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2015年05月12日 (火) 掲載
日本の競馬は、過度に着飾った観客で名高い英国のそれとはまったく異なるが、競走馬は世界に引けをとらない強さを誇る。たった100円か200円の入場料で競馬場に入れば、最も大きな帽子を身につけているのが誰かということではなく、賭けることがイベントの主眼だとすぐに実感するだろう。日本は25の競馬場を持っており、うち府中市の東京競馬場と品川の大井競馬場(東京シティ競馬)の2つが東京にある。ほとんどの競馬場が9時から17時までだが、大井競馬場は『トィンクルレース』として、しばしば21時まで開いている。
1. 平地競争:昔ながらの定番
いわゆる典型的な競馬として多くの人々が思い描くスポーツ。平らなトラックを走り、最初にゴールラインを鼻が越えた馬が勝馬となる。
観覧席には: ほとんどすべての観客がサラリーマン然としている。馬!芝生!ギャンブルのスリル!誰がこれらを愛さないだろう。平地競争はあらゆる人のためにある。
2. 障害競走:障害物を飛び越える
スピードよりはむしろジャンプによって競われるレースで、様々な障害物をうまく切り抜ける能力が問われる。一般的に長距離で時には4000mにもなり、馬たちは生垣や竹柵、水濠などを通り抜けなくてはならない。日本の障害競馬の、外国との最も大きな違いは、その賞金にある。この手のレースでは最大規模の『中山グランドジャンプ』は、賞金総額が1億2千万円を上回る。障害競馬を専門にしている競走馬は稀で、実際ほとんどすべての馬が平地競争の経験を持っていることもユニークだ。ヨーロッパなど多くの国では、どちらかしか走らない。
観覧席には: 刺激を求める若者たち。障害競走は、スリルこそを味わうための最良の場であって、年長の競馬ファンは敬遠しがちだ。そう、大事な馬のために。
3. ばんえい(輓曳)競争:パワーレース
海外では「draft racing」としても知られるが、これはまったく異なる競馬だ。北海道の凍てつく十勝は帯広のみで開催され、レースというよりはむしろ忍耐を競う。200mという比較的短い距離だが、馬たちはどっしりと重いそりを引きずっていかなくてはならない。ばんえい競争の馬は、平均して1000kgほどと、一般のサラブレッドに比べ随分と巨体。サラブレッドの2倍を越える馬体重を持つのが、ばんえいの競争馬たちだ。
観覧席には: 挑戦的な「おじさん」たち。ジョッキーたちの馬さばきを観るために、氷点下20度もの寒さのなかで立ち尽くすのは、最も熱心なギャンブラーに限られるだろう。
ディープインパクト
彼の名と同様にそのレコードも衝撃的だ。近年では最も成功した競走馬であり、参加した14のレースのうち12のレースで勝利を収めている。
オルフェーヴル(仏語で「金細工師」の意)
日本の競馬史に名を刻んだもう1頭の馬、オルフェーヴルの荒い気性は、しばしば彼を1着にすることを阻んできた。かつてオルフェーヴルはコース途中であらぬ方向へ駆け出して、一度は馬群から大きく後退するも、2着にまで返り咲く驚異的な脚を見せつけた。
ハクサンムーン
おそらく前世は球技選手だったのだろう、迷信深いハクサンムーンはレース前になると、その場でぐるぐると円を描いて回りだす。騎手が必死で止めようとするのも聞こうとしない。G1で2着という戦績には終わったものの、彼のメソッドは功を奏したように思われる。
ルージュバック
たったの3歳馬にして、ルージュバックは、牡馬さえ打ち負かす最も強い牝馬と見なされている。『日本ダービー(東京優駿)』すら勝つのではと、まことしやかに噂されている。(※訳者注:2015年4月12日開催の『桜花賞』での惨敗以前の評)
キズナ
父親ディープインパクトとともに、キズナもまた大きな勝利が運命づけられていた。すでに競馬シーンにおいては「年長者」と目されてはいるものの、彼はいまだファンを楽しませてくれる。
競馬の用語は理解しがたい。ここでは日本の競馬場で賭けるための簡単なガイドを記す。馬券は発走時間の2分前まで購入が可能だ。馬券が的中すれば、自動払い戻し機で換金することができる。
単勝
とても単純。選んだ馬が勝てば、払い戻しを得られる。
複勝
3着以内に入れば換金できるが、額は少なめ。
馬連
2頭の馬で悩んでしまっても平気。馬連なら、選んだ2頭が両方とも1着2着でゴールすれば勝ちだ。順番は関係ない。
馬単
馬連の姉のような存在。馬単では1着と2着の順序まで予想しなくてはならない。
3連複
もし3頭の馬を選びたいなら、これ。優柔不断な人向きだ。やはり3着内の順序は関係ない。
3連単
こちらは超能力者向け。1着、2着、3着となる馬を正しく予想しなければならない。
WIN5
競馬における宝くじのようなもの。指定された5つのレースで勝馬を当てることができたなら、100円のチケットで最大6億円のリターンがある。
1. 競馬は日本のオフィシャルなギャンブルとして人気があるだけでなく、国際的な歴史も持つ。19世紀にマシュー・ペリーが日本へ開国を促した後、横浜に住むようになったヨーロッパ人から競馬は紹介された。そのため、アメリカ式のダートではなく、ヨーロッパ式の芝(ターフ)が日本では好まれるという。
2. 場馬のサインと「ウインズ」のロゴとともに、主要駅の近くなどでしばしば見かける場外馬券場。その数は約100にも上る。
3. インターネットやスマートフォンを使って観戦もできれば、賭けることまでできる。競馬場にいながら、直前にスマートフォンで馬券を買い増す光景さえしばしば見られる。
同記事の原文はタイムアウト東京マガジン6号でも読むことが可能だ。馬好きの外国人にも勧めてみてほしい。
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