インタビュー:合田経郎(ドワーフ)

生みの親が語る、どーもくんの誕生秘話や製作の裏側

インタビュー:合田経郎(ドワーフ)

ニューヨークオフィスを訪問する合田経郎とどーもくん Photograph: Lauren Spinelli

「どーもくん」という名前をインターネット愛好者に言ったり、モコモコで口の開いた彼の写真を人に見せたりすると、誰もが「このキャラクター大好き!」と口を揃えるだろう。1998年12月、NHK BSのオフィシャルマスコットキャラクターとして誕生したどーもくん。誕生10周年を迎える2008年には、彼のアニメシリーズが世界最大のキッズ チャンネル『ニコロデオン』の全米・欧州ネットワークをはじめとする、171の国と地域で放映され、さらには同年秋、米大手スーパーTargetのハロウィーンキャンペーンキャラクターに抜擢。また2009年にはセブンイレブンUSの飲料キャンペーンマスコットに起用されるなどして、米を席巻した。

誰からも愛されるこのキャラクターの生みの親が、東京のアニメーションスタジオ、ドワーフの設立者でもある、クリエーターの合田経郎。2014年5月には、実物大のどーもくんと共に、ニューヨークのセントラルパークで開催された日米の文化交流イベント『Japan Day』に参加。その際、タイムアウト ニューヨークのインタビューを受けた彼は、アナログな制作手法への想いや、どーもくんがニューヨークで巻き込まれそうなトラブルなどについて語ってくれた。

アメリカで大人気のどーもくんですが、彼が誕生した経緯を教えてもらえますか?

合田:15年前、自分がまだテレビコマーシャルの制作会社でディレクターをしていた頃、NHK BSが10周年を迎えるにあたり、記念キャラクターを探していると聞いた、プロデューサーからコンペに参加してみようと声をかけてもらったのがきっかけです。当時、自分が描くものはコマーシャル用の絵コンテ位だったので、キャラクターをどうやって作っていいか分からず、悩みながら鉛筆で四角や丸、三角をぼんやり描いていたら、どーもの原型がポロっと生まれました。それを応募したら選ばれたので、とてもビックリしました!

どーもくんの魅力はどこにあると思いますか?

合田:どーもは「どーも」しか言わないし、口も開きっぱなしのため、彼が何を話しているのか、どう思っているのかは、見た人が自由に解釈できる。見た人の数だけ、いろんなどーもがいるような、そんな所がいい所かなと思っています。

どーもくんが世界的な人気者になったことにより、この15年間、アイデアの出し方や制作方法に変化はありましたか?

合田:海外で人気がでたことで、それまでなかった状況に沢山遭遇しました。Targetのハロウイーンキャンペーンや、セブンイレブンの広告、様々なグッズなど。その都度、新しく考えたり作ったりすることはありましたが、人気については、あまり気にしないようにしています。スタジオでは機材ややり方に、15年分の進化はあると思います。またよく「ストップモーションの魅力は何ですか?」と聞かれることがあるのですが、ひとコマひとコマ、手で動かすことで生まれる感じが好きだし、原始的な手法であるが故、古びない良さがあると思っています。古いものは今見ても、30年後に見ても古い。そんな風に長く鑑賞に耐えれるものが作れるかもと思ってやっています。

日本とアメリカではどーもくんに対する見方や関わり方が違うと思いますか?

合田:日本ではどーもは「子ども」。子どもたちには友達のように、大人の人には子どもや自分の子どもの頃を思い出させる存在かな。実際、考える時も自分の子どもの頃の記憶からネタを拾ってくることが多いです。アメリカでは、もっと自由にそれぞれの世代の友達のように扱ってもらっている感じがします。

どーもくんがアメリカで注目されるようになった理由は何ですか?

合田:なんでしょう…。自分たちが気づかない間に、どーもを見つけてくれた人たちがいて、その人たちがネット上で広めてくれていました。

アニメーションスタジオ、ドワーフのクリエーターとして、あなたを動かすものは何ですか? また、作品を通してどのようなメッセージを伝えたいと思っていますか?

合田:世代を超えて鑑賞に耐える、名作絵本のようなものを作るのがひとつの目標です。それと同時に、今必要なことも考えていたい。3年前に起こった震災をうけて、より一層そう思うようになりました。心に響くものを作りたいです。

ニューヨーク滞在中に行ってみたい場所や、やってみたいことはありますか?

合田:滞在期間が短いので…。時間を見つけてブラブラと。いろんな人を見るだけでも面白いです。時間があったら、美術館を制覇したいです。

アメリカでは他にどんな予定がありますか?

合田:ニューヨークでのイベントの後、5月13日(火)にサンフランシスコに向かいます。そこでは、公共放送PBSの総会が開かれるので、放送関係者や、地元のメディアなどを通じて、こま撮りアニメの魅力や、日本文化の魅力などを伝えることができればと思っています。

どーもくんはニューヨークを気に入ると思いますか?

合田:どーもは、いつも山や川を見て暮らしているので、目が回っちゃうかもしれないですね。そして、好奇心旺盛なので、勝手に店のものを食べたり、いじったりして叱られそうです。あと絶対迷子になると思います。

ほかにもどーもくんの仲間たちの中で、ニューヨークが好きそうなキャラクターはいますか?

合田:うさじいはジャズが好きで、若い頃トランペットをやっていたという設定があるので、気に入るかもしれません。

ドワーフではほかにも沢山のキャラクターを生み出しています。特に気に入っているキャラクターは誰ですか?また、どーもくんと同じくらい人気が出そうなキャラクターはいますか?

合田:こまねこ。どーもよりもキッズ向けかもしれませんが、絵本みたいなアプリが出たので見てみてください。あとは…分かりません。誰か教えてください。

今後の活動を教えてください。

合田:現在、zapuni.comというサイトで『By Your Side』というミュージックビデオが見れます。アーティストSADEの曲に映像をつけた作品で、震災にあった子供たちの為のチャリティープロジェクトです。是非見て、募金をして頂けたら嬉しいです。

ニューヨークを散歩中のどーもくん Photograph: Nagamitsu Endo/NHK

アメリカ自然史博物館を訪れるどーもくん Photograph: Nagamitsu Endo/NHK

アメリカ自然史博物館を訪れるどーもくん Photograph: Nagamitsu Endo/NHK

セントラルパークを散歩するどーもくん Photograph: Nagamitsu Endo/NHK

原文へ(Time Out New York)

タイムアウトニューヨーク編集部
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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