2015年09月02日 (水) 掲載
「芸術の秋」と言わずとも、様々なイベントが年中目まぐるしく開催されている東京だが、物憂げな秋風が吹く頃はやはり文化の香りが恋しくなるもの。ここでは、大型美術館でのマストな展覧会だけでなく、日本文化の神髄を体感できる大茶会や、ジャズとクラシックの共演が聴けるコンサート、はては国際的な舞台フェスティバルから地域密着型のアートイベントまでと、分野も規模も幅広く紹介する。この秋をアートに過ごすための一助としてほしい。
オランダで11年目を迎える最先端アートの祭典『TodaysArt』が、日本で本格開催される。2014年にはパイロット版として『TodaysArt.JP edition Zero』を開催し、Underground Resistance/TIMELINEなどを招聘して話題を呼んだ同イベント。本格開催となる今回は、規模と期間を拡大し、街のいたる所でビジュアルアート、パフォーミングアート、デザイン、建築、先端技術、体験型インタラクティブアートまでを横断的に紹介するイノベーティブかつ実験的なプログラムや展示が開催される。
『TodaysArt.JP TOKYO 2015』の詳しい情報はこちら
鮮やかな色彩で彩られたふくよかで躍動的な女性像などの立体作品で親しまれているニキ・ド・サンファルの展覧会。正規の美術教育を受けることはなかった彼女だが、戦後フランスの芸術運動ノーヴォーレアリスムのメンバーでもあったジョン・ティンゲリーと暮らすようになり、1961年に発表した「射撃絵画」で一躍話題の人となる。絵の具の入った缶などを銃で打ち抜く射撃絵画の成功に安住せず、ニキは創作の幅を広げ続けた。女性の表象への関心が色濃い代表作『ナナ』シリーズなどの立体作品をはじめ、舞台や映画、建築デザインも手がけた。本展では、初期から晩年にいたるまでの多彩な創作活動の軌跡をたどる国内史上最大規模の大回顧展になっている。
今年で7回目を迎える、アジア最大規模のアートブックフェアが京都造形芸術大学 東北芸術工科大学 外苑キャンパスにて開催。同展では、先進的なブックメイキングを続けるアーティストやパブリッシャー約300組が一堂に会し、アートブックに関連した展示、トークイベント、スクリーニングなどが行われる。また、今年からはひとつの国に焦点をあてたセクションを設け、記念すべき第1回はスイスに決定。『The Most Beautiful Swiss Book スイスのもっとも美しい本』2014年受賞作や文化を紹介する。進化してやまないアートブックの現在を見に行こう。
『THE TOKYO ART BOOK FAIR 2015』の詳しい情報はこちら
目白台の旧細川家邸内にある永青文庫にて開催される、日本初の春画の展覧会。海外では、その奇抜な表現描写やアート性の高さから、すこぶる評判の高い春画だが、日本国内においては大規模な展覧会が行われることはなかった。春画をまとめた画集などは、通常の書店などにも芸術書コーナーに置かれ誰でも見ることができるにも関わらず、公共の美術館で「猥褻な」春画を特集した展覧会を催すことは難しかったという。本展では、ロンドンの大英博物館が所蔵する作品を含む約120点が揃う。知れば知るほど奥深い春画の世界を覗いてみてほしい。
養老天命反転地などでも知られる建築家にしてアーティストの荒川修作+マドリン・ギンズが手がけた極めて個性的な共同住宅、三鷹天命反転住宅の10周年を記念したイベント。竣工以来6000人以上もの人が国内外から訪れた建築見学会はもちろんのこと、大人気巻き寿司アーティストたまちゃんによるワークショップ『たまちゃんのにっこり寿司』など多彩なプログラムが用意されている。そのほか小林康夫と池上高志が登壇する講演会など、トークイベントも充実。荒川とその世界を巡るドキュメンタリー映画『死なない子供、荒川修作』とその姉妹作品として翌年にニューヨークで撮影されたギンズの映画『WE- 人間を超えていくために』の一挙上映も見逃せない。なお、すぺてのイベントは事前予約制となっている。
