東京、おでんの名店15

麻布十番、赤羽、人形町、神楽坂など、東京の美味しいおでんを食べる

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東京、おでんの名店15選

肌寒さが増してくると、おでんを思い浮かべる人は少なくないはず。今や、コンビニエンスストアでも通年扱う店舗が出てくるなど、国民的ソウルフード、おでん。湯気のたちのぼるアツアツのおでんに、からしをつけて頬張れば、腹の中からぽかぽか温まる。そこに燗酒の一本でもあれば言うことなし。だが、おでんの何が日本人の胃袋をつかんで離さないのか。それは、数十種のおでん種をひとつの鍋の中でまとめあげる、鍋ならではの寛容性によるものかもしれない。ベースとなる出汁に、練り物から溶け出す魚介系の旨み、ダイコンをはじめとする野菜の優しい甘さ、場合によっては牛すじなどの動物性の旨みが合わさった複合的な味わいが、コトコトと煮込まれるうちにそれぞれのおでん種に含まれてゆく。そんな旨みの宝庫といっても過言ではない。ここでは、気楽な立ち飲みおでんから、下町の老舗、持ち帰りのみの名店まで、東京都内の人気おでん専門店15店を紹介する。
※2015年6月に情報アップデート



御茶ノ水:こなから


御茶ノ水にある、関西風おでん「こなから」は、おでん好きの間では広く知られる店だ。鹿児島出身の主人だが、関西での修行が長かった経歴を反映し、クリアであっさりとした滋味深い出汁のおでんが特徴だ。ダイコンやイワシつみれ、昆布などの定番に加え、卵を加えて自家製するサクサクした触感のこんにゃく、レンコンのすりおろしにみじん切りのレンコンを混ぜて、触感よく仕上げる『れんこん餅(季節限定)』など、オリジナリティ溢れるおでん種が豊富。予約必至だが、わざわざ行く価値はある。

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半蔵門:稲垣


半蔵門にある割烹稲垣は、関西風、関東風、名古屋風の3種類のおでんが楽しめる欲張りな店だ。開業から30年を迎えた現在は2代目が厨房を切り盛りしているが、先代の味を引き継いだおでんは今も健在。クリアな出汁であっさりした味わいの関西風、濃口醤油で風味付けした関東風、こっくりした赤味噌の名古屋風のいずれも甲乙つけがたいが、絶対に外せないのは名古屋風だ。なかでも、とろりと柔らかい口当たりの『牛すじ』、中まで味の染みた『こんにゃく』と『玉子』は堪えられない味。

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上野:多古久


上野は不忍池からすぐ近く、池之端にある多古久は、下町では古くから知られるおでん専門店だ。戸を開けてまず目に入るのは、磨きこまれた銅製の特注おでん鍋とよく使いこまれた燗銅壷(燗酒をつける道具)。設えや店構えから感じる時の流れも魅力的な店だ。下町風の濃いめの色をした出汁だが、あっさりした風味が特徴的。大トロとネギを交互に串に刺した『ねぎま』や、鍋のなかのあらゆる旨みをたっぷり吸った『ちくわぶ』、ぷりんとした触感がたまらない『いいだこ』など、いずれもしみじみと噛み締めたくなる味わい。

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神田:尾張屋


創業85年を迎える神田の尾張屋は、女将の気さくなおしゃべりと名物おでんを求めて長年通うファンが多い店。濃い飴色をした出汁でくつくつと煮たおでん種はざっと30種以上。ほんのりと舌に甘みが残る、やさしい味わいの出汁は老若男女から好まれる味だ。人気の『キャベツ巻』は、合挽肉をキャベツで巻き、出汁をたっぷり含んだキャベツの甘さと肉汁のバランスが絶妙。また、昼時のみ提供している『おでん定食』は、大きめの茶碗にたっぷり盛られた茶飯に、おでんの盛り合わせ、小鉢、香の物、味噌汁がついて700円。下町の良心ここにあり。

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日本橋:日本橋 お多幸本店


日本橋にある、関東風おでんの老舗。甘辛く、濃いめの出汁で煮込んだおでんが特徴的な店だ。夜は酒とおでんを求める客で賑わうが、同店の名物『とうめし』は昼時にも楽しめる。こんもりと盛られた茶飯にどっかりと豆腐のおでんを乗せ、おでん出汁がかけられた豪快な一品だ。この名物飯に煮卵入りのダイコンの煮付け、しじみの味噌汁、サラダが付いた定食が650円と日本橋界隈でも人気ランチの1つ。

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立石:丸忠かまぼこ店


立石駅から歩いてすぐ、アーケード街の中にある丸忠かまぼこ店は、隣接するかまぼことおでん種の専門店と同系列の小さな酒場。同店のおでん種のなかでも出色の出来ばえと言えるのが、『おでんのトマト』だ。湯むきしたトマトを丸のままクリアで雑味のない出汁で優しく煮含め、仕上げにドライバジルを散らしたものだが、それはそれは堪えられないおいしさ。トマトを崩しながら食べ進めると、トマトの酸味が出汁と混ざり合い、そこにバジルの香気が加わって、おでんというよりも上質なスープを飲んでいるかのように錯覚してしまう。

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東北沢:おかめ


代々木上原と東北沢のほぼ中間に位置する、関西風おでんの店。透き通った出汁が特徴的なおでんは、どれも上品かつ滋味深い味わいだが、なかでもタコと豆腐は外せない。柚子皮と刻みネギを散らした豆腐は、冬の酒のアテに最高だ。カウンター席は予約不可だが、掘りごたつのある2階の個室であれば、予約が可能。冬の寒い時期だけでなく、夏の暑い日でも食べたくなるような、さっぱりとしたおでんを食べるなら間違いのない店だ。

