2014年05月30日 (金) 掲載
外資系ファストファッションの進出により、最新のトレンドが低価格で購入可能となった。しかしその一方で、より品質の良いもの、長く着用できる一生ものを求める消費者も増えている。中でも、注目を集めているのが、デニム。オンオフに関わらず、毎日のコーディネートに欠かせないものとして、誰もが1本は持っている定番アイテムだ。ここでは日本が誇る国産デニムを提供するショップを紹介。糸の1本から生地、縫製、パーツ、加工に至るまで、徹底的にこだわり抜いた品々からは、熟練した職人の技や手作業による丁寧なものづくりを感じることができる。
「ヴィンテージ古着の忠実な復刻」をテーマに、アメリカンカジュアルウェアを展開する国内ブランド。それぞれのヴィンテージが生産された時代背景を考察し、糸の1本から生地、縫製、パーツ、加工に至るまで、徹底的に研究している。さらには、生産された当時の無骨さや、匂いなどの風合いを消さないサイズアレンジも追求。ファッションというよりは、実に実験的でテクニカルな試みだ。そのこだわりに魅了されるデニムマニアは多く、海外からもわざわざ訪れるほど。定番の『1001XX』は、50年代のデッドストックジーンズを解体し、そのデニムを校正する色を解析したところからスタート。1995年の発売以降、生地や部材、縫製など幾多のアップデートをしてきたモデルだが、昨年17年目にして初めてシルエットを更新したことでも話題となった。そのほか、ワークウェアをベースにした、一見シンプルだけどオーセンティックなアイテムも多数取り揃うので、デニムに詳しくない人でもファッション感覚で楽しむこともできそうだ。
「世界一」と呼び声高いヴィンテージクロージングディーラーのラリー・マッコインと「ヴィンテージ古着の忠実な復刻」を追求するウエアハウスとのコラボレーションブランド『HELLER’S CAFE』に特化したデニムショップ。アメリカのワークウェアが、年代別にデザインされているため、それぞれの時代背景や象徴するデザインを知ることができる。『1880'S~1900'S』シリーズはフロンティア(西部開拓時代)がテーマ。大陸横断鉄道が開通したこの時代のウェアは、シンプルでありながら、限られた技術を駆使する作り手の工夫が見られる。デニムは5ポケットジーンズ以前の「ウェストオーバーオール」が主流。ジーンズのルーツであるワークウェアの源泉を辿ることができる。ベーシックなワークウェア以外にも、1930年代のミリタリーやスポーツ、カレッジ&スクールなどの要素を含むものある。
国産ジーンズ発祥の地、岡山県児島で生まれたデニムブランド『キャピタル』。1984年の創業以来、一貫して手作業にこだわり、糸染めから生地開発、縫製、洗い、仕上げに至るまで、すべての技術を自社で開発し、製造を行っている。そのクオリティーの高さ、独創的なデザイン、熟練した職人の技、手作業による丁寧な仕上がりは、海外からも一目置かれているほど。恵比寿店には定番アイテムやコレクションラインが並び、メンズとレディースともに種類が豊富。シーズンテーマに合わせて生み出されるコレクションラインは、デニムを中心にオリジナリティ溢れるカジュアルウェアを展開する。立体的なボリュームやデフォルメされたシルエット、パーツの再構築、ステッチワーク、切り替え、パッチワーク、染色など遊び心満点。2014年夏コレクションは「DENIM MEN LOVE CATS」と題し、白×白で作る日本伝統の「BORO」をアレンジしたアイテムやヴィンテージエッセンスを取り入れたポップなTシャツ、70年代ヒッピーカルチャーを彷彿させる小物、ナバホ族の加工技術を用いた猫モチーフのジュエリーなどが並ぶ。夏フェスにぴったりのウェアから1年中着れるものまで、さまざまなシーンで活用できるアイテムを見つけることができそうだ。