「生活とアートの融合」という活動テーマのもと独自の文化活動を発信し続けてきたスパイラルの、30周年記念展。京都二条城や十和田市現代美術館などの大規模な建築物のライティングなどでも知られる高橋匡太や、日用品や機会を用いたインスタレーション作品が印象的な毛利悠子など、「スペクトラム」の名前が示す通り多彩な表現活動を行う4人の作家が出展している。なお、榊原澄人の作品のみ、スパイラル5階での展示となっているので注意してほしい。また、会期中は出展作家のトークをはじめ、谷川俊太郎も参加する詩の公開制作、『Dance New Air 2016』のプレ公演(2,500円)など、多数の関連プログラムも開催予定。
『スペクトラム ーいまを見つめ未来を探す』の詳しい情報はこちら
東京タワーを背後に抱える増上寺で行われる、歴史ある薪能。今年の演目は、能『杜若』、狂言『昆布売』、能『小鍛冶-白頭-』。下克上の世相を反映した立場の逆転が笑いを誘う狂言では、大蔵流の人間国宝、山本東次郎が演じる。 9月26日(土)の11時からは、チケット購入者を対象とした演目の見どころなどが分かる事前講座『能の愉しみ』も開催されるほか、自由席は2,000円と破格の値段設定になっているので、初めて能を見る人もぜひこの機会に挑戦してみてほしい。なおB席、自由席は雨天時は観覧できないため払い戻し。
様々な流派が一堂に会する大規模な茶会。 10月3日(土)と4 日(日)には江戸東京たてもの園にて、10月10日(土)と11日(日)には浜離宮恩賜庭園にて開催される。本格的な茶席をはじめ、秋空の下で楽しむ野点、初心者や子ども向けの茶道教室も開催されるので、茶道に馴染みのない人や海外から訪れた人も気軽に楽しむことができる。
市民参加型のアートプロジェクトを通して足立区に新たなコミュニケーションを生み出す『アートアクセスあだち 音まち千住の縁』のプログラムのひとつ。非日常的な世界を立ち上がらせるダイナミックなインスタレーションで知られる現代美術家、大巻伸嗣によるこのプログラムでは、無数のシャボン玉で見慣れた街並みを光の風景へと変貌させる。千住地域で5度目を迎える今年は、足立市場を舞台に開催。シャボン玉が舞うなか、恒例となっている盆踊り『しゃボンおどり』のほか、音と光を使ったパフォーマンスも行われる予定だ。
『大巻伸嗣 「Memorial Rebirth 千住 2015 足立市場」』の詳しい情報はこちら
隅田川に臨む汐入タワー(都立汐入公園内)とその周辺を舞台とした、ピクニック形式のパフォーマンス公演。一般公募による出演者「アナター」をはじめ、若手パフォーマンス集団「フラワーズ」や、様々なジャンルで活躍する若手アーティスト、地域住民らの協力のもと作り上げられる。総勢約100名の出演者が、時おり観客を巻き込みながら同時多発的にダンスや音楽などのパフォーマンスを行うので、当日手渡されるピクニックキット(レジャーシート、ブックレット、音声案内)を手に観客はピクニックのように公園内で自由に過ごしながら鑑賞できる。事前のワークショップに参加して「アナター」として表現の舞台に立つ出演者も募集している。
世界の主要都市で開催されているファッションの祭典『Mercedes-Benz Fashion Week』が今年も東京で開催。メイン会場は渋谷ヒカリエとなり、2016年春夏コレクションに合わせ、都内各所でファッションショーやインスタレーション、合同展示会などの関連イベントが開催される。期間中は、世界で活躍するデザイナーを選出するアワード『TOKYO FASHION AWARD』も行われる。
『Mercedes Benz Fashion Week TOKYO 2016 S/S』の詳しい情報はこちら
