2015年07月15日 (水) 掲載
都会にあってどこかのんびりとした空気の漂う世田谷線沿線。三軒茶屋と下高井戸を結ぶこの線の中間地点にあたる松陰神社前駅は、松陰神社から世田谷通りにかけて続く約500mの松陰神社通り商店街を中心に、個性溢れる商店が立ち並ぶ穴場スポット。人気の老舗はもちろん、意欲的な若者たちによる新しい店もここ数年でさらに増えてきている。パン屋やカフェ、ラーメン、レストラン、居酒屋……目に入る店どこに入ってもハズレなし。ここでは、朝食からディナーまで、ショッピングもしながら、松陰神社前で充実した時間を過ごすおすすめコースを紹介したい。
松陰神社前住民の幸せなところは、この短い商店街にハイレベルなパン屋やケーキショップが集まっていること。買い求める客が遠方からもやってくるというこの4軒は外せない。
松陰神社前にある創業明治45年の老舗パン屋。店内に並ぶコロッケパンや、チョココロネ、クリームパンなどはどれも懐かしい味わい。看板商品の『ニコラス食パン』はどんな食べ方にも合うようにとシンプルな材料で作られており飽きのこない一品で、ひと月以上先まで予約で埋まってしまうことも。1斤160円と値段が手頃なのも嬉しい。
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2014年7月にオープンしたMERCI BAKEは、イートインもできるケーキショップ。カップケーキやタルト、チョコレートプリン、キャロットケーキ、クッキーなど、見た目も可愛い焼き菓子を販売している。濃厚なチーズクリームが乗った『キャロットケーキ』や、小瓶入りで滑らかな舌触りとミルキーな味わいの『レアチーズケーキ』が人気商品。
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数々の名店でシェフブーランジェを歴任し、コンクールでも多くの賞を受賞してきた須藤秀男が2009年10月にオープンしたブーランジェリー 。毎朝開店と同時に多くの客で溢れる同店だが、定番の『クロワッサン』や『クイニーアマン』 、各種料理パンにロールパン、バゲットなど、いずれもシンプルながら一度食べたら忘れられない美味しさだ。
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商店街を抜け、世田谷通りを渡ったところにあるFortunaは、食パン、ハード系をはじめ、菓子パンや総菜パン、ジャムや蜂蜜も販売している。無農薬で知られる山梨県の北杜の小麦を使用しており、食感が比較的もちもちしているのが特徴だ。手間を惜しまない手作りならではの美味しさは、地元のみならず遠方から足を運ぶ人もいるほどだ。
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美味しいパンを買い込んだら、つまみ食いしながら踏切を挟んで北側の商店街へ。昔ながらの松陰神社の姿が残るこちらは、日用品や衣服を扱う店などが集まるエリア。今のうちにここを攻略しておけば、夜の飲み屋で知ったかぶりができるというもの。
松陰神社商店街の北側に店を構える、創業1912年(明治45年)のオーダーシャツ専門店。映画『人間失格』や、2015年8月公開の映画『日本のいちばん長い日』などの衣装も手がける名店だ。生地選びからデザイン、ボタンまでを店主の伊川孝次と一緒に選びながら、とっておきのワイシャツを作ることができる。価格は一般的なもので5千円から1万3千円ほどで、高いものは数万円のものもある。
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正午を回ったら、松陰神社商店街の憩いの場である囲碁 将棋倶楽部へ。外観は半分シャッターが閉まっていて、一見すると入りづらそうだが、これはただ日差しよけのために降ろしているだけなので心配ない。指南番をはじめ、常連客たちもみな気さくなので、一見でも臆することなく腕試しに挑んでほしい。
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一局終えて頭を使ったら、そろそろ腹の空いてくるころ。松陰神社前はラーメン屋のクオリティも文句なしということで、ランチはラーメンと行こう。商店街からは少し外れたところには、まぜそばのかましもある。
世田谷通り沿いにある人気ラーメン店。看板メニューの『ふくいしらーめん』は、「あっさり」と背脂入りの「こってり」から選べる。博多系に近く、細麺が旨みたっぷりのスープによく絡む。