デニムブランド『キャピタル』の中でも、手作業による職人技やボトムスにフォーカスした店舗。最も象徴的なデニムが、桐箱に収められた『TH ZIPANG 本藍』モデル。旧織機を使い、最適なテンションで織られた13.75ozのオリジナルセルビッチデニムは、股上が深く、ワタリも広い太めのストレート。糸にはインディゴ染めよりも手間がかかるとされる「かせ染」が用いられ、中心までしっかり染めされているため、はき込むことで、長い期間、色落ちの変化を楽しむことができる。『Century Denim(100年ジーンズ)』もまた、デニムマニアを魅了するシリーズの1つ。100年後に残るものを目指し、日本古来の天然色柿渋や墨などのブレンドによって染められた生地に、刺し子を加えたデニムを提案している。どことなく和を感じさせる店内では、裾上げやリペア(修理)も提供しているため、ひとりひとりのニーズに合わせた、パーソナライズが可能だ。
恵比寿にある『キャピタル』のショップの内でも、比較的ライフスタイル提案型。居住空間のようなスペースにはオリジナルの商品とセレクトされたアイテムを取り扱い、展覧会やワークショップ、ポップアップイベントなどを通して、生活をより楽しく豊かにしてくれるアイデアを与えてくれる店づくりになっている。レディースアイテムを多く取り揃えており、新しいデニムスタイルの参考になりそうだ。『アミッシュオールインワン』は人気のアミッシュパンツをオールインワンに落とし込んだもの。爽やかなデニムシャツ素材や女性らしいふんわりしたシルエットがかわいらしい。アメリカのワークウェアと日本の袴をミックスした、『AKUTAGAWAパンツ』も他にない独創的な形だ。レディース定番で大きく膨らんだスリーブが特徴的な『ブッファンT』を始め、さまざまなボトムスと合わせやすいトップスも多数並ぶ。
国内生産や天然の素材、高品質にこだわり、デニムを「育てる」ことの楽しさを伝える、日本のデニムブランド。ブランド名の『UES』は英語で屑(くず)やごみといった意味合いの「waste」から由来し、製品たちがクローゼットで眠ることなく、ぼろ布になるまで活用してもらいたいという願いが込められている。ジンバブエ綿で織られた、オリジナルのデニム生地はしなやかで強度があり、はき込むことで体に馴染むと定評がある。おすすめは『400T』の生デニム。ウエストからモモ辺りにかけて少しゆとりのある現代的なテーパードシルエットだ。ノリを落とすファーストウォッシュから自分の手で行い、その後はウォッシュによる色落ちやはくことで刻まれるシワなど、自分のデニムに「育てる」実感を味わうことができる。穴があいたら、自分で修理するもよし、ショップでリペアしてもらうもよし。デニムの洗い方やリペアの仕方など、分からないことがあれば、店内のサンプルを参考にしたり、ショップスタッフに相談することもできるので安心だ。
ヴィンテージミリタリー、アウトドアウェアの世界的コレクターとして知られる、英国人デザイナーナイジェル・ケーボンのブランド。30年以上かけて収集してきたヴィンテージコレクションは4000点を超えると言われており、1910~50年代のイギリスを中心としたヨーロッパのミリタリーウェアやワークウェアのほか、テストサンプルなど貴重なものも多く含まれている。それらを土台に発表するコレクションは、イングランド生産を中心としたオーセンティックラインと日本生産を中心としたメインラインに分けられ、どれもが本物さながらの実用性と機能性を持ち、細部のディテールまでこだわりが感じられるものばかり。2014年春夏コレクションの5ポケットジーンズは、幻のヴィンテージデニムを現代に蘇らせたもの。異なる番手のタテ糸がアトランダムにかけられた素材は、他にない独特な風合いと表情を持ち、その異常とも言える設計は、大戦下の物資不足の中での生産に端を発したことが由来する。アイテム1つ1つにそういったリアルなストーリーや歴史的背景があるのも、このブランドの魅力の1つと言えるだろう。
『Nigel Cabourn THE ARMY GYM』の詳しい情報はこちら
