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東京にあるレストランは、約8万8000軒。この街のレストランをレビューするひとりとして、最大のジレンマは、常に「次はどこ?」となることだ。メディアの独立性を保つために、レビューする場合、無償の食事は受け入れない。匿名でレストランを評価しに行く。そうすることで、通常のお客さんが受けているサービスを経験することができるからだ。どの店にするかはいつも私たち次第なので、結構難しい。時には、信頼している友人からの評判を参考にすることもある。今回のケースでは、田舎風の食事処が寄り合った場所(特に決まった名前はないらしい)があるとの噂を聞き、フォースクエアでその写真を見て興味をそそられた。何に興味を持ったのか、このページにある写真を見れば分かるだろう。積雪量の多い長野や岩手で見かけそうな、三角屋根の丸太小屋の集まり。でもこんな東京郊外の優雅な林の真ん中で?この小さな緑地は、調べに行く価値がありそうだ。
世田谷区の裏通り、平凡な集合住宅地の中にありすぐに見つけやすいが、緑に覆われた向こうに何があるのか、事前に調べておかなければ見当つけがたい。多くの大木は神社を思わせるが、小さな門とのれんは温泉場のようでもある。だが、いったん中に入れば、なかなかお目にかかれる光景ではない。複合レストラン、もしくは3軒に分かれた食事処。都内とは思えない光景だ。
かなり密集した雑木林に佇む『雪乃下』(毎日営業、11時30分~21時00分。悪天候に備え、雨よけもある)そのウッドデッキに腰掛け、完全にどこか違うところにいる自分を想像してみよう。メニューは多くはなく、ケーキやコーヒー、紅茶ぐらいだ。食べ物は思いつきで揃えられたような気もする(が、アップルタルトは試してみる価値はある。生クリームをもう少し入れるとしっとりしそうだが)。店にいるだけで気分がいい。いつのまにか我を忘れ、気づけば夕方になっているかもしれない。
そうなってしまった場合は、夕食までこの辺りで過ごすのもいい。残りの2つの丸太小屋には、お好み焼き『古無門』(毎日営業、11時30分~23時00分)と和食『虎幻庭』(毎日営業、11時30分~15時00分、17時00分~23時00分)を提供している。『虎幻庭』は、いかにも美味しそうな外観ではあったが、このキャンプ場のような雰囲気の中、自分たちで料理する方が相応しい。そう考えたのは、私たちだけではなかったようだ。『古無門』には人がいっぱいで、熱い鉄板に近づかないよう幼児の手をぴしゃりと打つ、家族連れが生み出す音に満ちていた。
スタッフはせわしなく歩き回ってはいたけれど、サービスはよかった。シェフ自身がテーブルに案内、個人的なおすすめもしてくれた。メニューは豊富すぎて、近くに座った家族が、全員分の注文を終えるまで25分とドリンク2杯かかっていた。実にそのとおり、何ページにも渡りアルコール(主にビールと日本酒、焼酎)がずらりと並んでいるだけでなく、お好み焼きにも多彩な選択肢を揃え、ファン心をしっかりと掴んでいる。
料理の質はどうか。ここより美味しい店を探すのは大変だろう。新鮮でしっかりとした味は、他の店でよくあるように、油っこい生地に負けてはいない。熟成したチェダーチーズの風味が前面に押し出され、長く焼かれれば焼かれるほどその味わいを増すようだ。ついには目の前で、心臓発作でも誘いそうな絶品へと変化を遂げた。しかもどっさりあったタコやエビ、イカの海鮮は、加熱されてもそのままのボリュームが保たれている。中でも最高なのは価格だ。こういう癒されるようなところは、お財布事情的に痛い目に合うかもしれないと考えてもおかしくない。だが、違う。おつりもいっぱいお腹もいっぱいで店を出た。クオリティの高い東京のレストランに対して、こう言えるのはうれしい事だ。
Patisserie 雪乃下
アップルタルト 550円、小さなチョコレートケーキ 190円、オレンジジュース 450円、ジンジャーエール 450円
古無門
海鮮ミックスお好み焼き 1100円、チーズお好み焼き 1200円、サントリービール(小瓶) 450円、カルピス 400円
東京都世田谷区弦巻4-14-1
アクセス田園都市線『桜新町』駅
古無門 03-5451-8800、虎幻庭 03-5426-1166、雪乃下 03-5426-5677
各店舗による
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