原宿発、シェフと撮影家の対談

松嶋啓介プロデュースのレストランで中山淳一の作品展を開催

原宿発、シェフと撮影家の対談

フランスのニースで5年連続ミシュラン一つ星を獲得しているレストラン『KEISUKE MATSUSHIMA』。そのシェフをつとめる松嶋啓介がプロデュースするレストラン『レストラン アイ』で、食とアートのコラボレーションイベントが開催される。松嶋は、フランスでの生活を通じ、レストランにアート作品が飾られているのを目にしており、「シェフはお客に育てられ、アーティストはレストランに育てられる」ということを実感したそうだ。そして、たくさんの人に若いアーティストの才能を知ってほしいと思い、『レストラン アイ』のバー『Rendez-Vous』にて、お酒と料理を楽しみながら、アーティストとの対談を定期的に開催することを決めた。第1弾は2010年1月に行われ、東京をベースに活動するビジュアルデザインチーム『artless inc.』の代表で、川上俊がゲストに迎えられた。第2弾は2010年3月28日に開催されるが、村上隆がプロデュースするアートの祭典『GEISAI#12』で金賞を受賞した撮影家の中山淳一が登場する。撮影家とは、どんなアートを作り出すのか。中山とのコラボレーションについて、松嶋に詳しく話を聞いた。

松嶋さんと中山さんの出会いはいつ頃ですか?

松嶋:僕の知り合いと一緒に、レストラン アイにふらっと来てくださったのが始まりです。川上俊さんとやったイベントも見に来てくれて、そこでいろいろ作品を見せてもらいました。

中山さんの作品を1番最初に見た時に受けた印象を覚えていますか?

松嶋:変な人だなぁ、と思いましたね。彼の作品は写真なんですが、一眼レフとかじゃなくて、普通のデジカメで撮るらしいんですよ。だから、盗撮と間違えられて、職務質問とかもたまにされるみたいです。例えば、プールの水面のきらきらしているのを撮った作品がある。水面は、日常的に見ているものだけど、ほんの少し角度を変えてみることで、美しく見えることに気づいて欲しいと思ってやっているそうなんです。僕もびっくりしたんですが、マグマみたいですね、と言った写真が、歯磨き粉のチューブのキャップを撮ったものだったりするんですよ。

変、というのが印象なんですね。でも、気が合いそうですか?

松嶋:気が合うというと、自分も変な男だと認めるようで、嫌だけど……(笑)。彼のやってる取り組みに関心を持っている、と言った感じです。

僕は、エコというものは身近なところからする必要があるんじゃないかなと思って、レストラン アイにも、オール電化のエコキッチンを作りました。それから、フードマイレージをゼロにしたい。だから、地元の食材をたくさん使って料理をしたいと思っている。地元の、身近にある普通のものを使って、普通のものから価値を生み出したいんです。中山さんもそうだと思うんですよ。わざわざ高価なカメラを買って写真を撮るんじゃなくて、身近にあるものの尺度を変えて表現していきたいと思っているところが、とても良く似ていると思います。

おふたりの対談は話が弾みそうですね。

松嶋:僕は、アート作品だけを見て価値を決めるんじゃなくて、原作者の気持ちを聞きたいと思うんです。 今回展示する中山さんの作品は、お花見をテーマにしたもの。お花見って、一輪の桜では成立しなくて、同じ花がたくさん集まって成立する。だから、一枚の写真の大きさを変えたり、何枚も何枚も貼付けたりすることで、花が咲いているように見せているんです。写真の被写体は、歯ブラシの柄の部分だったり、何かの看板だったり日常にあるありふれたものなんだけど、それらを組合わせて、美しい花を表現している。そうすることで、いつには気にも留めなかったものが、大切に思えたりするんですよね。だけど、こういうことって、やっぱり本人から話を聞かないと、わからないんですよ。作者の気持ちを聞いて、花を見て、そして、食べる、飲むということからも、いろいろ感じてもらえたら良いなぁと思っています。

聴く、見る、食べる、飲む以外にも、今回のイベントにはドレスコードがあるんですよね?

松嶋:前回も、イベントのお知らせに日本らしいものを身につけて来てください、って書いてあったんだけど、誰もやってくれなかったから、今回は大々と“花”、とドレスコートを書いてみました。やっぱり、春を感じてほしいじゃないですか。だから、お酒も花をテーマにして、『出羽桜』という日本酒を用意しました。料理も桜を象ったものとか、ピンク色を意識したものを増やして、そして自分たちも花を身につけて、春を楽しみましょう、という趣旨です。

たくさんの方に参加していただきたいですね。

松嶋:日本にはまだまだシェフやアーティストを育てる環境がないと思うし、作者の気持ちを発表できる場所がないんでしょうね。だからこそ、レストラン アイにいろんな人の作品を展示して、話もしてもらうことで、ただ単純に気に入ったものを買うんじゃなくて、メッセージを含めて気に入ってもらうことを続けていれば、アートの世界もまだまだのびるんじゃないかな、と思っています。

松嶋啓介×中山淳一 対談イベント 日時:2010年3月28日(日)
時間:18時00分から
会場:レストラン アイ内のバー、Rendez-vous
料金:5000円

テキスト 東谷彰子
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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