ってくる、とかね。

転校生だったころの記憶が蘇ってきたわけですね。

中川:そうやね。常によそ者としての自分を意識するというかね。稀人、よそ者としての自分。ミュージシャンっていうのは元来そういうものやとも思うしね。自分が遊芸民であるということを再確認しようと。被差別遊芸民(笑)。

なるほど(笑)。音楽的に言うと、今回もいろいろな音楽要素が入ってますよね。例えば“ダンスは機会均等”はエチオピアン・ファンクみたいな雰囲気があって。

中川:そうやね、『エチオピーク』(注:エチオピアの貴重音源を収録した復刻盤シリーズ)やね。『エレクトロ・アジール・バップ』のころにコリアン的なハチロク(注:八分の六拍子)を結構やってたんやけど、そういうテイストのものをやらない時期が続いてたから、しばらく聴いてなかった『エチオピーク』を聴き返してたら、ムクムクと、久々にやりたくなって。

そのときに聴いてたものが楽曲に反映されることが多いんですか。

中川:いや、むしろあんまりそういうことをやらないんやけどね。ただ『カンテ・ディアスポラ』と『ロロサエ・モナムール』がオレのなかで結構大作で。自分のなかから絞り出すような感覚があって、作り終えた後に抜け殻になってしまった。それでいろんなものをミーハーに聴いてみようっていう時期が2年ぐらい前にあって。しかもサルサやブーガルーの名盤はどんどんリイシューされるし……「大人買いしてしまうからやめてくれ!」って感じなんやけど(笑)。今回はそういう、「普段聴いてたもの」の影響が入ってると思う。

“死ぬまで生きろ!”はカリプソ風というかニューオーリンズ風というか。

中川:この歌詞とメロディーを考えてたとき、ちょうどハイチの震災があってね。ツイッターとかやってるとハイチの凄惨な情報もどんどん即時で入ってきて……さすがにハイチには行けないし、できることといったらどこかの団体に寄付するぐらいで、なんかモンモンしてたんよね。それで、とにかくハイチのミュージシャンのCDを買いまくろうと思って。そのときの影響が入り込んでるよね、このカリビアンなテイストは。でも、できあがったものを聴き返してみても、これがどこの地域のリズムか自分でも分からないんやけど(笑)。

それこそがSFUですよね。

中川:そうやね。どこかの地域音楽を追究してるわけじゃないし。アイリッシュ・トラッドにしても、日本人の名手はいっぱいおるやん?俺らはああいうことはできないし。レゲエにしても正座して勉強したことないしね。結局、いくらフォーマットをお勉強しても、オレが歌いにくかったら意味ないのがSFU。

一度吞み込んで、吐き出したときには自分でもよく分からないものになってるっていう。

中川:うん、やっぱり広義のポピュラーミュージックが好きなんよね。根っ子のところで、ビートルズ、ローリング・ストーンズ、モータウン、セルジオ・メンデスみたいなものが好き、というか。いろんなものが入り込んでる風通しのいい音楽。結局そういうことがやりたいんよね。

じゃあ、最近では何を聴いてるんですか?

中川:忙しいから、なかなかじっくり聴けなくてね。とっかえひっかえ、音楽ライターみたいな聴き方になってる(笑)。……そうそう!最近、グサッと胸を打つ音楽があったよ。スタッフ・ベンダ・ビリリ!

あー、なるほど!

中川:彼らのCDを聴きまくってたのは去年なんやけどね。ビリリは大阪で競演させてもらって、ホント、素晴らしかった!今までの人生のライブ体験歴のなかで20年前のPファンク・オールスターズが最高峰やったけど、それを自己更新した!3回泣いた(笑)。その前に映画(注:スタッフ・ベンダ・ビリリを追ったドキュメンタリー『ベンダ・ビリリ!~もう一つのキンシャサの奇跡』)を観たのもあるねんけどね。まずもって音楽自体が素晴らしかった。出てくるビートも独特。コンゴって言ったら『ソウル・パワー』(注:1974年に行われた一大音楽フェスティバルのドキュメンタリー。ジェイムス・ブラウンやBBキングらが出演)が思い出されるんやけど、ジェイムス・ブラウンのライブのときにリッキーは客席にいたっていうんよね。そういうエピソードもまたグッときてしまう(笑)。ビリリの音楽なかにもJBが入り込んでるんやろうね。