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線路沿いにある松波ラーメン店は、カフェのような外観、内装で女性の一人客の姿も多い。おすすめは、団子が6つ入った『ワンタン麺』(800円)。肉、野菜、煮干しで取られたスープはあっさりとしているがコクがあり、縮れ細麺との相性も良い。餃子にも似た味のワンタンは、しっかりと餡が詰まっており食べごたえ十分。
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世田谷通り沿いの中華料理店。手頃な値段とボリュームたっぷりの本格中華が味わえる人気店だ。なかでも、エビの乗った『五目炒飯』は都内屈指の量と味。赤耳のチャーシューがインパクトのある『チャーシューメン』もおすすめだ。
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食欲が満たされたら次はショッピング。雑貨、本、音楽。店主の見事なセンスが光る3軒を紹介する。
2012年9月にオープンした輸入雑貨店のソラニクルは、こじんまりとした店内に、ヨーロッパから買い付けたアクセサリー、インテリアや手芸雑貨のほか、国内メーカー品がずらり。ガーリーなデザインのアイテムのものが多く、海外の蚤の市のような雰囲気が溢れるショップだ。
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洒落た雑貨屋のような雰囲気の店内には、好奇心をそそる装丁の古書がずらり。「店主のマインドマップ」をそのまま反映させたという本の数々は、デザイン、アート、音楽、写真、文学に関するものから、マンガ、エッセイ、雑誌なども揃える。60年代~80年代の出版物を中心にセレクトしており、思わぬ一冊との運命の出会いがありそうだ。
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商店街内、共悦マーケットにあるCD/カセットショップ。松陰神社の地で30年以上にわたって営業を続ける老舗だ。世田谷線沿いで唯一音楽カセットを取り扱う同店のの棚には、貴重な品揃えの演歌のシングルカセットがぎっしり。CDの棚に目をやると、ほぼすべての商品に主人手作りのタイトルラベルが。変わらぬ姿勢で愛情を持って音楽を扱う様に心打たれる。
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良い店の多い商店街は、歩くだけで妙に小腹が空いてくるもの。松陰神社通り商店街は、寿司にコロッケ、ドーナツ、おでんと、抗いがたい誘惑に満ちている。土産のつもりで余分に買ってつまみ食い、これがどうしようもなく美味いのだ。
テイクアウトの箱寿司専門店。バッテラ、茶巾、いなりやのり巻きなど、大阪寿司を販売している。店先で注文すると、その場で職人が詰めてくれるという安心感も、地元で長く愛されている理由のひとつ。おすすめは定番『大阪寿司』(1,280円)と、酸味の中にほどよい甘みが広がる『バッテラ』(560円)。
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手作りのおでん種専門店。もやしの入ったすり身に、紅ショウガを練り込んだ『松陰ジンジャー』(50円)は、同商店街の名物と言えるほどの人気を誇り、店を訪れるほとんどの人が購入していく。おでんとしてだけではなく、つまみとしてそのまま食べるのもおすすめ。
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肉の染谷は、牛肉は銀座の老舗仲卸、吉澤より黒毛の雌を仕入れるなど、国産の上質な肉にこだわっている精肉店。また、同店は揚げ物が美味しいことでも評判。ほっくりと、じゃがいもの甘みを感じる『肉入りコロッケ』(90円)や『カニクリーム』(120円)をはじめ、『揚げとうふ』(120円)など、最高のおやつが揃っている。
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商店街の一角、古民家を改装したこじんまりとした店構えではあるが、一日中客足が絶えることがない隠れた人気店。ベーグルも看板にしているだけあり、この店のドーナツは実にまるまるとしていて、思わずかぶりつきたくなる。おすすめは、生地の美味しさを楽しめる『プレーン』。
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若者が増えている松陰神社前には、行きつけにしたくなるようなお洒落なカフェも多い。ここでちょっとコーヒーブレイクしよう。
