フジロック2010 インタビュー5

“フジロックたたき上げバンド”LITEがステージでエモる

フジロック2010 インタビュー5

2010年のフジロックで活躍した日本人アーティストシリーズ、第3弾は『LITE』が登場。レッドマーキーのトップバッターを飾ったライブは、朝10時とは思えぬほどにエネルギッシュだった。ライブ、そしてその後のインタビューからは、武田信幸(G)、楠本構造(G/Synth)、井澤惇(B)、山本晃紀(Dr)の4人が、かなりの充実感を得ていることが感じられた。

新人バンドの登竜門であるステージ『ROOKIE A GO-GO』にも出場していた、いわば“フジロックたたき上げバンド”ですが、レッドマーキーに出られた感慨はありますか?

井澤:朝イチなのにお客さんがアガり狂ってくれて、うれしかったです。僕たちもお客さんをアゲるし、それでまた僕たちもアガる。いい相乗効果になりました。

山本:自分の予想以上にエモくなってしまいましたね(笑)。お客さんがたくさんいる風景が胸を打ちました。客として来ていたフジロックのステージに立てて、しかも満員。それでちょいちょいエモあふれちゃいました。

新しいミニアルバムの曲もありましたが、古い曲も結構やってましたよね。

武田:もちろん新しい曲をやりたいけど、求められているのは知っている曲。お客さんの立場で考えると、知っている曲の方が盛り上がりますよね。

山本:海外ツアーをやって、身をもって感じましたね。新曲をホントにいい演奏でやっても、『YouTube』に出ている曲よりも盛り上がらない。

特にフェスだと、“LITE大好き!”って人たちばかりじゃないですもんね。

武田:そうですね。そういう人たちには、『YouTube』で再生回数の多い曲を(笑)。

LITEにとってライブとはどんな位置づけですか?

武田:一番始めにライブでやるための曲を作って、それを聴いてもらうためのCDがあって、それを直接伝えるためのライブがある。最終段階ですね。

井澤:もともとは、ライブでやるための曲を作っているところから始まっているので、基本的にはライブ目指しての曲作り。でも、レコーディングをするようになって、CDだからできることもあると思っていて。逆にライブだからできることもある。別のベクトルですが、繋がっています。

曲はスパッとできますか? 練り込む方ですか?

武田:こだわって作った曲は飽きないし、あとで「良くできてるじゃん」という再発見もあったりする。お客さんにも伝わるんじゃないかなと思うんです。スパッとできると、逆に不安なんですよね。思い入れがないというか。

山本:そういう曲は、やはりライブでも長くはやらないですね。時間をかけて作った曲は、スタジオの光景が思い浮かんだりする。そうするといい演奏になりますしね。

今回のミニアルバムは、トータスのジョン・マッケンタイアがエンジニア&ミックスとして参加していますが、どのような経緯だったんですか?

武田:ひとつ前の『Turns Red EP』では、シンセにこだわっていこうと思っていたんです。今回その方向性で考えたときに、そういうアイデアに長けている人に録ってもらいたいと思ったんです。それでパッと思い浮かんだのが、なぜかジョン・マッケンタイア(笑)。

“なぜか”なんてことないですよ。いい組み合わせだと思いました。あってしかるべきというか。シカゴのSOMA STUDIOで録ったんですか?

武田:そうです。ちょうどマイク・ワットとのツアーがあったので。といってもツアーは西海岸だったのでシカゴは遠いですけど(笑)。

ジョン・マッケンタイアはどんな人でした?

武田:マスターですね。

山本:無駄なことはしゃべらない。

ちょっと怖そうですね(笑)。

武田:怖かった。でもやることには賛同的でしたよ。特に変なことをいわれることもなく、やりたいことを全部やらせてくれる。

山本:“こういう音を出したいんだけど”といったら、“じゃあ、こういうふうにやればいいよ”って教えてくれる感じです。

井澤:この前トータスのライブで来日したときに、バックヤードへ挨拶しにいったら、めっちゃ笑顔でしたけどね。あれ、こんなに明るい人だっけ? と。

録り終わった作品を聴いてみて、どうですか?

山本:まず録り音が良かったですね。そうすると、そのときの演奏のキレが良くなってテンションがあがるんです。

井澤:生音に関してはそんなに変わらないけど、出ている音のパンの振り具合とか良くなってましたね。

今作は、今までに比べるとかなりビート感も強いし、ソリッドな印象を受けました。

武田:以前は荒々しさを出している部分があったけど、クリアにはなりましたね。

山本:そういうソリッドな部分を出したいと思って、ジョン・マッケンタイアに頼んだというのもあります。あとは、音符と音符の間の空気感。それがLITEの強みだと思っています。そこを突き詰めていったら、すごいことになるんじゃないかと。

そうですね。ブレイクの取り方とか、簡単にのらせてくれない感じとか(笑)

井澤:いじわるな(笑)。

少しずつ方向性が変わってきていると思いますが、次作のプランはあるんですか?

武田:『Turns Red EP』で初めてシンセを使ってみて、今回の『Illuminate』で少し深めてみて、次は集大成にしたい。同じライン上ではありますね。“本物”を作りたいんです。今までは、とがったものをやっていきたいという気持ちがあったけど、いつの時代にも通用するような本物の傑作を生みだしたい。

山本:自分たち的にも、できそうな予感があるんです。

井澤:いま、スタジオですごいジャムれているんですよ。

いまなぜ、その状態に到達していると思いますか?

井澤:今回のミニアルバムはやりたいことができているんですね。ライブでも“やってやるぜ!感”があるし、手応えをかなり感じています。ひと皮むけた気分です。

今日(フジロック2日目)ライブを見ていて思ったんですが、自分の立ち位置から、自然に中央に寄っている瞬間が何回かあるんですね。それを見ていると、一体感があって、息が合っているなと。とても充実している雰囲気が伝わってきました。

武田:それは無意識ですね。その話を聞いて、また感動しました。


『Illuminate』 2010年7月7日発売
1600円(税込み)
amazon.co.jpで購入

MySpace : LITE www.myspace.com/liteband
LITEオフィシャルサイト : lite-web.com/

テキスト 大草朋宏
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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