『インビクタス 負けざる者たち』 ©2009 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.
2010年02月05日 (金) 掲載
今週末公開になる作品で注目したいのが、クリント・イーストウッド監督の30作目となる最新作『インビクタス/負けざる者たち』だ。アカデミー賞では、主演男優賞にモーガン・フリーマンが、そして助演男優賞にはマット・デイモンがノミネートされた。一流の職人は素材を見極め、丁寧な仕事をし、素材そのものの良さを伝えるが、今回、“職人”クリント・イーストウッドがいまの時代に選んだのは『ネルソン・マンデラ』。ご存じ、1994年南アフリカ初の黒人大統領となった人物だ。
物語は、マンデラ大統領が1995年に自国開催となるラグビーのW杯で、南ア代表チームを初優勝に導くまでの人間ドラマだ。アパルトヘイトの時代、27年もの間投獄されていたマンデラが、大統領就任後、最初に行ったのは、自分の警護に4人の白人を配属させたことだった。人種の壁を取り払うことで「虹の国」を目指す彼は、反発する部下を「赦しが魂を自由にするのだ」と諭した。その考えが反映された多くの政策の中から、今回イーストウッドが映画の器として選んだのが、「ラグビーW杯での南ア代表初出場、初優勝」だ。『ラグビー』というスポーツの本質である「ワンフォーオール、オールフォーワン」。この精神こそが大統領の理想の国作りにぴったりと当てはまった。『南アの恥』とまで言われた弱小チームが、「チームは国(国民)のために、国(国民)はチームのために」支え合うことで人種の壁を超えることが可能になり、やがて国をも変えていく。
映画の後半、試合のシーンで、ラグビーというスポーツを通して国がひとつになったその瞬間、観ているものも思わずガッツポーズが出てしまう。奇跡の連続に胸が震える。イーストウッドは、マンデラと代表チームが起こしたこのミラクルを観る者すべてに、ストレートに伝える。
ネルソン・マンデラ大統領を演じたのは他ならぬ、マンデラ本人から熱望された名優モーガン・フリーマン。大統領から不屈の精神を受け継ぎ、代表チームを率いる主将ピナール役は『プライベート・ライアン』、『ボーン』シリーズのマット・デイモンが演じる。2人の名優の熟した演技にも注目して欲しい。
ほか、今週末公開作品もリスティングする。
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