日本ファッションウィークレビュー

10年目の東京ファッションの春、招待状いらずのイベントをチェック

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日本ファッションウィークレビュー

観客席最前列からの携帯電話を使用した速報レポートや、個人のファッションブログが勢力を拡大する前の2005年秋、日本のファッション業界は明治神宮外苑の聖徳記念館絵画館前に特設テントを設置して、第1回日本ファッションウィークを開催した。この新しく無駄を廃したイベントは、世界を飛び回る国際的な編集者やバイヤーたちの興味を惹くように設計され、それまでの散漫で退屈な東京コレクションにとって変わった。

長らく一流のファッション都市として君臨するパリやミラノ、ロンドン、ニューヨークに追いつくため、東京はサンパウロ、マドリッド、ソウルなどと同様に努力してきた。だが東京でのイベントは批評家たちが「ありきたりで退屈だ」と意見したとおり、主催者側の願いとは裏腹に海外からの関心を常に集めることはなかなか難しかった。しかし、日本の若きデザイナーが、コム・デ・ギャルソンのように、ヨーロッパで名高いブランドとなることを夢見ている以上、東京は、彼らが定期的に学べる場所を提供する必要があった。

早いもので、日本ファッションウィークは今年で10回目を向かえる。常に問題点を克服し、そして進化を遂げてきた。今ではデザイナーたちが海外の著名な編集者に向けてアピールするためだけの場所ではなく、デザイナーの育成の場、登竜門としても十分機能している。たとえば、株式会社イッセイミヤケ代表取締役社長の太田伸之や、雑誌ELLE FRANCEの編集長ヴァレリー・トラニアンが選考委員を務めるSHINMAI Creator’s Projectでは、若いデザイナーを育て、日本のファッションマーケットに参入する足掛かりを与えることをサポートしている。また、マニラ、ジャカルタ、ホーチミンなどアジア各都市のデザイナーをフィーチャーしたアジアンデザイナーコレクションは、成長するアジアのファッション産業の中心地としての東京の存在感を高めることを狙っている。

メイン会場を東京ミッドタウンに移してから、ファッションウィークはさらにオープンなイベントになった。ショー会場に入るためには以前と同様招待状が必要だが、ミッドタウンのショッピングやダイニングエリアが、誰でもイベントに“参加”できる場所として様変わりする。業界人が集まるショーの前後でも、特別扱いのためのロープはない。プレス用ラウンジとして使われているガラスばりのレストラン、ヤオエスタブリッシュでは、作業中の編集者やジャーナリストが覗き見られる。また普通の買い物客でも見ることのできるスクリーン映像をみるほうが、会場で下手に後ろのほうから見ているよりもショーを楽しめるかもしれない。

消費者との接点強化のために、誰でもが足を運ぶことができる多数の関連イベントも開催される。「我々は、皆様に“ファッションウィーク”をデザイナーが新作披露をするだけのイベントだと考えず、東京のファッションムードを盛り上げるためのものだと思っています」、広報担当の川島は言う。これは、日本ファッションウィークの時期に、東京のスタイリッシュな一面に着目してみるのがよさそうということだ。以下に第10回日本ファッションウィークのイベントをいくつか紹介する。

新宿高島屋 ニュークリエーターズ“日本ファッションウィークフェア”

今まで日本ファッションウィークのブランドが1箇所に集まって販売されることがなかったが、このコラボレーションにより、新宿タカシマヤは、それらのブランドの販売拠点というイメージを築いてきた。興味のある人は、8階に展開されているクークリエイターズゾーンに足を運んでみよう。G.V.G.V、HISUI、matohu、tiny dinosaurなどのブランドの新作コレクションが揃っている。ニュークリエーターズブランドと既存の著名ブランドの両方が同一スペースで販売されているのは都内でもここだけかもしれない。また、デビュー間もない、自然で魅力的なイメージのブランド、ka na taも3月25日の15時から18時まで期間限定で販売される。

日時:2010年3月17日(水)から2010年3月30日(火)まで
場所:新宿タカシマヤ
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷5-24-2
電話:03-5361-1111
ウェブ:www/takashimaya.co.jp

日本のファッションブランドを取り扱っている場所は高島屋だけではない。パルコ渋谷店にはTHEATRE PRODUCTS、mercibeaucoup,、mintdesignsのブティックがあり、ラフォーレ原宿にはfur furやNeNetが入っている。日本ファッションウィークで有名になったMIHARAYASUHIROやDRESSCAMPは、表参道と青山にブティックを開いている。もし、東京の街を跨いだショッピングツアーがしたい場合は、これらの場所も見逃せない。

ハイファッションに見るファッションの50年

キャットウォークで紹介される現在と未来のファッションショーに加え、このイベントは日本を代表する雑誌『ハイファッション』の視点から、ファッションの進化を振り返る。会場はポーラ銀座ビル3階。入場は無料。コレクションのアーカイブや過去の写真などが展示されていて、写真の中には日本のファッションを代表する街、銀座で撮影されたものも含まれている。

日本のローカル版VOGUEやELLEなどがヨーロッパのデザイナーにフォーカスする一方、文化出版局(文化学園が出資している出版社)から出版されている『ハイファッション』や『装苑』は、日本の若手デザイナーに注目し、日本独自のトレンドを築き上げようとしている。ファッションウィークで披露されるコレクションの掲載号では、普段以上に厳しい視点で、新しいスタイルが評価されるだろう。加えて、この号で、ハイファッションが2010年4月号をもって休刊することが発表される。1960年に創刊されたハイファッションは、2010年4月1日から、オンライン雑誌として生まれ変わる。

日程:2010年3月22日(月)から2010年3月28日(日)
時間:11時00分から19時00分 (2010年3月28日は17時00分まで)
会場:ポーラ ミュージアム アネックス
住所: 東京都中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
電話番号:03-3563-5501
入場無料

Claska x日本ファッションウィーク 『夜フリマ』

パーティー会場として名高いCLASKAが、ファッションショーが終わる時間に合わせてファッションウィーク版のナイトフリーマーケットを開催する。会場となる2階のスペースでは、衣服だけではなく、東京を代表するクリエーターによる著書、音楽、インテリア、コレクターズグッズなどが販売される。事前情報によると、本屋ユトレヒトや広告代理店のWieden+Kennedyのブースで、来場者全員を魅了するくらい有名な作品を販売することが明らかになっている。

日程:2010年3月26日
時間:19時00分から23時00分
会場:CLASKA

Sweet Runway

このイベントのために急いで足を運ぶほどではないかもしれないが、もし東京ミッドタウンの近くにいて、ジャン・ポール・エヴァンの作りだす芸術的なチョコレートスティレットを見てみたいのであれば、このイベントは忘れないでおこう。日本ファッションウィークの期間中、気軽に楽しめるKOOTS GREEN TEAや日本を代表する老舗和菓子店とらやなどを含む複数の店が、ファッションをイメージしたスイーツとドリンクを限定販売する。

日程:2010年3月22日(月)から2010年3月28日(日)
場所:東京ミッドタウン

上記に関する詳細情報、または、日本ファッションウィークに関する写真やデザイナーの最新情報を知りたい場合は、日本ファッションウィークオフィシャルウェブサイトを見てみよう(www.jfw.jp)。

By Rebecca Milner
翻訳 古知杏子
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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