玄米甘酒を販売する小さなカフェ。テイクアウトのドリンクのほか、さまざまな麹の食品も販売している。店の看板、玄米麹で作られた『玄米甘酒』(250円)は、普通の甘酒とは異なる独特な風味と甘さを持つ。豆乳で割った『玄米甘酒豆乳』や、コーヒーを入れた『玄米甘酒カプチーノ』なども提供。冬に冷えた体を温めるのはもちろん、夏はアイスで喉を潤すのもいい。
せたがや縁側カフェの詳しい情報はこちら
駅前にあるカフェレストラン。店内は観葉植物などの緑に溢れ、木の温もりを感じることができて心地よい。ランチメニューは日替わりメニュー3種と『ペパーミント風味のチキンカレー』がある。カレーはよく煮込まれた鶏肉が柔らかく、味わう度にペパーミントの香りがはじけとても美味。
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線路沿いに店舗を構えるタビラコは、玄米のおにぎりやドライカレー、自家製デザートなど優しい味のメニューが楽しめる一軒。店内にはブランケットやテキスタイルブックなどが置かれているなど、女性同士でくつろぐにはうってつけだろう。デザートはチーズケーキやスコーンが絶品で、コーヒーやハーブティーも香り豊かで美味しい。
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忘れちゃいけないのが、松陰神社参り。明治時代の武士であり、教育者としても有名な吉田松陰を祭る同神社は、合格祈願や学問成就のメッカである。境内には吉田松陰が講義を行い、高杉晋作をはじめとする、多くの逸材を輩出した松下村塾を復元した建物も見学も可能。
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松陰様に挨拶を済ませたら、いよいよクライマックス。濃密なる松陰神社前の旅を締めくくるベストな一軒を見つけよう。牡蠣、ハワイアン、インドカレー、蕎麦……どこも味はピカイチだ。酒が飲みたくなったら老舗居酒屋の門を叩いて、人生の先輩たちの人情に触れると良いだろう。
店名の宗谷とはもちろん、北海道稚内市にある日本最北端の地、宗谷岬のこと。松陰神社通り商店街内の共悦マーケットを抜けた裏路地にある宗谷は、昔ながらの人情味に溢れた居酒屋だ。魚介類は刺身や焼き魚、から揚げなど、その日によって様々なメニューをそろえる。新鮮な素材をいかしたシンプルな料理はハズレなし。道産子たちも唸らす逸品が安く食べられる。
宗谷の詳しい情報はこちら
2015年1月にオープンしたハワイアンレストラン。レトロな外観とは裏腹に、高い天井にシーリングファンの回る店内には南国の雰囲気が満ちており、気分を盛り上げてくれる。レアでジューシーなビーフステーキがたっぷりと乗った『ビフテキライス』(1,500円)や、『マグロとアボカドのポキ丼』(1,100円)、『ガーリックシュリンプ』など、本格ハワイアンの味が手頃な価格で楽しめる。
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世田谷通り沿いを左に行くと現れるインド料理店。オーナーはネパール出身 、シェフはインド人といった体制で、昼はインド料理、夜はネパール料理を主に提供している。メニューはチキン、マトン、キーマ、野菜、シーフード、サグなど、オーソドックスなものだが、インドカレー好きも唸らせる味と評判だ。
MIRAGEの詳しい情報はこちら
2014年4月にオープンした牡蠣とおばんざいの居酒屋。厨房をカウンターが囲むシャビーな内装の店内は、バルやカフェのような雰囲気。以前は築地に務めていた店主が仕入れる新鮮な牡蠣を中心としたフードメニューと、種類豊富な日本酒、ビールなどを揃える。『牡蠣三種盛り』は、その時々の仕入れによって変化する様々な種類の牡蠣を食べることができる。
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仙川と学芸大学にも店舗を展開する蕎麦屋の本店。毎朝職人が挽いて、手打ちしている蕎麦は、コシが強く薫り高い。『せいろ』と『田舎せいろ』の2種類があり、いずれも麺の艶やかな光沢が食欲をそそる。また、季節限定の個性的な蕎麦も提供している。酒の肴も豊富で、刺身はおすすめ。
石はら 世田谷本店の詳しい情報はこちら
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