「デザインを五感で楽しむ」をコンセプトに、2007年に始まった最新のデザインと出会える大型イベント。今年は、東京ミッドタウン内の芝生広場に「つみきのひろば」が登場。ディレクションを建築家の隈研吾が手がけ、気鋭のクリエイター3組がつみきを繋げたインスタレーションを披露する。また、無印良品が新たな「小屋」を提案するプロジェクトを展開。深澤直人、ジャスパー・モリソン、コンスタンチン・グルチッチが参加する。そのほかにも、期間中は様々なデザインに関するイベントが開催され、子どもから大人まで楽しめる内容となっている。
『東京ミッドタウン デザインタッチ 2015』の詳しい情報はこちら
クラシックとジャズの両分野で活躍する2人によるスペシャルコンサートが、上野の東京文化会館と八王子のオリンパスホール八王子にて実現する。国内外の主要オーケストラと共演を重ね、高い評価を得ているピアニスト小曽根真が、世界の名だたるジャズプレーヤーと共演する『Jazz meets Classic』。今年は、ジャズ界を代表するサクソフォン奏者ブランフォード・マルサリスが、満を持して登場する。注目の楽曲は、アメリカの現代を代表する作曲家であるジョン・アダムズによる最新作『サクソフォン協奏曲』。そのほか、レナード・バーンスタインの『オン・ザ・タウン』より「3つのダンス・エピソード」、セルゲイ・プロコフィエフの『ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 op.26』も演奏される。変幻自在のピアノとサクソフォンによる圧倒的な演奏に耽溺したい。
『小曽根真×ブランフォード・マルサリス"Jazz meets Classic" with 東京都交響楽団』の詳しい情報はこちら
クリエイティブを軸に、国内外の企業、デザイナー、大使館、ギャラリーなどがそれぞれの作品や取り組みを発表する大規模イベント。新しく価値観を変えるような、クリエイティブの才能が集まる。メインコンテンツとなる『Creative Life展』は、様々な企業やブランドが、新たな商品や流行を生み出す場となっている。また、国際アワード『ASIA AWARDS』では、デザイン、アート、ミュージック、ファッションの4部門で、アジアの若手クリエイターたちのエネルギッシュな活動を垣間見れるだろう。そのほかにも、最先端の技術とセンスが結集された数多くのコンテンツが揃っている。
『TOKYO DESIGN WEEK 2015』の詳しい情報はこちら
アジアにルーツを持ちながらも、日本の風土で熟成、醗酵され、独自の日本の文化として発展してきた古典芸能。本公演は、舞楽、能楽、歌舞伎舞踊といった日本の代表的な古典芸能の良さを知ることができる公演だ。市民参加型の真伎楽、大田楽を加え、古来より日本人が持つ「お祭り」感覚をいかした祝祭性のある古典芸能の一大フェスティバルとなる。中国の眉目秀麗な名将、蘭陵王の伝説を下敷きにした舞楽『陵王』など、アジアからの色濃い影響が見られるものをはじめ様々な古典芸能をダイジェストで楽しむことができる。獅子の面を付けて舞う豪壮な半能『石橋(しゃっきょう) 大獅子』と、儀式的な性格の強い『三番叟(さんばそう)』を操り人形のような動きで舞う歌舞伎舞踊『操り三番叟』も見物だ。
『古典芸能の祭典 アジアの記憶 日本の宝』の詳しい情報はこちら
国境や世代、ジャンルなどあらゆる境界をまたぐアーティストが集い、新たな可能性を拓く国際的な舞台芸術フェスティバル。今年も、三浦基の率いる地点や、飴屋法水、岡田利規、プロジェクトFUKUSHIMA!など、『フェスティバル/トーキョー』にも馴染み深い面々に加えて、初招聘となるスペインの鬼才アンジェリカ・リデルをはじめ海外からもシーンにおいて大きな存在感を放つカンパニーやアーティストが参加する。アジア地域から1ヶ国を選び特集する「アジアシリーズ」の第2弾として、急速な社会変化が進むミャンマーから3組のアーティストが紹介される。オープニングを飾る、SPAC - 静岡県舞台芸術センターの大ヒット作、宮城聰の演出による『真夏の夜の夢』も見逃せない。
