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麻布十番の新顔であるこの店は、一見するとバーというよりは高級割烹のような設えだが、その佇まいを裏切らない空間だ。樫の一枚板を交差させたカウンターに凛と立つ、この店の主人であるゲン・ヤマモトは、まるで寿司を握るかのようにカクテルを作り出す。というのも、彼はバーマンとしては珍しく、シェイカーよりも包丁を巧みに操ることで、国産のフルーツや野菜を類希なるカクテルへと変化させるのだ。
ニューヨークとニュージャージーのカクテルシーンや、東京のトップクラスのバーを経て、ヤマモトは極めて独創的なアプローチにたどり着いた。そのアプローチとは、アメリカのミクソロジー・ブームとも、古典的なカクテルを作る技術に磨きをかける日本のバー・シーンとも一線を画すもの。カクテルは単品で注文することもできるが、ヤマモトの創造性を満喫するならば、テイスティングセット(4,300円または6,000円という価格設定ではあるが、高すぎるというのであれば他の店へどうぞ)を頼むべきだろう。私たちが味わった全ては、そのほとんどにおいて素晴らしいものだった。例えば、純米吟醸をジャガイモのピュレと合わせて、旨味たっぷりでとろみのある一杯に仕立ててみたり、高知県産のショウガを芋焼酎に、愛媛県産のレモン、ハーブやスパイスと合わせ、まるで自家製のジンジャーエールを思わせるカクテルが出てきたと思えば、スペイン産のジンと静岡県産トマトの果肉をシンプルに組み合わせ、シソの葉をあしらった一杯が登場したりといった具合なのだ。そして、どのカクテルも一口飲むたびにうっとりとため息をつきたくなるものばかり。なかでもコースの最後をしめくくった一杯は忘れがたく、それは燗をつけた純米大吟醸『獺祭50』に、冷たいイチゴのクリームを浮かべたものだったが、「温度は味わいを構成するひとつの要素」と言う彼のセオリーに納得せざるを得ない一杯だった。
用いる食材の目利きも素晴らしく、それぞれの生産地や特徴について日本語と英語の両方で説明してくれ、メニューは旬の食材を取り入れてコンスタントに変化する。わずか8席のみ、ミニマルな内装かつBGMなしという、ストイックとも言える店ではあるが、初めて訪れてもすぐに寛いで楽しむことができるだろう。
東京都港区麻布十番1-6-4 1階
アクセス東京メトロ南北線、都営大江戸線『麻布十番』駅 徒歩4分
03-6434-0652
15時00分~24時00分(日曜日は23時まで)
休み月曜日
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