コンドルズ、世界が絶賛したワケ

キラキラした青空へと連れて行ってくれるコンドルズの新作

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コンドルズ、世界が絶賛したワケ

撮影:HARU

「“トーキョー的”な感じがウケたんじゃないですかね」ダンスカンパニー『コンドルズ』のプロデューサー兼出演者である勝山康晴は、笑っていう。“トーキョー的”は、ニューヨークをはじめ、世界の劇場で絶賛された「何がなんだかワケがわからない男だけのダンス集団」である『コンドルズ』を何よりもよく表している。メンバーは全員男性。大学卒業の前後、リーダーである近藤良平のもとにズバ抜けて個性的な男たちがなんとなく集いはじめてから15年以上が経つ。“ガクラン”と呼ばれる、黒地の上下に金ボタンがついた、日本でもっとも一般的な学生服をきて、鳴り響くロックンロールの中、激しくダンスを繰り広げる。ジャンルとしてはコンテンポラリーダンスに入るが、一般的なダンスカンパニーのように、統一されて鍛え上げられた身体が舞台にそろうわけではない。身長190センチの巨漢もいれば、自称“チビでデブ”なメンバーもいる。ダンスカンパニーとしては、ありえないほどダンサーたちの身体はバラバラだ。というよりも、彼らの見た目は、日本のごくごくフツーの男たちなのである。そしてそんなフツーの男たちが、激しく踊る。

コンドルズの舞台は、ダンスだけではない。音楽アルバムのトラックのように、ダンス、コント、映像、人形劇と、さまざまな表現方法を駆使したセグメントが次から次へと繰り出されてゆく。セグメントとセグメントの落差がとてつもなく激しい。ふんどしだけを身に着けた男によるシリアスな舞踏めいたセグメントと、東京の街角にたつケバブ屋が、あたりまえのように隣接し、共存する。とんでもなく下らないコントが全身全霊で演じられ、中年にさしかかろうとする男たちの筋肉は限界を超えた動きを見せる。しかも、メンバーひとりひとりが、誰をみても目が離せないほどの個性と存在感を放つ。それにもかかわらず、全体を通してみると、不思議と『コンドルズ』のステージとして、観た者の中で大きな満足感が形成される。

そんな彼らは、世界20カ国以上で公演し、ニューヨークタイムズ紙でも絶賛された。結成当初の舞台では「ニューヨークタイムズ紙でも絶賛」がギャグとして使われていたが、それは現実となった。話は飛躍するが、政権与党の民主党が予算削減のために行った公開事業仕分けで、世間の耳目を集めた女性議員が、科学技術の分野に投下される莫大な予算に関して「一番である必要はあるのですか?二番でもいいのではないのですか」といった趣旨の発言をし、批判された。たしかに、科学技術は工業立国として成長してきた日本の心臓である。科学技術は発展するにこしたことはない。だが、女性議員の発言には、より文化的、というよりもむしろ“日本”という国の“生き方”をめぐる、詩的な問題提起の側面があったのではないか。

コンドルズといえば、その名前の一部がグループ名にもなっており、振り付けも手がけている鬼才、近藤良平だ。近藤は、某大手商社に勤める父の仕事の関係により南米で育った。帰国し、横浜国立大学というエリート校を卒業。ほかのメンバーも、東京藝術大学、群馬大学、早稲田大学と、近代日本を引っ張ってきた大学出身で、学歴だけから言えば“エリート”の集団だ。だが近藤は父の様に商社に勤め、日本のために資源や商品を海外で売買する道を選択しなかった。例の女性議員が所属している民主党では“成長戦略”が一番ホットなテーマだ。つまりこれからの時代「日本人はどうやって食っていくのか」ということ。

プロデューサーの勝山ほか基幹メンバーの数人は『コンドルズ』で生活している。だが、立ち上げ当初から「コンドルズは二番でいい。他に仕事があるなら、そっちを優先すればいい。生活に瀕してまでコンドルズに血眼にならなくていい、そういう貧しさは作品にも表れ、コンドルズはつまらなくなる」という考えでやってきた。そういうスタンスは“趣味”であれば普通だろう。だが今やコンドルズは公演の度にチケットが売り切れるという、日本を代表するダンスカンパニーになった。それは、コンドルズが「二番でいい」と言いながらその実、腹の底ではまったくもって二番になろうなどと思っていなかったからこそ可能となったことだ。