日本を代表する鞄デザイナー吉田克幸と、映画『ホノカアボーイ』の原作者で息子の吉田玲雄が手掛けるファッションブランド。「メイド イン ジャパン」にこだわり、日本が誇る伝統文化や職人技を世界に発信するべく、2007年に設立された。コレクションはシンプルでスタンダードなものを中心に、使い込むほどに味が出るものや、永く愛用したいもの、流行に左右されないものを提供。その中でも圧倒的に人気なのが、超長綿の剣道着素材をインディゴで染めた、剣道着シリーズ。シルエットなどのデザイン性だけでなく、着心地や肌触りも定評があることから、根強いファンが多い。デニムはカバーオール、ジャンプスーツ、オーバーオール、ワークパンツなどのワークウェアをベースに、ユーズドライクな風合いやリペア風の刺し子などが施されている。最近ではリネンを使った『HAND WORK』シリーズやレトロな柄のアロハシャツも人気を集めている。
2010年からスタートした、スタイリッシュかつ徹底的にこだわり抜いた「メイド イン ジャパン」のデニムブランド。ブランド名は日本語の「黒」を意味し、紡績や縫製、染色、加工など、デニム作りにおいて世界最高峰と謳われる日本のクラフトマンシップを最大限に活用している。シャトル織機で織り上げられた生地は岡山の吉河織物や日本綿布、巧みな職人技が光るステッチワークは宮城のオイカワデニム、そしてすべて手作業によって行われる加工は岡山の美東やハングルースが担当。ブランドの新定番『Historicism』は、スリムストレートのシルエットをベースに、素材や縫製糸、鉄ボタン、リベットなど1950年代もしくはそれ以前のパーツをもとにデニムウェアを再構築したもの。ヴィンテージを現代風に解釈した、ミニマルなデニムスタイルを着こなしたい人にはおすすめだ。
ワールドと雑誌『Free & Easy』が共同で展開するカジュアルブランド。2011年のデビュー以降、ラギッドとトラッドいう2つの異なるスタイルを融合させ、「いま」の空気感を取り入れた、独自のファッションを提案している。プルオーバジャージやシャンブレーのボタンダウンシャツ、チノトラウザース、シングルブレストジャケットなどの流行に左右されないスタンダードなアイテムから、ワークウェアに見られる素材感やギア的要素を含んだブルゾンとベスト、旬のトレンドをさり気なく取り入れたものまでが並び、さまざまなコーディネートをリーズナブルな価格で楽しめる。定番のデニムトラウザースや5ポケットデニムは1万円前後で購入が可能。シンプルなデザインのため、アイビー風に着こなすもよし、プレッピーに着回すもよしと、オンオフ問わずに活躍しそうだ。
『RUGGED FACTORY 渋谷明治通り』の詳しい情報はこちら
「自分の人生の中で残ってきたモノ。そしてこれから残っていくモノ達」をコンセプトに掲げ、デザイナー加藤博の独自な世界観をふんだんに詰め込んだフラッグシップストア。オリジナルブランド『KATO'』、『AAA』、『GRANDMA MAMA DAUGHTER』を中心に、「流行に流されないモノ達」が並ぶ。その中でも『KATO’』は長年に渡り、デニム業界で活躍してきたデザイナーならではのこだわりがデザインから生地、縫製、洗い、はき心地までに反映されており、海外からも高く評価されている。オリジナルのセルビッチデニムを使用した、ストレートデニムは、1999年のブランド創設時より販売されているロングセラー。立体的なテーパードシルエットで、はいた時のポケットやパッチ、リベットなどの配置具合が絶妙だ。この店舗では、少量生産のジーンズからデニムと相性抜群のシャツやジャケットまで、旗艦店ならではの充実した品揃えのため、トータルでコーディネートを楽しむことができる。
『MUSEUM OF YOUR HISTORY 南青山店』の詳しい情報はこちら
青山通り沿いにあるショッピングビルAOの2階に、国内ジーンズ発祥の地、岡山県児島にあるブランドの中でも特に人気の高い『桃太郎ジーンズ』が直営店を構えている。ヨーロッパでは高級ドレスシャツとして使用されるジンバブエコットンで作られる同ブランドのジーンズは、しなやかな穿き心地、耐久性に優れ、穿きこむほどに味が出ると評判だ。レディースのアイテムも展開されているので、カップルで訪れてもいいだろう。
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