インタビュー:MIYAVI

映画『Unbroken』に出演したロックスター

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インタビュー:MIYAVI

アンジェリーナ・ジョリーが東京に来て、自身が監督する次回作へ出演するよう説得されたときのMiyaviは、すでに国際的なロックスターであった。大阪生まれで33歳のMiyaviは、数々のソロアルバムやスーパーグループ、S.K.I.N.のメンバーとしても知られており、アンジェリーナのオファーを受けることを当初ためらったという。「リスクがあるかもしれないと感じました。もちろん俳優としての経験はなかったし、映画のストーリーも物議を醸すものだったので。もしかしたらミュージシャンとしてのキャリアにダメージがあるかもしれない、とも思いました」。

しかし、リスクを負った価値はあった。2014年12月に公開された『Unbroken』で捕虜収容所の残虐な監視官ザ・バードを演じたMiyaviの演技は広く称賛された。「自分が悪者になりきればなるほど、作品としてメッセージが浮き彫りになり優れた映画になると考えました」。この映画、そしてロサンゼルスへ拠点を移したことが後押しとなり、Miyaviはさらに有名になった。気が付けば数限りない授賞式やアフターパーティーに出席していた。エレン・デジェネレス個人から、彼女のトークショーへの出演依頼が来たこともあった。

俳優としても頂点に上り詰めたMiyaviではあったが、アメリカへ移ったことで苦労もあった。「当たり前だけど、環境やすべてが全然違うし、僕には英語ですべてのことを処理する能力もなかった。自信をなくした時もありました」。Miyaviはワールドツアーを行ったが、アメリカでは車もアパートも借りることができなかった。「何のバックグラウンドもない自分を信用してもらうための証明がなかったからね」。そこで彼は自分が一番知っていることに取り組むことにした。「17歳で上京した時も、ギターを弾いているときだけが自分自身でいられる瞬間だったんですよね。また、音楽が僕を救ってくれました」。

Miyaviは、グラミー賞受賞R&Bプロデューサーコンビのドリュー&シャノンとともに、ニューアルバム『The Others』に取り組み始めた。「初めて会った時は、ぶっ飛びましたね」。初回のライティングセッションのことをMiyaviはこう話す。「彼らにとっては音楽そのものが生活なんだよね。まず契約書にサインをして、スタジオを借て、出口ありきで音楽を作る、というのではないんだよね。ご飯を食べながら作詞もするし」。アルバムのレコーディングはナッシュビルで行い、アメリカの「音楽の町」との精神的なつながりを感じた。「リハビリみたいなものでしたね。ナッシュビルではみんな音楽好き。レストランのウェイターでさえ、自分よりも歌が上手い(笑)」。

『The Others』は今までになく様々なジャンルの曲が集まったアルバムだ。彼の特徴である合唱アンセム(『Into the Red』や『Let Go』)を筆頭に、雰囲気のあるファンク(『Come Alive』や『Unite』)やエレクトロメタル(『Odyssey』や『The Others』)も収録している。Miyaviは自分のテイラーギターをテレキャスターに替えた。「以前は唯一無二である事に重きを置いてた。たとえそれがよい音であっても典型的な音は使いたくはなくて。でも今は、もっと音楽自体を大きく捉えていますね」。同アルバムはMiyaviのスラップ奏法も存分に楽しめるが、R&Bの『Alien Girl』が傑出している。Miyaviがアンジェリーナ・ジョリーについて話すのを聞いていると、この歌は彼女に影響を受けたのではないかと思ってしまう。「アンジーの、仕事への情熱と意気込みはとてつもないんです。世界を良くするという使命を持っていて、もう同じ人間じゃないというか、この世界を癒すために地球外から来たんじゃないかと思わされたり」。

『Unbroken』は、戦時中の日本の描写に関して国内で激しい非難があり、配給会社が見つかっていない。Miyaviは、同映画を観る前から非難している日本人のネットユーザーらに手厳しい言葉を投げかける。「だって『シンドラーのリスト』を観たあとにドイツを嫌いになる人はいないでしょ。それはドイツがその歴史を乗り越えて証明してきたことをみんなが知っているから。『Unbroken』を観たことで日本を嫌いになる人はいないですよ。現に抱えきれないくらいポジティブな感想が世界中から届いているしね」。

出演を引き受けたことやロサンゼルスに拠点を移したことを、Miyaviは後悔していない。すでに、次なる挑戦を待ち構えている。「僕が映画に出ること、ましてや英語で演技をすることを予想していたファンなんていないと思う。僕は人生を通じて何だって可能なことをファンのみんなに証明したいです。進み続けること、そこで見える景色を、みんなと一緒に見たいと思っています」。


『The Others』は2015年4月15日(水)にリリース。Miyaviの『We Are The Others』ツアーは4月30日(月)の広島公演を皮切りに、5月16日(土)の東京のStudio Coast公演まで全国を巡る。詳細は公式ウェブサイトで確認を。


同記事の原文はタイムアウト東京マガジン6号でも読むことができる。

撮影 Manabu Morooka
テキスト Leslie Lee III
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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