ピート・テオ×三宅洋平、アジアへ

「良い音楽は、言葉がわからなくても、心に届くもの」

「スパークしたけど、ジャスト・ビギニングという感じ!」とライブ後の満足気な三宅洋平の第一声が表す通り、2010年11月25日(木)、タイムアウトカフェ&ダイナーで開催された、ピート・テオ、三宅洋平によるライブは、熱気に溢れた。三宅洋平 with Peace-Kのエネルギッシュな“動”のパフォーマンスに続き、ピート・テオが自身で“気のめいるような曲”と表現する“静”のパフォーマンスがあり、そして3人のセッションで音にさらなる厚みが増し、感情を揺さぶられるライブだった。ライブを終えたばかりのピートと三宅に、今回のセッションについて話を聞いた。

ピート:とっても楽しかった!

三宅:オーディエンスが本当に素晴らしかった!

ピート:東京のオーディエンスはいつも素晴らしい。観に来てくれる人のおかげで、日本でプレイするのは、本当に楽しいんだ。とても静かな時もあるけど、だからこそ今日は、静かな曲を選んでみた。静寂は、スペースを生む。それが、とても刺激的なんだよ。マレーシアのオーディエンスは元気があるから、静かな曲を演奏するのは難しい。それに、洋平の音楽はグルービーなことを知っていたから、コントラストを楽しんでほしいと思ったんだ。

三宅:本当にそうだと思う。ピートの演奏を生で聴くのは初めてだったけど、とても静かな曲なのに、ものすごくダイナミックだった。すごくたくさんの演奏スタイルを持っているからこそできることで、今夜の選曲はとても良かったと思う。

今日は一緒にライブをしたわけですが、次のステップは何ですか?

三宅:2月にマレーシアに行きます!今回、ピートに実際に会うまでは、ただの計画だったけど、本当に行くことになった。

ピート:マレーシアでは、僕が全てアレンジするから、すっごく良い時間になると思う。洋平に、マレーシアのミュージシャンをたくさん紹介したいんだ。それから、クロマニヨンにも来て欲しいと思ってる。

三宅:それはとても良いと思う。

ピート:もっと、アジアのミュージシャンと一緒に活動をしたいんだ。少し前は、旅費が高くて難しかったけど、今はすごく安いエアラインがたくさんある。アジアはすごく広く遠いように感じていたけど、とても近い。だからこそ、もっとたくさんのアーティストとコラボレートしたい。それが、とても大切なことだと思っている。

三宅:その通りだと思う。アジアはどんどん近くなっている。だけど、多くの日本人ミュージシャンは、言葉の壁を感じている。英語ができないと、コミュニケーションがとれないと思っている。でも、本来は、そんなことは何の問題でもない。

ピート:言葉が問題になったことは一度もない。だからこその音楽だよ。英語を話すことは重要じゃなくて、音楽が素晴らしければ、それだけで友達になれる。僕は、キューバの音楽とか、アフリカの音楽もたくさん聴いて、実際、何言っているかわからないけど、まったく問題じゃない。良い音楽は、言葉がわからなくても、心に届くものだよ。そうして、フレンドシップを育んでいくことが何よりも大切だと思う。音楽産業は、何も導き出さない。だからこそ、インディペンデントなアーティストが、ひとりひとり交流を持っていかないといけないんだ。

三宅:僕らミュージシャンがただひとつ持っているものは、“フリーダム”。お金はないけど、自由なんだ。

ピート:今日だって、マジカルがおこったよね。オーディエンスは全員、日本の人だと思っていたら、最前列に、マレーシアの学生たちがたくさん座っていた。僕は東京にいるのに、マレーシアの顔が並んでいるんだ。本当に驚いたし、嬉しかったよ。だから、もっと、もっとやりたい。

三宅:今日は、本当に、これから何かが始まるって、希望が見えた。台湾でも、タイでも、韓国でも、もっとやりたいよね。

ピート:僕が生まれたマレーシアのサバ州で、アジアのミュージシャンを集めた音楽フェスティバルをやりたいと思っている。本当に、美しい場所なんだ。それから、ロッキュメンタリーフィルムを作りたい。ロックなメッセージのあるアジアのミュージシャンたちの声で綴るドキュメンタリー。皆で色んなアジアの国をツアーして、それを撮っても良いかもしれない。

アジアには、本当に素晴らしいミュージシャンがたくさんいる。例えば、韓国のKang Sanehは、フリースピリットの男。それから、インドネシアのIwan Falsも最高だよ。今回は、2カ国のコラボレーションだったけど、これからどんどん参加する国を増やしていきたい。簡単なことではないけど、挑戦したい。そして、洋平には、必ず参加してほしい。政治の力とは、別の力で世界を動かしたい。政治の力は一時的でしかない。人間の力は、もっと偉大なんだ。

三宅:僕も、そのためにベストを尽くしたいと思う。僕ら自身が、人々による、人々のためのメディアを作らないといけない。人間には力がある。ひとつやらなきゃいけないことがあるとすれば、人々に気づいてもらうことだと思っている。人々の声が、もっと大切にされないといけない。

ピート:だから、洋平がマレーシアに来る日を、心待ちにしている。

三宅:ありがとう

ピート:ありがとう

テキスト 東谷彰子
撮影 道辻麻依
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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