現代アートを中心に、デザインや建築、音楽などの異なる表現ジャンルや専門領域が出会うことで、新しいアートの可能性を提示してきた『東京アートミーティング』。多摩美術大学芸術人類学研究所とともに想像力やイメージを探求した第1回をはじめ、デザイン史研究における第一人者の柏木博を共同キュレーターに迎えた『うさぎスマッシュ展』、総合アドバイザーを狂言師の野村萬斎が務めた昨年の『新たな系譜学をもとめてー跳躍/痕跡/身体』など、多くの話題を集めてきた。第6回となる今回は、国内外のアーティストやクリエイターによる多角的な視覚言語のアプローチによって「東京」を立体的に読み解く。出展作家には、ファーストフードチェーン店を水没させる映像『マクドナルド浸水』などで知られるデンマークのスーパーフレックスなど海外アーティストのほか、日本からも蜷川実花や、『大地の芸術祭』にも参加した人気の現代芸術活動チーム「目【め】」などが予定されている。
『東京アートミーティングVI "TOKYO"』の詳しい情報はこちら
日本を代表する様々な伝統芸能を、神楽坂の街の魅力とともに楽しめるイベント。江戸東京の文化とパリの洗練された雰囲気が調和、融合した伝統と文化の街、神楽坂を支えてきた地元の人々の協力のもと、若手からベテランまで、伝統芸能の第一線で活躍する様々なジャンルのアーティストが集結する。普段伝統芸能に馴染みのない人から若い世代、そして外国人まで、気軽に楽しめる神楽坂ならではの盛りだくさんの企画が用意されている。11月15日(日)開催のプログラム『覗いてみようお座敷遊び』のみ有料(2,500円)、事前申込が必要なので注意してほしい。
「TERATOTERA(テラトテラ)」は、JR中央線高円寺駅〜国分寺駅区間をメイン地域として展開する、地域密着型の芸術文化活性アートプログラムおよびその発信機関の総称のこと。その一環として行われる本企画『TERATOTERA祭り』は、2010年度から毎年1回ほど実施している、町中を舞台とした大規模企画展だ。「SPROUT」をテーマに、若手アーティストによるアート展をはじめ、パフォーマンスや音楽ライブなど盛りだくさんの内容で実施する。毎回、個性際立つアーティストが参加しているので、短期間に濃密なプログラムが詰まった同イベントにぜひ足を運んでほしい。
『TERATOTERA祭り2015 ーSPROUTー』の詳しい情報はこちら
『エレクトロニコス・ファンタスティコス!』は、古い電化製品を使ってオリジナルな楽器を生み出してきたアーティストの和田永が、あらゆる人を巻き込みながら新たな楽器を創作し、量産し、奏法を編み出し、徐々にオーケストラを形作っていくプログラム。2015年2月からスタートし、同月に開催された『滞在制作篇』では、訪れた人々との対話やスケッチで、「エレクトロニコスの種」を植えた。7月の『公開ニコス考案会』では、その「種」たちが、実際に演奏できるようになるための方法を、楽器奏者や電子機器に詳しい人々と考えを巡らせた。10月には『滞在製作篇II』を実施し、それらを楽器化して量産していく。そして今回、11月の『初合奏遭遇篇』では、様々なアイディアも混ざりながら生まれた『黒電話リズムマシーン』や『換気扇サイザー』『ドラム式洗濯機ドラム』などの合奏を披露し、新たな「遭遇」を体験できる場を開催。多くの人が集まり、楽しく賑やかな博覧会ができあがることだろう。
『和田永「エレクトロニコス・ファンタティスコス!」~初合奏遭遇篇~』の詳しい情報はこちら
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