2010年11月29日 (月) 掲載
サマーソニックやGREENROOMといった巨大フェスに出演したことで、ここ日本でも高い人気を得るようになったブルー・キング・ブラウン。オーストラリア・メルボルンを拠点に、ルーツレゲエ/アフロビートから世界各地の音楽までを縦横無尽に行き来する彼らの新作『Worldwize Part 1: North & South』が先頃リリース。ベーシストでありリーダー的存在であるカーロ・サントーン、バンドの看板ヴォーカリストであるナタリー・パーパーの2人に話を訊いた。
来日は今回で何回目なんですか。
カーロ・サントーン:たぶん5回目だと思う。
ナタリー・パーパー:6回目かも(笑)。いつも1週間ぐらいしか滞在できないんだけど、日本は大好きよ。新宿か渋谷に滞在することが多いけど、どっちも大好きな街。サマーソニックのビーチステージでライブをやったことがあって、あのステージも最高だったわ。富士山もビューティフルだし……本当はもっと長く滞在したいんだけどね。
日本の音楽シーンについてはどう思います?
ナタリー・パーパー:そうね、私が思うに……(カーロに向かって)私ばっかり話してるわね。話したいでしょ?(笑)
カーロ・サントーン:いいよ、話しなよ(笑)。
ナタリー・パーパー:(笑)日本のフェスでは本当にさまざまな音楽に触れられるから最高ね。レゲエも人気があるし、ヘビィメタルやサーフロックももちろん。日本人は異なるタイプの音楽を分け隔てなく愛しているし、私はその点を尊敬しているの。
カーロ・サントーン:日本にはビンテージのギターやキーボードを使ってオリジナルなサウンドを出しているアーティストも多いでしょ?あれは素晴らしいと思うな。
ブルー・キング・ブラウンのホームタウンとなるとメルボルンになるんですか?
カーロ・サントーン:僕とナタリーがバンドを始めたのはバイロン・ベイだったんだ。それからメルボルンに移って新しいバンドを始めた。メンバーのなかにはシドニーから来ているヤツもいるけど、ほとんどのメンバーはメルボルンがホームタウンだね。
バイロン・ベイってシドニーの近郊でしたっけ。
ナタリー・パーパー:そうよ。あそこは特別な場所なの。オーストラリアのオルタナティブカルチャーの中心地でもあるし、ヒッピーもたくさん住んでいる。
カーロ・サントーン:いいバンドもたくさんいるしね。オーストラリア中の音楽好きがわざわざ足を運ぶような街なんだ。
ナタリー・パーパー:小さな街だけど、とてもクールなところよ。美しいビーチがあるから世界中のトラベラーも集まってくるし。
そういう場所で活動を始めたことがブルー・キング・ブラウンの音楽性にも影響を与えたんじゃないかと思うんですが。
ナタリー・パーパー:そうね。
カーロ・サントーン:バイロン・ベイのあらゆるものから影響を受けていると思うよ。
ナタリー・パーパー:ただ、私たちは同時に世界中のストリートカルチャーからもインスパイアされているの。例えばバルセロナには素晴らしいグラフィティがあるし、モントリオールにはたくさんのバンドがいて、彼らがひとつのシーンを作り上げている。ベルリンにも素晴らしいストリートアートシーンがあって、才能のあるペインターもいるわ。
カーロ・サントーン:メルボルンも音楽の街で、何軒ものライブハウスがあって、あの街からも常に刺激を受けているよ。
ナタリー・パーパー:キングストンには『パサパサ』っていうストリートパーティーがあるけど、あれなんて本物のストリートカルチャーだと思うわ。
ところで、ナタリーのパーパー(発音的にはパアパア)って何系の名字なんですか?
ナタリー・パーパー:太平洋のサモアよ。母がサモア系で父がメキシコ人とネイティブアメリカンのハーフ。私が生まれたのはサンディエゴなの。
カーロ・サントーン:僕は父がイタリア人で母がドイツ系のオーストラリア人だよ。
他のメンバーは?
カーロ・サントーン:かなり混ざっているんだよね。アルゼンチンやスリランカの血が入っているメンバーもいるし。
ナタリー・パーパー:ハイチやポルトガル、イギリスの血が入っているヤツもいるね。あとは東ティモールとかマオリとか……。100%オーストラリア人は、アボリジニ以外いないのよ。
カーロ・サントーン:まだまだ歴史の浅い国だから、そうやって人種がミックスされているんだよね。特にメルボルンとシドニーは混ざっているね。
先日リリースされたニューアルバム『Worldwize Part 1: North & South』なんですが、どういうコンセプトの元に制作されたんですか?
ナタリー・パーパー:アルバムの制作を始めたときは、単に最高のバンドサウンドを作ろうと考えていただけだった。そこに時間とエネルギーを込めようと思ったの。それと、まずはタイトルが決まったの。
カーロ・サントーン:そうそう。とにかく今回はかなりの曲数があってね。それで“North”と“South”と分けた2枚組にしたんだ。
ジャマイカのキングストンでもレコーディングしたんですよね?
ナタリー・パーパー:そうなの。おもしろかったわ!
カーロ・サントーン:アメイジングな体験だったね。バンドパートはメルボルンでレコーディングしたんだけど、ナタリーのボーカルパートとバッキングボーカルだけキングストンで録音したんだよ。かのスライ&ロビーと一緒に仕事ができたのは信じられないような体験だったね。
収録曲の“Our World Is Our Weapon”の冒頭ではサパティスタ(註:メキシコのチアパス州を拠点に活動する反新自由主義組織/民族解放運動)のマルコス副司令官の声が挿入されていますが。
ナタリー・パーパー:そうね。サパティスタの活動に初めて触れたとき、いちばん惹かれたのはマルコス副司令官の著作やスピーチだったの。サパティスタに関してさまざまなアクティビストが話しているけど、やっぱりマルコスの声は誰よりも強いと思う。それでこの曲には彼のスピーチを使ったし、私自身、サパティスタの活動には常にインスパイアされているの。
前作に収録されていた“Water”ではアボリジニについても歌っていますね。
ナタリー・パーパー:先住民族の文化は守られるべきだと思うわ。植民地化されるまでの彼らは地球環境と密接に結びついた生活をしていた。でも、さまざまな抑圧によって、そうした生活もままならなくなっている。それっておかしいことだと思うから。自然環境との共存は誰にとっても重要なことだと思うし。
では、シンパシーを感じるバンドは?
ナタリー・パーパー:……ボブ・マーリーね(笑)。
カーロ・サントーン:音楽を通して今の世の中に必要なメッセージを伝えること。それが僕らのミッションだと思っているんだ。
『Worldwize Part 1: North & South』
発売中
2300円
Copyright © 2014 Time Out Tokyo
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