東京のベストコーヒー専門店を訪ねて

老舗喫茶店からサードウェーブコーヒーまで、外国人記者が東京のコーヒーの実力を探る

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東京のベストコーヒー専門店を訪ねて

あなたは東京、と言われておいしいコーヒーを思い浮かべるだろうか。かつて、コーヒー好きにとっては不毛の地と思えたこの街に、2010年頃からいわゆる「サードウェーブコーヒーブーム」が巻き起こっている。サード ウェーブ とは、スターバックスなどに代表される、大規模コーヒーチェーンに対するアンチテーゼとして生まれたムーブメントで、特徴としては、一杯一杯丁寧に入れられること、豆の産地に徹底的にこだわっていることなどが挙げられる。この数年で数多くのコーヒー専門店が生まれ、コーヒーを入れるのは職人技である、という認識がみるみる広まった。シングルオリジンのコーヒー豆が入手しやすくなり、小規模なロースターもあちこちで見かけるようになり、先端技術を使ったエスプレッソマシンを操れるカフェのオーナーも増えてきた。一方でサード ウェーブなんて名前がつくとっくの昔から、頑なにこだわりの一杯を提供してきた老舗喫茶店も東京にはいくつも存在する。そんな東京のコーヒーショップの名店を、世界でもコーヒーを多く飲むことで知られるフィンランド出身の記者が訪れてみた。


銀座:カフェ・ド・ランブル

1948年創業の銀座の名店、カフェ・ド・ランブルは、一風変わったレトロな雰囲気を醸し出している。店内は程よく照明が落とされており、広いバーカウンターの中では数名の職人が真剣な表情でコーヒーを入れている。時代を感じさせるインテリアは、店外の中央通りに連なるきらびやかなブティックとは対照的。かなりの高齢である店のオーナー関口一郎はめったに店に姿を現すことはないが、ディテールにこだわる彼の精神は、1954年コロンビア産の豆を含む年代物の厳選コーヒー豆の置かれた店内に、今も息づいている。

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武蔵小山:Amameria Espresso

SCAA認定カッピングジャッジである石井利明の経営するAmameria Espressoは、武蔵小山駅にほど近いマンションの1階、人通りの多い道を少し外れたところにあるが、足を運ぶだけの価値がある。6種類ほどのシングルオリジンの豆から好きなものを選ぶと、エアロプレスで抽出されたコーヒーを入れてくれる。人目を引くような入れ方ではないが、この特別な手法は豆に秘められたアロマを最大限に引き出すことができる。禁煙を徹底していることに加え、フレンドリーで完璧な接客と落ち着いた雰囲気は、地元のコーヒー通から年配客まで、誰でも楽しめるだろう。

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三軒茶屋:Cafe Obscura

三軒茶屋にあるOBSCURA COFFEE ROASTERSは多角的な外部事業を意欲的に展開しており、東京のスペシャルティコーヒー業界でも指折りの会社だ。2009年の開業以来、着々と業績を伸ばしており、有名ホテルへコーヒー豆を納入し、地域社会向けの市場を開拓し、最近では六本木にオープンした写真のメッカであるIma Concept Storeでも芸術愛好家たちの口にコーヒーを運んでいる。静かで落ち着いたカフェでは、コーヒー嫌いな人をも改心させるほどの一杯を味わえる。営業時間は夜の11時まで。提供するのはサイフォンコーヒーのみと潔い。

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三軒茶屋:Nozy Coffee

オーナーの能城政隆によれば、Nozyはスペシャルティコーヒーのあるライフスタイルを顧客に紹介することを目指している。ディテールにまでこだわった2階建ての店内は、照明が落とされたリラックスした雰囲気で、最高のエスプレッソを売りにしている。世田谷公園のすぐそばに位置し、最寄駅からは早足で15分ほど。シングルオリジンの豆が一番の売れ筋で、常時6種類ほどが揃い、店内で飲むことも、豆を購入することも可能。午後の時間をたっぷり使ってコーヒーの世界を探索したければ、この店がおすすめだ。

