プロデューサー新時代の主役たち

アルカ、ハドソンモホーク、MNEK。未来のポップスを牽引する才能

プロデューサー新時代の主役たち

日本でも、欧米以外の土地の音楽を「ワールドミュージック」とひとくくりにする習慣があるように、世界のポップミュージックのスタンダードは依然としてアメリカ産やイギリス産のものだ。タイムアウトニューヨークが先日公開した特集記事『Cool producers you need to know in 2015』は、ヒップホップやダンスミュージックがポップミュージックを支配する現在のニューヨークでは、才能あるプロデューサーがすべてを左右する時代が到来しているとして、今知っておくべきクールなプロデューサーたちを紹介している。アメリカのトレンドは遅かれ早かれ世界に伝播し、流れ込んでくる。イケてる音の予習として、知っておいて損はないだろう。

今後10年間のポップミュージックを形成する9人

そう、そこではボーカリストはただ曲中に生かされているだけだ。フックやパーティーチューンを作り出す才能があるプロデューサーもいれば、最高にタフなビートを生み出すプロデューサーもいる。スムーズに楽曲を作曲して機材を操る。彼らのなかには、ソロアーティストとしてのキャリアを築き上げているプロデューサーさえ存在する。
いまや、ベテランのアーティストが自身のキャリアにおける転換として、サウンドを変化させ、新たに作り上げるために、ヒップな若いプロデューサーを発掘するのはますます一般的になってきている。そして、このようなコラボレーションは双方にとって利益をもたらす。アルカ、ハドソン・モホーク、MNEKといった注目の新人プロデューサーたちは露出する機会を得て、カニエ・ウェスト、マドンナといった大物アーティストたちは若者のイノベーションをクリエイティブに生まれ変わらせる。以下にリストアップ(順不同)したのは、現在活躍している最も重要なプロデューサーたちである。今後10年間のポップミュージックを形成するのは彼らのセンスであり、それはアンダーグラウンドでもメインストリームでも同様だろう。

1.アルカ(Arca)


2012年にUNO NYCレーベルから数作品をリリース。超人気ラッパー、カニエ・ウェストの目に止まり、2013年のヒットアルバム『YEEZUS』にプロデューサーとして参加。その後、エッジの効いたアンダーグラウンド界の歌姫FKAツイッグスのコラボレーションや、破局を乗り越えて制作されたビョークの傑作アルバム『Vulnicura』をプロデュース。これだけでも実績として素晴らしいが、奇妙でありながら感動的かつ予測不能な自身のソロ作品も発表して、高く評価されている。

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カニエ・ウェストのアルバム『YEEZUS』において、『Send It Up』 、『Blood on the Leaves』の2曲をプロデュース。どちらも最近の記憶では最も衝撃的な曲だったが、生々しく、鈍い光を放つ素晴らしい仕上がりである。

2.アリエル・レヒトシェイド(Ariel Rechtshaid)


彼は、70年代〜80年代ポップの明るい曲調と音色を取り入れる音作りに優れている。ヴァンパイア・ ウィークエンド、スカイ・フェレイラ、テイラー・スウィフトの新しい親友でもあるハイムの作品でも、それははっきりと輝きを放ち続けている。しかし最も多才なプロデューサーは、ジャンルによって制限されることはない。彼が手がけたアッシャーの『Climax』は、2012年グラミー賞をR&B部門で受賞している。

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ハイムの『If I Could Change Your Mind』を聴いてみてほしい。タイトルには不確実性が示唆されているが、曲には甘ったるい恍惚感がある。レヒトシェイドの音楽はいつだって陽気で楽観的に響く。彼の手腕に委ねれば、きっと自分はこの先も大丈夫と感じるだろう。

3.ベニー・ブランコ(Benny Blanco)


過去7年間にトップ40の曲を聴いたことがあれば、彼が手がけた曲を聴く機会があっただろう。例えば、ケイティ・ペリーの『Teenage Dream』、マルーン5の『Moves Like Jagger feat. Christina Aguilera』など。彼は長い間、軽いビートが絶え間なく続くような、開放的なギターポップをプロデュースして生計を立ててきた。しかし、彼のサウンドは変化し始めている。力強いラップを聴かせるイギー・アゼリアのヒット曲『Black Widow feat. Rita Ora』や、フォークロックとGファンクを首尾よく融合させたエド・シーランの『Don’t』をプロデュースしていることからもわかる。

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トップ40チャートの曲を聴けば、ベニー・ブランコが関わったものが必ずある。もしくは、順番が逆かもしれない。

4.ブーツ(Boots)


