遠山正道が伝えたい5

世界に伝えたい日本の名曲100

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遠山正道が伝えたい5曲

遠山正道

株式会社スマイルズの代表取締役社長。『スープ ストック トーキョー』や、『PASS THE BATTON』を手掛ける。また、ニューヨークで個展を開催するなど、絵画アーティストとしても活躍している。

遠山:図らずも1970年代的なもので終始した。私は、もともと音楽への知識や経験の薄い人。言ってみれば、純粋に聴き手の側でうろうろしていた。その中で、聴き手に届いて、染み付いている曲。外国人に聴かせたい、という切り口から、バイブレーションの効く人を選んだような気がする。スーパーカーなどのテクノも入れたい気がしたが、クラフトワークなどと比較されるとつらい。比較されるなら、この際、トムジョーンズと相撲をとりたい。

森進一『襟裳岬』
この話を頂いたときに、何故か最初に頭に浮かんだのがこれ。言わずと知れた名曲だが、1970年代に吉田拓郎が曲を書いた、フォークと演歌の初の融合にして、以降の日本の音楽に大きな影響を与えた。“こぶし”という演歌独特の歌いまわしを、若い人にも受け入れられる拓郎のメロディーで外国人に披露できるのは幸せ。
この当時、森も拓郎も苦境下にあったそうで、そのような歌手の想いが歌にのってオーディエンスに届くという意味では屈指の名曲と思われる。
襟裳岬 - 45周年!森進一ベスト

ゆらゆら帝国『3x3x3』
“ゆら帝”のファーストアルバムにして最高傑作。最初に聴いたとき、とにかく衝撃だった。サイケデリックという世界が人間の内部に潜在的に、確実に存在することを知らされる。他に代替が利かないという意味では椎名林檎と共にアートの領域で語られてよいと思う。歌や曲がぽこんとあるのではなく、歌や曲や表現やその人、考え、環境などが剥がしようなく、ひとつである。

吉田美奈子『頬に夜の灯』
70年代という時代性と、私の若いときとの感覚がないまぜになり、吉田美奈子は感情をかきたてられる。当時の私にとっての大人。大瀧詠一『ロングバケーション』以前の素敵な記憶。吉田美奈子の独特のボイスは外国の人に特殊な波長として届くと思う。あー、『ケントメリーの愛のスカイライン』なども推したくなる。

大貫妙子『都会』
当時、実際に聴いたことはなかった。Soup Stock Tokyoで選曲している松永氏が選んで流されている曲(前述吉田美奈子同様)。まさに都会的な、同時代のクールな状況を想像させる。窓をあけて、となりに女子がいて、遠くの帳を目指して無言でドライブしたい。

郷ひろみ&樹木希林『林檎殺人事件』
カラオケに行ったときはたまに歌います。夜中にYouTubeでもたまに見ます。全くデュエットになっていない2人の掛け合いがよい。曲を通してドラマを感じさせる。「アダムとー、イブーーが~~」の転調?が絶頂。直後の「フニフニフニフニ」ですかしをくって、「後を絶たない~~」、でもう一度引き寄せ、着陸にむかっていく。歌が歌手ひとりだけで留まらず、人や空気を掻きこんで引き寄せていくおおらかな魅力をもっている。


※掲載されている情報は公開当時のものです。

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