Shibuya Publishing Booksellers
2010年01月15日 (金) 掲載
日本の書籍や雑誌というものは、建築からラーメンまで、あらゆる題材を扱いながら、表紙やレイアウトといったデザイン面においても高級とB級の隔てなく、身軽に探求を続けている。こうした現象が、文化の一部になっているところが実に興味深い。 東京は街中のいたるところ、驚くべきことに多くの駅にも書店があり、ただコンビニエンスストアに行くだけでも、人々の活字に対する旺盛な意欲を知ることができる。しかし、コレクター、アートブック好き、限定本好き、そして特別な目的のない人と、それぞれのニーズを満たす行きつけの書店は異なるものだ。東京のインディペンデントな書店は、歴史本からアヴァンギャルド本まで、またはアイコン的な本から話題の本までを独自の価値観で取り揃え、こうした異なる文学的種族たちにアピールしている。
目黒川沿いにあるCow booksは、規模こそ小さいものの、60年代と70年代を中心にした絶版本の品揃えと、抱負な知識を誇る書店である。2000を越えるコレクションには、ロバート・フランク著『The Americans』の50周年記念エディションのような希少本と、創設者である松浦弥太郎自身が出版した本などが含まれる。小林節正と共に同店を経営する松浦は、東京の文学シーンにおける貢献者であり、長く続く雑誌『暮しの手帖』の編集長に就任したことで脚光を浴びた人物である。 店内には、中央に木の椅子と閲覧テーブル、壁沿いに図書館スタイルのスティール本棚、ピスタチオ色の床には(すり切れていなければ)心地よいラグが置かれていて、その折衷スタイルにもまた引きつけられずにはいられない。さらに、天井沿いの壁には、LEDを使ったテロップが流れており、赤く光る電球が “We Live in Books”、または同じ趣旨の言葉を写し出している。 外国人客には“日本へようこそ”の意味を込めて、無料のおもてなしが用意されているので、カウンターで尋ねてみて欲しい。ヒントは、この店ではフレッシュなコーヒーが提供されており、川に沿った外のベンチで楽しむことができる。
住所:東京都目黒区青葉台1-14-11
電話:03-5459-1747
営業:13時から21時まで、月曜休
ウェブ:www.cowbooks.jp/newtop.html
COW BOOKS 南青山(ヴェニュー情報はこちら)
フリーランスのエディター、ライターである福井盛太が2008年1月にオープンしたのが、この“出版社 meets 書店”である。内装は、ヘミングウェイの短編『清潔で、とても明るいところ』から発想を得たようだ。店は物語の中に出てくるカフェのように、毎日夜遅くまでオープンしており、本を愛する人たちに仕事後の休息を与えている。内装はシンプルながらも明るく、本そのものが主役になっているところがいい。本は国内外の文化とポップカルチャー関連にフォーカスしてセレクトされ、40年代から現在まで、著者よりもむしろ時代と社会的な運動によって閲覧するように配置されている(※)。また、マンガも現代デザインの研究書と一緒に並び、中央の小島のようなスペースには自社オリジナルの季刊誌『Rocks』を含む、最近のインディペンデント雑誌が置かれている。
店は住宅街に近く、発展が進むエリアでもある神山町にあり、落ち着いた雰囲気のレストランと深夜スポットによって喧噪から隔離されている。
※2010年から、書棚の編集方針を年代別でなく、“独自の価値観によるカテゴリー別”に変更した。
(ヴェニュー情報はこちら)
最近、東京の文学的ランドスケープに加わったユトレヒト青山店は、おそらく、すべてのインディペンデント系書店の中でもっとも触知性の高いコレクションを提供する店である。ディスプレイされている少数発行の出版物は、紙の光具合、端のカットの滑らかさ、ホチキス留めか紐閉じかなど様々な形態をとっており、内容と同様に質に対しても高い美意識をもつ人たちにアピールしている。また、現在東京では同人誌におけるルネッサンスが興っているのだが、ユトレヒトはその一端を担っていると言える存在だ。また、国内外や芸術性を問わず、よく編集されたコレクションを誇る一方で、『LOVELESS』のようなファッションブティック向けの本のセレクトを手がけていたりもする。 場所は青山。隣のプラダビルと比べてしまうとやや簡素なビルの2階にある。店内は、本棚がドアのように左右に広がり、ベニア板が部屋の一角をカフェへと変えているなど、一時しのぎのような雰囲気を感じなくもない。しかし、銀杏の木の下にある広めのバルコニーにも座れるスペースがあり、冬にはヒートランプが置かれていて暖かい。併設のギャラリースペース『NOW IDeA』で特集されている展示を楽しむのもいい。
住所:東京都港区南青山5-3-8 パレスミユキ2階
電話:03-6427-4041
営業:12時から20時まで 月曜休(祝日の場合は翌日)
ウェブ:www.utrecht.jp/
ごく稀に、ミュージアムショップがミュージアムそのものよりも有名になることがある。まず思い浮かぶものにMoMaストアがあり、ワタリウム美術館に併設されているオン・サンデーズも同様だ。この書店は2つのフロアで構成されていて、洋書はもちろん、優れた現代日本美術シーンのコレクションで一目置かれているショップである。1階から螺旋(らせん)階段で地下に降りて行くときの気分は、カタコンベやワインセラーに入るときの気分と似ていなくもないが、確かにここに収められている本からは、そういった威厳のようなものを感じることができる。
また、書籍以外のコレクションも優れているので、熱狂的な活字ファンは革製のブックカバーやペンケースといったアクセサリーをチェックするのを忘れてはならない。反対に、もっと気軽に楽しみたい方には、都内で一番と言えるポストカードや手帳、アート関係のコレクションをお勧めする。
住所:東京都渋谷区神宮前3-7-6
電話:03-3470-1424
営業:11時から20時まで、水曜のみ21時まで
ウェブ:watari49.rsjp.net/onsundays/
東京の出版業における歴史的中心地であり、古本のメッカとして知られる神保町の書店街を理解せずに、東京の本屋の調査が完成することはない。特に古本において象徴的な存在とされているのが、大屋書房である。入口に積み上げられた侍関連の本から、店内に満ちた目眩がするような独特の匂いまで、江戸時代の書物を扱うこの店は、訪れるものを完璧なタイムトリップへと導いてくれる。1882年開店、現在の経営者は3代目となる纐纈公夫(こうけつ きみお)だ。フィクションやノンフィクション、そして葛飾北斎のような巨匠の漫画といった広範囲にわたるコレクションに加えて、この書店は浮世絵の原画とリーズナブルなレプリカの両方と、江戸の古地図を多く取り扱っている。そうはいっても、すべての品物が遺産的な価値をもっているわけではない。例えば、最近書店によって作成された、江戸の文学と伝承の世界に生きた妖怪に関するフルカラー本『妖怪カタログ』。こちらは1500円で購入することができる。 また、もっと現代の情報を求める人にとっては、大屋書房は書店街の地図とフライヤーを入手するのにぴったりな場所になるはずである。 (ヴェニュー情報はこちら)
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