パブリックアイ 第14

善竹富太郎(30)松見坂にて

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パブリックアイ 第14回

善竹富太郎 狂言師

雨なのに犬の散歩ですか?

善竹:近くのコンビニに行くところです。

お昼ご飯を買いに行くんですか?

善竹:セブン-イレブンのお赤飯おにぎりが大好きなんですよ。あとアイスクリームを買おうと思っています。

おにぎりは1個じゃ足りなさそうですね(笑)

善竹:(笑)3個は食べます。

仕事は何をされているんですか?

善竹:狂言師です。狂言には2つの流派があって、僕は大蔵流です。あと和泉流というのがありますが、いま日本には100人ほどの狂言師がいるんです。

狂言師の方に会ったのは初めてです。いつも着物でいるのかと思っていましたが、ドレスコードはないんですか?

善竹:舞台では紋付はかまですし、仕事に行く時はスーツで行きますが、普段はジーンズかジャージですよ。

善竹さんは狂言師のファミリーに生まれたんですか?

善竹:そうです。3歳から稽古を初めて、5歳で初舞台に立ちました。小猿の役でした。今やるとゴリラになっちゃいますが、ははは!初舞台はだいたい『靭猿(うつぼざる)』という演目の、小猿の役でデビューするのが習わしになっています。

狂言師以外のことをやってみたいと思ったことはありますか?

善竹:もちろんありますよ!子供の頃は警察官になりたいとか、石原軍団に入りたいとか思っていました。稽古は稽古でしっかりやっていましたが、我が家は学業もしっかりやるという教えでしたので、学校に行って、稽古をやって、友人と野球をしたりして遊んでから、宿題をやる、という日々でした。でも、大学生のころ、僕は狂言とはまったく関係のない心理学を専攻していたんですが、そのころから、お客さまにお見せする大切さというのがわかってきたような気がします。

狂言のファミリーに生まれなくても、狂言師にはなれるんですか?

善竹:なれますよ。僕のところにも弟子入りしている人がいます。それから、女性もたくさんいますよ。プロになるわけではないですが、発声だったり姿勢だったり、ちょっと稽古するだけで変わります。顔の筋肉をたくさん使って声を出しますから、まずは表情が変わるんです。仕草も日本的に、とても美しくなりますね。

舞台を見に行く時のマナーはあるんですか?

善竹:狂言というのは、室町時代のお笑いなんです。日本人は歴史が嫌いだとか、古文が苦手だとか変な先入観があって、わかりづらいと言う人が多いけれど、見たまま笑っていただいて良いんです。『能』と『狂言』で『能楽』なんですが、能と狂言は、簡単に言うと兄弟みたいなものです。能はレクイエム的な内容が多いですが、狂言は笑える内容が多いので、動きや表情が面白ければ、どんどん笑ってください。渋谷のセルリアンタワーの中にある『能楽堂』や、『国立能楽堂』など、たびたび公演をやっていますから、ぜひ見に来てください。
あと、すぐ近所に僕のけい古場があるので、見に来てみますか?

行ってみたいです!

善竹:では、ご案内しましょう(笑)

さらに“富太郎さん”から

「日本には八百万の神がいて、ずりずりと床をすって歩く“すり足”というのは、床にいる神様から離れたくない、という気持ちから始まったものなんですよ」

「狂言で使われる日本語は、ちゃんと聞いていればわかってきますよ。例えば、“まず、そろりそろりとまいろう”という言い回しがあります。そろり、というのはゆっくり、ということです。ゆっくりゆっくり旅路を行こうという意味ですね」

「このあたりでおすすめなのは、食べるなら『ボラーチョ』、甘いものなら『ル・シャン・ド・ピエール』でしょう」

善竹富太郎ウェブ:goodbamboo.net/

テキスト 東谷彰子
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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