イラストレーション: Haruna Nitadori
2010年05月19日 (水) 掲載
2010年4月、村上隆が新しいギャラリー『Hidari Zingaro』を、中野ブロードウェイの3階にオープンさせた。村上が旅の途中に出会った美しい雑貨や、家具やアート作品などを展示、販売しており、また、村上の目にとまった新人アーティストたちの紹介も行われている。村上のツイッター上での発言によれば、『Hidari Zingaro』での売れ行きは好調のようだ。また、村上が2008年にオープンさせた『カイカイキキギャラリー』では、2010年5月15日からフリードリッヒ・クナス展が開催中。彼の作品に一目惚れした村上が、日本の若者に彼の作品を見て欲しいと熱心にラブコールを送り続け、実現させた展覧会だ。自身の作品を発表するにとどまらず、日本のアート文化に定着させるべく、提案をし続ける村上に、GEISAI#14の会場で話を聞いた。
GEISAIは今回で14回目になりましたが、手応えはどうですか?
村上:私は最近達観しておりますから、何も考えていません!つぶれないようにすることが1番です。GEISAI#11の時に、7.5億円使って会社を傾かせてしまったので、今回のスタッフには、善意とスピリッツでやってもらっています。まぁ、その時はその時でやりたいことをやったから良いのですが、とにかく、続けて行くことがミッションです。
それから、今回、僕らの考えるイデオロギーみたいなものの一角ができつつあるのを感じました。つまり、美術界には、色々なしがらみがあります。例えば、文学界には文壇というのがあって、ライトノベルは文壇とは関係がなかったりします。僕らのアート作品も、ライトノベルの世界みたいなもの。しがらみのない新しい、アートという名前は古びていますが、同じ名前のもと、新しいジャンルとして、作り込むことができてきていると思います。
今回、期せずして、GEISAI#1と同じ規模、同じ出店ブース数で開催しました。一見少ないですが、次回からの発展する方向性が見えた気がします。年に2回開催していますが、1回は東京で、1回は台湾で開催しています。何度も言いますが、これはルーチンなので、このまま粛々と続けられればありがたいと思っています。
台湾ではまた違う盛り上がり方をしているのですか?
村上:フィーバーですよ。日本ではフィーバーも終わって、参加者も一巡したと思います。いなくなる人はいなくなり、残る人は残り、その中で、GEISAIをぶっつぶしてやる!!という頼もしい人も出てきています。そして、若年化が進んでいるので、素晴らしい。10代の人たちが偉そうな顔をしてコンセプトを語っています。そういうものを求めていたので、あと10年経てば、漫画業界くらいになると信じています。
いつも情熱的で怒っている印象があるのですが、今日はどうですか?
村上:今日は怒っていないでしょ!?ここ最近、USTREAMとツイッターに出会って、気分は最高ですよ。皆さんから最新情報など、勉強させてもらっています。孫さんも良く書き込んでいますし、ネットビジネスにも、まだまだ先があるんだなぁということを実感しています。
USTREAMとツイッターのどこに面白みを感じているのですか?
村上:僕はただ、評論家の東浩紀さんに教えてもらって、マネをしているだけですけど、ライブで色々発信できて、透明な感じが良いですよ。嘘偽りのない、ね。僕の言葉って厳しいから、文字になると結構嫌われることも多いですが、その場のトーンをわかってもらえると、受け取り方も変わりますよね。
新しく出会ったと言えば、最近犬を飼い始めましたよね。
村上:本当に偶然の出会いだったんですが、『アルネ』という雑誌で、与論島に行って来ました、っていうレポートがあって、今僕が飼っている犬のひいおばあちゃんにあたるケンちゃんという犬が出ていたんです。雑種の柴犬ですけどね。でね、去年、僕が本当に疲れてしまい、3週間休みをいただきました。その休みの間に、2週間ほど、屋久島とか与論島とか、鹿児島あたりをぐるぐるまわって来ました。そしたら、与論島でケンちゃんの孫が生まれそうで、その子犬の貰い手がいないというので、僕が譲り受けました。それがポムちゃんです。
村上さん、ツイッターでつぶやいていましたが、ポムちゃんにシナモンロールをあげたりしたらダメです。薄味なものの方が良いですよ。
村上:なんで?あ、でも昨日も、角煮を4切れくらいどっかりあげたら吐いていました。だけど、食べたそうにしているのに、待たせてしまう方が犬のストレスになると思う僕の発想は間違い?例えば、酒もタバコも好きな男がいるとする。その人に惚れてしまったのだけど、余命2年だと言われていたら、あなたはその男に対して酒とタバコを止めろ!と言いますか?
人間は自分の意思で決められるから、犬とはまた全然違いますけど……村上さんならどうしますか?
村上:好きなようにどんどんやれ、と言いますよ。最初は説教します。だけど、それで迎合しなかったら、一緒につきあいましょうと。それで天寿を全うするんだったら、相手が、自分にとっての自由をチョイスしたわけだから、それはチョイスとして認めます。もし認められないくらいのチョイスだったら余命幾ばくかでも、別れましょう、と言いますね。で、どうするの?
私はやっぱりお酒とタバコは止めてほしいと言うと思います。
村上:でも我慢してもらって、それがストレスになって、あなたの元を去って行ってしまったらどうする?他の女を作ったらどうするの?あなたのことを本当に考えているのは私なのにぃ!と思うの?
それは思わないです。相手はそういう選択をしたんだ、と納得するしかないと思います。ところで、村上さんかわいい帽子をかぶっていますね。
村上:自分でデザインしました。青山にある帽子屋さんでね、『kimiko』っていうお店で作ってもらいました。この帽子はセカンドジェネレーションです。最初は上の部分が全部パカってあくようになっていましたが、最新版では、髪をお団子に結んだ部分だけを小窓から出せるように作ってもらいました。
これから紫外線の強い季節になりますものね。私も『kimiko』行ってみます。ありがとうございました。
村上隆
現代美術アーティスト。アニメなどのサブカルチャーを下敷きにした作風が海外で高く評価され、サザビーズのオークションでは、作品が1億円で落札されたこともある。アート作品の制作のほか、アーティストのマネジメントを事業とする会社『カイカイキキ』の代表を務め、『カイカイキキギャラリー』や『Hidari Zongaro』などのギャラリーを運営している。またアートの祭典『GEISAI』も開催、アート作品の発表の場を提案し続けている。
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