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表参道:COUTUME 青山店

数年前にパリのコーヒー界で革命とも言えることを成し遂げたCOUTUMEが2014年4月に東京へ上陸した。限定された農場から直輸入した最高級の豆を、美しいスチームパンクのマシンを使って入れたコーヒーで、青山の住人達を驚かせ続けている。東京の店舗には、芸術的なミニマリズムのインテリア、北欧のデザイナーによるテーブルウェアでまとめられ、置かれている読み物までが、そこに通う常連客と同様におしゃれ。それでも息のつまるような雰囲気は少しも感じない。それどころか、屈託のないフレンドリーなスタッフ、東京でも指折りのサンドウィッチに、無料のWi-Fiまであるこの空間は、都内にあるコーヒー専門店の中でも最も心地よい場所の一つである。

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千歳船橋:堀口珈琲 世田谷店

堀口珈琲は、狛江に焙煎工場を持ち、上原にも専門店を構えているが、広々としたカフェで堀口珈琲を十分に堪能するならば千歳船橋の店舗を訪れよう。ドリップコーヒーもエスプレッソもあり、豆はすべて長期契約をしている中南米の生産者から直接仕入れたものを使用している。ゆったりとくつろげる雰囲気の店内は、スペシャルティコーヒーの世界に足を踏み入れたばかりの人にぴったり。 ケーキやパフェもあるので、甘いものが好きな人も幸せな一日を過ごせるだろう。

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渋谷:茶亭 羽當

大理石の敷かれた低いエントランスをくぐると、まず、木製のカウンターの背後に飾られた豪華なテーブルウェアが目に入るだろう。それでも、この店内の装飾がコーヒーの味に引けを取ることはない。むしろ、その逆で、茶亭 羽當のハンドドリップコーヒーは間違いなく最高級のものだ。8種類の炭火焙煎された豆の中から好みの豆を選んだら、きちんとした服装のスタッフが、まるで祈るかのような面持で真剣にコーヒーを入れてくれるのを見ることができる。値段は張るが、コーヒー通の人ならば一度は行っておきたい店だ。

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中目黒:Cafe Facon

山手通りからほんの少し入った路地にあるこの洗練されたパリ風のカフェは、様々な良質のシングルオリジン自家焙煎の豆を使って独自にブレンドしたコーヒーに加え、紅茶や軽食も楽しめる。通りの騒音から離れた3階という立地も良い。店内には小さなバルコニーがあり、天気が良い日は、そこでのんびりと昼下がりのひと時を過ごすのもよいだろう。店内は全面喫煙可だが、バルコニーに席を取れば、タバコの煙も気にならずにコーヒーの香りを楽しめる。

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渋谷:Paddlers Coffee

ポートランドに長年住んでいた経験を持つ松島大介が経営するこのカフェは非の打ちどころがない。渋谷のTodd Snyderの店舗の2階にある店は大きくはないが、「サード ウェーブ コーヒー ブーム」の火付け役として知られるポートランドのStumptown Coffeeの味を知らしめている。風変わりなところに位置しているにも関わらず、世界中のコーヒー愛好家たちを惹きつけてきたのも、その品質を考えると頷ける。このカフェを訪れたなら、完璧なハンドドリップで入れられたコーヒーを注文すべきだろう。ここに来るたびに、なめらかで芳香豊かな一杯を味わうことができるのは幸せなことだ。

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高円寺:Coffee Amp.

高円寺で最初にオープンしたスペシャルティコーヒー専門店であるCoffee Amp.は、シングルオリジンの豆と絶妙のラテを店の売りにしている。新高円寺駅から歩いてすぐのこの店に来たら、レギュラーコーヒーをスタッフのおすすめの豆で注文しよう。きっと満足できるコーヒーが飲めるはずだ。一日を元気にスタートできる飾りっ気のないエスプレッソもおすすめ。小さな店舗だが、その大部分を焙煎室が占めているのにも驚かされる。混んでいる日にはテイクアウトするのがいいかもしれない。

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テキスト Ili Saarinen
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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