Photo:Katsuhiro Ichikawa (c)SPIRAL/Wacoal Art Center
2009年10月29日 (木) 掲載
若手のギャラリストやアートディレクターが、個人でアート作品を出展する新形式のアートフェア『ULTRA002』が、東京・青山の複合文化施設『SPIRAL(スパイラル)』でスタートした。アートフェアと言えば、ギャラリー単位で出展されることがほとんどだが、ULTRA002では、ギャラリーで実際に作家や作品を選定する“ディレクター個人”を出展単位としている。ディレクターが自分の名前を全面に出すことで個性が発揮され、美術が本来持っている個の力を引き出すことが目的だ。昨年に引き続き2度目の開催となる今回は、一社から複数のディレクターや、所属ギャラリーを持たないインディペンデントなディレクターが名を連ねており、その数は2008年の倍となる51名にまで膨らんだ。会場も新たにスパイラルガーデンを加え、盛り上がりをみせている。
会場には巨大パネルが並び、それぞれの壁を各ディレクターが展示ブースに見立て、作品を紹介している。どのブースも、美術界の次代を担う若手ディレクターが自信を持って展示しているだけあり、斬新でパワーを感じるものばかりだ。例えば、中山真由美のブース。展示作品のひとつである冨井大裕の『GOLD FINGER』は、金属の画鋲を104cmx104cmのパネルにびっしりと刺してできた正方形だ。中山は、一見すると画鋲には見えないこの作品から、「日頃何気なく使っている画鋲の美しさを見て欲しい」と熱く語る。 みつまゆかりのブースでは、“現代アーティストが作品で語る今の社会”を展示テーマに掲げ、3人のアーティストを紹介している。そのうちの一組、淀川テクニックの作品の中には、ペットボトルのフタや歯ブラシなど、大阪の淀川に落ちているゴミや漂流物を使って象った魚のオブジェ『ニシキゴミ』があり、展示テーマをダイレクトに感じることができる。
その他にも奇想天外な絵画やポップな砂絵など、大手のギャラリーでは目にすることが少ない作品も多く、新たなアーティストや作品を知るきっかけになることは間違いない。既存の大手ギャラリーを知り尽くし、目の肥えている人ほど、新鮮な感覚に襲われる。
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