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神楽坂:恵さき


神楽坂の路地に佇む恵さきは、カウンター8席、小上がり8席という小さな店だが、肌寒さが増しておでんが恋しい季節ともなれば、連日予約で満席になる。おでんと炭火焼の2つを主軸にしつつ、一品料理も充実しているという、酒飲み泣かせの店だ。注文ごとに小さな銅鍋で丁寧に仕上げるおでんのなかでは、刺身にしても美味しいという鮮度のいいアジを使う『あじつみれ』が絶品。ふんわりとした食感で、口のなかでほろほろとほどけるなかに、九条ネギやショウガの香りが漂う。このほかにも、素材そのものに焦点を絞ったおでんが印象的で、大人のためのおでん屋と言えるだろう。

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中目黒:ホームラン


目黒銀座商店街の外れにあるホームランは、静岡B級グルメのひとつ「静岡おでん」が楽しめる小さなバー。静岡おでんとは、静岡市内とその近郊で愛されている庶民派かつジャンクなおでん。真っ黒といってもいいくらいに濃い色味の出汁が特徴で、よく煮込んだおでん種に魚粉と青海苔をたっぷりとふりかけるのが特徴。出汁は昆布と鰹がベースだが、アジとイワシを使った静岡名物の『黒はんぺん』などの練り物系と牛すじ、白モツなどを煮込み、魚介系と動物性の風味を合わせることで、特有の味わいを出している。朝4時まで営業している点でも嬉しい店だ。

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赤羽:すみた


赤羽駅から少し離れた住宅街にある、讃岐うどんの専門店。讃岐うどんの本場、香川では店内におでん鍋を置いていることが多いが、ここもその流れを踏襲しているのが特徴。こっくりした味わいの出汁でよく煮込まれたおでん種は、こんにゃく、牛すじ、ダイコンなど5種の盛り合わせに、ほんのりと甘みのある味噌と合わせたからし味噌を添えて供される。うどんとおでん。東京ではまだ馴染みのないスタイルかもしれないが、きっとハマる人は多いはず。

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浅草:大多福


浅草のおでん専門店として知られる大多福は、赤提灯や坪庭を配した店先など、情緒たっぷりの雰囲気。タイムスリップしたような気分が味わえるのは、1915年(大正4年)創業なればこそ。出汁の色合いは薄めだが、鰹や昆布だけでは出せない深みがあり、あっさりとしつつもコクがある。おでん種は『巻き湯葉』、『あわ麩』といったものから、オーソドックスなものまで約40種ほどが揃う。特製の壷におでんを入れてくれる土産は、見た目もキュートでパーティの手土産に最適。

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麻布十番:福島屋


麻布十番駅から歩いてすぐ、麻布十番商店街に店を構える福島屋は、1921年(大正10年)から続く、界隈でも歴史のある店だ。出汁は鰹よりも昆布が強く、喉越しすっきりとした上品な薄味。店内にはイートインスペースもあり、定食や酒なども提供しているが、持ち帰りを注文する客が多いようだ。店内では、おでん種も販売する。いつもにこやかな笑顔で接客してくれるおばあちゃんも魅力的な店。写真は、トマト、ちくわぶ、げそ巻き、焼豆腐、もち巾着、さつま揚げが入って971円。

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人形町:美奈福


人形町駅から歩いて3分ほど、古くから続く飲食店が軒を連ねる一角にある美奈福は、1953年の創業。名物の女将は今も割烹着姿で店先に立ち、おでん鍋を甲斐甲斐しく世話しながら訪れる客に対応してくれる。持ち帰り専門のおでん店で、単品注文のほか、おまかせ、デラックス、全種類入りなど、セットメニューが豊富。写真は、タコ、糸コン、ごぼてん、こんにゃく、卵、じゃがいも、がんもどき、はんぺん、ちくわ、ちくわぶ、昆布、つみれ、さつま揚げで、1,190円。

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赤羽:丸健水産


赤羽駅東口を出て、駅前商店街の赤羽一番街の一角にあるおでん専門店。出汁は薄めの関西風で、あっさりとしているが味わい深く、どことなく家庭の味にも近い優しい風味だ。おでん種は種類豊富で、一般的なものから、ニラなどが入った練り物『スタミナ巻き』や『カレーボール』などの変わり種もあり。店頭ではおでん種の販売も行い、キャッシュオンデリバリーの立ち飲みスペースも併設していることもあり、常に賑わっている。写真は、『スタミナ巻き』、牛すじ、もち巾着、ダイコン、ちくわぶ、ウインナー巻き、はんぺん、じゃがいも、えび巻き、『カレーボール』。

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新橋:新橋お多幸


新橋駅烏森口近くに店を構える、1932年創業のおでん店。濃い色味の出汁は鰹の風味が強く、しっかりと濃いめの味が特徴的な、関東風のおでんが楽しめる。場所柄、店内はおでんや酒肴とともに酒を酌み交わすサラリーマン客が多い。持ち帰りのおでんは、店オリジナルの赤い缶に入れられ、手土産にぴったり。こちらもまた、新橋お多幸の名物のひとつだ。写真は、ロールキャベツ、こんにゃく、ダイコン、ちくわぶ、いいだこ、はんぺん、つみれ、えのきだけ、豆腐。

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テキスト / 撮影 Takeshi Tojo
テキスト / 撮影 タイムアウト東京編集部
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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