「JBが入り込んでる」という意味では、SFUと共通する点でもあるんじゃないですか。

中川:ただ、表面的な意味では、ファンクは危険。ヘタにやると、単なる真似になっちゃう。真似のために延々リハーサルするような感じというか……後期ニューエスト・モデルはそういう状況に陥ったことがあるねんけど(笑)。今はあんまり自分たちの身体のなかにないビートはやらないようにしてるんよね。ただ、ワンドロップのレゲエビートがオレの歌と相性が良かったり、『エチオピーク』的なハチロクは確実にオレのなかにあって。もしかして、Pファンクの、あの「ステージ上にどんだけ人がおんねん」っていう馬鹿馬鹿しい熱狂や高揚は、(ソウル・フラワー・)モノノケ・サミットに受け継がれてるのかもしれない。あらゆる壁が取り除かれて、誰でも入っていける世界。それでいて、どこを切ってもPファンクな金太郎飴状態って、どこを切ってもチンドンなモノノケ・サミットに入ってるのかも。音熱感っていうか。

春にはまたレコーディングに入るんですよね?

中川:そうそう。でも、1曲もできてないんやけど。どうしよ(笑)。クンビア、いこうかな?

いいじゃないですか!

中川:ある種、ミュージシャンってミーハーであるべき。笑いながらミーハーなことをやる馬鹿馬鹿しさ。そういうこともバンドには必要なんよ。

それこそが大衆音楽であり、ポップミュージックですもんね。

中川:そうそう。ビートルズにしたって、スカやブーガルーを熱心に聴いていたであろう断片がここかしこから聴こえてくるわけで、そういうところこそおもしろい。ローリング・ストーンズにしても、どんどんアメリカの南部音楽を掘り下げていって、南へ南へ、そのままルイジアナから海へ飛び出してカリブ海に行っちゃった感じがメロディーやリズムの断片から聴こえてくるのね。ああいうミクスチャー加減がオレは好きなんよね。そういう意味で、「ロックってエエやん」っていう気持ちが最近改めてあって。“ロック”っていう言い方、ずっとクサイと思ってたんやけど(笑)。他の音楽にはない種類の“自由”。近所のオバチャンとかに「どんな音楽をされてるんですか?」って聞かれたら、やっぱり「ロック」って言うし(笑)。

『キャンプ・パンゲア』
ソウル・フラワー・ユニオン
発売中
価格:3150円
オフィシャルサイト:www.breast.co.jp/soulflower/

『キャンプ・パンゲア』特設サイト
www.breast.co.jp/soulflower/special/camp_pangaea/


ソウル・フラワー・ユニオン

『闇鍋音楽祭 2011』
3月20日(日)大阪 Shangri-La 18時00分/18時30分[ゲスト]七尾旅人
3月21日(月・祝)大阪 Shangri-La 18時00分/18時30分[ゲスト]the NEATBEATS
3月26日(土)東京 Shibuya O-WEST 17時30分/18時30分[ゲスト]カーネーション
3月27日(日)東京 Shibuya O-WEST 17時30分/18時30分[ゲスト]バンバンバザール
3月29日(火)神奈川 F.A.D YOKOHAMA 『闇鍋音楽祭2011番外編 ~中川敬45周年!』 18時00分/19時00分 

ソウル・フラワー・アコースティック・パルチザン(中川敬・リクオ・高木克)

『キャンプ・パンゲア』発売記念地方巡業 ~アコースティック編~
1月12日(水)滋賀 酒游舘 18時00分/19時00分
1月14日(金)愛媛 松山ブエナビスタ 18時00分/19時00分
1月16日(日)兵庫 加古川 ギャラリー&サロン 日本堂 17時30分/18時30分
1月19日(水)神奈川 藤沢 虎丸座 18時30分/19時30分
1月20日(木)東京 吉祥寺 弁天湯 18時00分/19時00分

ソウル・フラワー・モノノケ・サミット

『モノノケ・サミット2011! 新春! 初踊りツアー』
[ゲスト]上間綾乃(from 琉球)、中川五郎
2月9日(水)名古屋 CLUB QUATTRO 18時00分/19時00分
2月11日(金・祝)大阪 Shangri-La 18時00分/19時00分
2月13日(日)東京 吉祥寺 STAR PINE'S CAFE 18時0分0/19時00分

テキスト 大石始
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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