2013年の終わりにビヨンセの5thアルバム『ビヨンセ』が突然リリースされたときに、クレジットに「ブーツ」という見慣れない名前を発見したはずだ。「この謎の人物は誰?」「世界的な大スターをどのようにプロデュースしているのか?」と熱い注目を浴びることになった。ビヨンセをプロデュースした後に、彼はソロ作品を制作し、ラップデュオのラン・ザ・ジュエルズや、エッジの効いたアンダーグラウンドの歌姫であるFKAツイッグスをプロデュースしている。

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ブーツのスタイルを突き止めるのは難しいが、ビヨンセの『Haunted』には彼のアプローチが表れている。曲調は何度か変わるが、大きなキックドラムのサウンドや、天使のようなバッキングボーカルを織り交ぜながら、ハードで脅迫するような印象が続く。

5.デヴ・ハインズ(Dev Hynes)


スカイ・フェレイラ、ソランジュのようなヒップな若手アーティストや、カイリー・ミノーグのような著名なアーティストにとって、作曲家兼プロデューサーの精神を持つガイド的な役割を果たしながら活躍してきた。また、商業的なR&B(ティナーシェの『Bet feat. Devonté Hynes』ではギターを演奏)やヒップホップ(Heemsの『Home』)にも進出。直近だと、カーリー・レイ・ジェプセンがTV番組『サタデー・ナイト・ライブ』で新曲『All That』を披露する際にサポートしていたことが記憶に新しい。

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ソランジュの『Losing You』には、彼のサウンドの特徴が顕著に見られる。薄く透けるような美しいバッキングボーカル、甘美なメロディ、80年代ポップファンクの基盤がそこには流れている。

6.ハーモニー・サミュエルズ(Harmony Samuels)


濃厚なR&Bサウンドを探しているのであれば、彼がおすすめのプロデューサーだ。彼の楽曲は、アリアナ・グランデのデビューアルバム『Yours Truly』を特徴づけるのに一役買った。彼女を一躍スターにしたヒットシングル『The Way feat. Mac Miller』では、1998年のビッグ・パンのクラシック『Still Not a Player feat. Joe』をサンプリングしたのも賢明だった。また、ケリー・ローランド、フィフス・ハーモニーもプロデュースしている。

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シアラの最新シングル『I Bet』は、彼のスタイルを完璧に抽出している。力強く恋人に別れを突きつける曲だが、羽根のように軽やかに舞い降りて、まるで90年代のデスティニーズ・チャイルドの曲を現代版にリブートしているようだ。

7.ハドソン・モホーク(Hudson Mohawke)


大げさなまでに鳴り響くヒップホップやエレクトロニックミュージックを探しているのであれば、彼の爆発的なビートがおすすめ。2012年のカニエ・ウェストのシングル『Mercy』以降は、彼の主力プロデューサーの一人となり、アルバム『YEEZUS』はもちろん、ドレイク、Pusha Tのプロデュースなどを順調に手がけている。

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プロデューサーのLuniceとコラボレーションしているユニットTNGHTの『TNGHT EP』では、彼の熱狂的なエネルギーが最もよく表現されている。聴く人を興奮させるのが彼の作風で、どの曲も、パーティー騒ぎにおすすめだ。

8.マイク・ウィル・メイド・イット(Mike Will Made It)


アトランタ出身のこのプロデューサーは、弱冠26歳にしてすでに驚異的な数のヒット曲をプロデュースしている。彼のサウンドは、サザンヒップホップから派生したトラップのビートを使い、重厚ながら意気揚々としているのが特徴。彼はまるでカメレオンのように無節操に、ヒップホップ(ジューシー・J、レイ・シュリマー)、ポップミュージック(マイリー・サイラス)、R&B(ジェレマイ、シアラ)の作品にクレジットを連ねる。ボーカリストが誰であろうと、彼のビートには要注意だ。

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リアーナの『Pour It Up』を聴いてみてほしい。荒々しいと同時に、メロディアス。底層に流れるディープで直感的なメロディから、表層を彩るキラリと輝くメロディまで、聴きどころは多い。

9.MNEK


彼の曲はラジオで日常的に流れていることもあり、現在はイギリスでの方が有名だ。しかし、それも近いうちに状況が変わるだろう。結局のところ、世界中がダンスしたがっている。彼は、リードシンガー、作曲家、プロデューサー、バッキングボーカリストをマルチにこなす驚異的な人物だ。クリーン・バンディットにせよ、デューク・ デュモンにせよ、そしてマドンナにせよ、モードな音を好む。いずれにしても、ハートウォーミングでダンス寄りな作風であることは共通している。

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彼は上昇するようなフックで脆いテクスチャーを組み合わせることを愛する。それゆえ、ゴルゴン・シティ『Ready For Your Love feat. MNEK』のように、まるで弾けるのを拒む泡のような楽曲が生まれる。

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翻訳 小山瑠美
テキスト Elias Leight
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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