見逃せない2011年前半のアート

高嶺格個展、デュシャン賞10周年、岡本太郎生誕100年、横トリなど

高嶺 格「とおくてよくみえない」 “Too Far To See” イメージ画像
アートフェア東京2010 会場風景 / 撮影 : 岩下宗利 / 提供:アートフェア東京
フレンチ ・ ウィンドウ展
ブリュノ・ペナド 《大きな一つの世界》 / 2000年 / 所蔵:ポワトゥーシャラント地域現代芸術振興基金 / Photo: Christian Vignaud
yukio nakagawa exhibition -self portrait- Yukio Nakagawa, 'Self Portrait' exhibition

このご時世、不況だの閉塞感が漂っているだの、ネガティブな話は2010年でいい加減に終わりにしよう。カルチャーでも「おもしろいものはない」だの「マーケットがない」だの「終わった」だの、そんな発言はもう聞き飽きたし、斜に構えた冷めた態度には嫌気がさす。
そう、2010年の現代アートを振り返ってみれば、明るいトピックが多かった。『瀬戸内国際芸術祭2010』『あいちトリエンナーレ2010』の2つの大型芸術祭は、券売数も動員数も主催者側の当初の予想をはるかに上回る大反響をみせた。関東に目を移せば、美術館では横山裕一、佐藤雅彦、ジョン・ルーリー、フセイン・チャラヤンといった美術“外”の個展も話題になったし、ギャラリーから逸脱する表現行為で一躍時代を飾ったカオス*ラウンジの面々や、行政と新たな関係を保ちながら地域的発信を試みたteratoteraやArts Chiyoda 3331も印象的だった。こうした動きのなかでも特にcultivateやVACANT、forestlimit、ASOKOといった、既存のスペースやメディアがなくなっていくなかで、「なければつくればいい」と、表現者やその周辺が新たな“場”のあり方を求めてはじまったスペースの台頭が、2010年を象徴するトピックと言える。この時代に何を表現するか、ではなく、どうやって表現するか。それを模索した年だったのではないだろうか。

2011年の話に移ろう。

まず外せないのが1月21日から横浜美術館で行われる高嶺格の首都圏初の大規模個展『とおくてよくみえない』。さまざまなワークインプログレスを通してアート界におけるアクティビストのような表現をし続ける高嶺の、2000年代初頭から現在までの包括的な内容になるとのことで、否が応にも期待が高まる。VACANTでは1月15日から、あの伝説の前衛花人・中川幸夫が個展を行っている。高橋盾など中川をリスペクトするアーティストが参加している。 上述のteratoteraは、2月5日に『teratotera祭り』を開催。日の傾いた井の頭公園の池の上で大友良英が船上ライブを行うという、秀逸な企画。見慣れた公園の池も一変するだろう。

その大友良英の巡回企画『アンサンブルズ』は1月16日まで水戸芸術館で行われていた。2月12日から行われる『クワイエット・アテンションズ 彼女からの出発』展では2010年のターナー賞受賞作家スーザン・フィリップスも参加する。日本での作品展示が待たれていただけに、アート業界関係者も注目する展示だ。 森美術館で3月18日から行われるのは、フランス版のターナー賞とも言える、マルセル・デュシャン賞の設立10周年を記念した展覧会『フレンチ・ウィンドウ』。クロード・クロスキーやドミニク・ゴンザレス=フェレステルといった受賞作家等が出展し、フランスの現代アートを楽しめる内容になりそうだ。

忘れてはいけないのが日本の巨匠、岡本太郎の『生誕100年 岡本太郎展』。没後15年が経ち、著作は読んだことがあっても作品をしっかり見たことがある人は意外と少ないのではないだろうか。この展示では絵画や彫刻や写真等が約130点展示されるとあって、改めて岡本太郎に触れるよい機会になりそうだ。

春にかけてはアートイベントが目白押しだ。3331 Arts Chiyodaで 2月17日から開催される『TOKYO FRONTLINE』はアートフェアの新たな挑戦。3月26日、もう3回目を迎える『六本木アートナイト2011』では、草間彌生が新作を発表する。現代美術だけでなく古美術や骨董にも触れられる『アートフェア東京』は4月1日から開催。

そして最後に、2011年の現代アート界の一大トピックと言えば、8月8日から開催される『横浜トリエンナーレ2011』。本稿執筆時点ではテーマも参加作家も発表されていないが、国内外からいろいろな意味で注目される芸術祭が満を持して開催される。過去数年の動向を総括し、今後数年の試金石ともなる現代アートの一大イベント。『横浜トリエンナーレ2011』をはじめとして今年出会えるであろうアート作品は、2010年まで何かとつきまとった暗い話題を、そして「おもしろいもの」を探そうともしなかった態度を完全に払拭するような、幸福なものであってほしいと切に願う。

テキスト 岡澤浩太郎
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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