勝山は「二番でいいと言いつつ、観てもらう機会さえあれば、絶対当たるという自信はありましたよ」と言う。その根拠を聞くと、「最初から、これは誰よりも面白いと思ったんです。今まで誰も見たこともないものだから。“何がやりたいのかワケが分からない”と批判されました。でも当然ですよね、僕らがやりたいのはその何と言っていいのか表現しようがないもの、それそのものなんですから。それはでも、やれている、ということは自分たちの中で確信がありましたから」という。天晴れな発言だ。

「二番でいい」というのは、卑屈なのでもなく、諦めでもない。ましてや、牧歌的な趣味生活に徹するというアマチュア意識ではまったくない。それはつまり、ひとつの含羞であり、江戸っ子の粋な言い草であり、心意気なのだ。勝山の著書『コンドルズ血風録!』(ポプラ文庫)に次の下りがある。

「閉塞感がそこらじゅうに跳梁跋扈する日常の中で、物事をネガティブに考えるのは、水が低きに流れるがごとく一番簡単なことだ。ほっておけばネガティブになれる。が、だからこそ、少なくとも俺たちのようにモノを創る人間は……天衣無縫なポジティブさ、それを武器に、輝かしい未来を肯定してみせることに挑戦するべきなのだ。なぜなら、それは一番難しく、そして一番魅力的なことなのだから」

最近では、日本のGDPが中国に抜かれ、日本が“2番”どころか、“3番”になるようなことも話題になる。だが、大手新聞社の世論調査によると、そのことを「問題だ」ととらえる日本人は意外なほど多くはない。日本人は国際化が苦手だと言われている。だが、多くの資本とともに、多くの日本人が世界中に出向いて、そして帰ってきた。そのとき、彼らはたくさんの異文化を吸収してきた。それは、とくに東京という街で、すみずみにまで浸透した。コンドルズの事務所入り口には“We’re Open.”というコトバが掲げられている。勝山 は、コンドルズのメンバーには「パンクな人間が集まっています」と言う。それは、“自由”ということだろう。『コンドルズ』の人気の秘密は、もしかすると彼らの生き方に共鳴する日本人が多いからなのではないだろうか。「どうやって食っていくのか」というよりも、「いかに生きるか」ということに迷い、悩む日本人に対して、彼らの自由な存在の仕方は、強烈な突破口なのかもしれない。

そのコンドルズの新作は、ジャカルタのギラギラと照りつける太陽の真下で撮影された写真がチラシに採用された『SKY with DIAMOND』。今回もまた「今まで見たこともないような演出がある」という。写真の空の青がキレイだから、『空』をタイトルに使いたかったというその空は、たしかにまだ見たことのない世界に向かって開かれているように感じられる。「優しくて、癒し系」という新作は、“We’re Open”とあなたに向かってあっけらかんと、かつ情熱的に開かれている。

コンドルズ 日本縦断大蒼天ツアー2010『SKY with DIAMOND』

東京公演 ラウンドブリリアント・スペシャル

構成・映像・振付:近藤良平
出演:青田潤一、石渕聡、オクダサトシ、勝山康晴、鎌倉道彦、きたろー、古賀剛、小林顕作、田中たつろう、橋爪利博、藤田善宏、山本光二郎、近藤良平
主催:ROCK STAR/コンドルズ
日程:2010年9月17日(金)19時30分から、9月18日(土)14時00分/19時00分から、9月19日(日)17時00分から
場所:東京芸術劇場 中ホール
チケット:0570-02-9999(チケットぴあ)、0570-084-003(ローソンチケット)、当日券は開演1時間前より劇場窓口にて発売される
ウェブ:www.condors.jp/(コンドルズオフィシャルホームページ)

テキスト 七尾藍佳
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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