2013年01月23日 (水) 掲載
ワインブームにもさまざまあるが、ここ数年は「自然派」への人気がとくに高まっている。ここでは、無農薬または限りなく低農薬で土壌、ブドウ、ワイン造りを行う生産者が手がけるワインを広く「自然派ワイン」と捉え、そうしたワインを中心に取り扱う店に焦点を当てた。自然派ワインだけを扱う専門店から、店主の独自セレクトが光る街の酒屋、暮らしを彩る要素の一つとしてワインを扱う雑貨店など、さまざまなアプローチで自然派ワインを紹介している店を10軒紹介する。インターネットで簡単にワインを買える便利な時代ではあるが、造り手の思いが詰まったワインを選ぶには、それを代弁してくれる人がいる店であれこれ相談しながら選ぶのも楽しいものだ。自分の好みに合う、飲んで美味しい自然派ワインと出会うためのガイドとなれば幸いだ。
白金台駅すぐ近くに2012年にオープンした自然派ワイン専門店『pcouer(ピクール)』。買う側の立場から見た「選びやすさ」を意識し、選択肢の広いワイン店でありたいという、インポーターの垣根を越えたラインアップが特徴的。フランスワインが7割以上、他にイタリア、スペインワインも一部取り扱う。1,000円~3,000円代のものを中心に、自宅で気軽に楽しめる自然派ワインが揃っている。店頭に並ぶすべてのワインを実際にしっかり試飲しているスタッフのアドヴァイスは非常に的確で、今夜の献立に合わせる1本を選び出してくれるセンスも頼もしく、家の近くにあったらと願ってしまう店だ。
都内で数店舗展開している『はせがわ酒店』だが、日本酒の品揃えの良さで知られている亀戸店は自然派ワインが現在のように浸透しはじめる前から取り扱っていたことでも定評がある。フランス、イタリアの自然派に限らず、山形県の上山、長野県の小布施をはじめとする国産ワインにも力を入れているところが特徴。日本のワインについて知りたくなったら訪れたい。また、店内には有料試飲できるバーを併設しており、その時々のおすすめをグラスで少しずつ試すことができるのもうれしい。東東京で頼りになる専門店といえるだろう。
原宿駅から歩いて10分ほどのところにあるワイン専門店『ラ・カンティーナ・ベッショ』は、自然派であるとは前面には出さないものの、造り方はいたってオーガニックで、真摯な姿勢でワイン造りに取り組む生産者にこだわった品揃え。イタリア、スペインを中心とするヨーロッパのワインを軸に、ニューワールド系まで2,000銘柄ほどを扱う店内には所狭しとワインが並び、まさに「カンティーナ(ワイン蔵)」といったところ。取引先の半分以上が飲食店ということもあってか、比較的マニアックなワインが揃う。ワイン愛に満ち満ちている店主とのおしゃべりも楽しく、臆することなく質問を投げられる。
外苑前にある雑貨店『doienel(ドワネル)』は、最小単位のプロダクトというコンセプトでセレクトされたアイテムが揃うショップ。自然派ワインも、生産者の姿勢や哲学に個性が宿るアイテムのひとつとしてとして取り扱う。表情豊かなエチケットのデザインも自然派の個性として捉え、食卓や生活を彩るアイテムとしてワインを紹介しているところがユニークだ。店内で扱うイタリア製の紙を日本の職人が箱に仕立て上げたギフトボックスにワインを詰めて贈るといった、雑貨店ならではの買い物が楽しめるところも魅力。フランスワインを中心にシードルやブドウジュースも揃う。
千駄木のよみせ通り沿いにある『リカーズのだや』は、長年商店街で愛されてきた酒屋だが、3代目店主のワインと日本酒への熱い思い、造り手と飲み手の距離を近づけるための販売店としての創意工夫や、ワインの知識が素晴らしい。フランス、イタリアの自然派ワインに限らず、日本というテロワールに根付いたワインを広く知ってほしいとの考えのもと、国産ワインの取扱い点数も豊富。定期的に開く試飲会もユニークで、参加者は1品おつまみを持参するなど、より自然体でワインを楽しんでほしいという考えが伝わってくる。お客とあれこれ話をしながらリクエストに沿う一本を選び出すのが何より楽しいと語る店主自身も魅力的な店だ。
恵比寿駅から歩いて5分ほどのところにある、自然派ワイン専門店『3amours(トロワザムール)』。年4回はフランスへ赴き、生産者を直接訪ねて信頼関係を築くことをモットーとし、2フロアから成る店内はフランス、イタリアを中心に豊富な品揃え。生産者、飲食店、飲み手の3者の関係性を大切に考え、ワインと料理を楽しむための仕掛けとして、店内にテイスティングバーを併設。同店のワインを扱う飲食店とのコラボメニューなどをつまみに、日替わりで15種類ほどのワインを気軽に楽しめるのは、初心者にもワイン好きにもうれしい。まずは自然派ワインを知ってみたいという人におすすめできる。
駒場公園からほど近い、航研通り沿いにあるイタリア食材専門店『PIATTI(ピアッティ)』では、店で販売するハム・サラミ、チーズ類、ドライトマトなどをより美味しく楽しむためにワインと合わせてもらいたいという考えのもと、店主自ら厳選したイタリアの自然派ワインを取り扱う。堅苦しく捉えることなく、イタリアの美味しい食事をもっと気軽に楽しんでほしいという姿勢がよく表れたラインアップで、2,000円代を中心に白、赤、スプマンテなどが15種ほど並ぶ。食材専門店ならではのワインに対するアプローチが楽しく、イタリア好き、イタリア料理好きにはたまらない魅力がある店だ。
中野坂上駅すぐ近くにある『藤小西』は、ワイン好きの間ではよく知られているショップ。自然派ワインはフランス産を中心に1,000〜2,000円代のデイリー向けから、5,000円以上のものまで幅広いラインアップ。直接ドメーヌと契約している限定販売の銘柄もあり、生産者との距離の近さが魅力の店だ。店内奥にはスタンディングバー『プチコニシ』があり、店舗で購入したワインの価格にプラス700円で持ち込みが可能。気軽にワインを楽しんでほしいという店の姿勢が随所に感じられる。
恵比寿ガーデンプレイス地下にある、ワインとグロッサリー、ワイン関連グッズなどを扱う専門店。自然派以外も多く取り扱う大規模店だが、自然派のなかでもとくに人気のあるフランス、イタリアを中心に、まだ自然派の造り手がそれほど多くはなく、取り扱う店舗も少ないカリフォルニアなどのニューワールド系も扱う。初心者からマニア、ソムリエやワインアドバイザー試験対策の人まで、幅広いニーズに応えてくれる。価格帯もデイリー使いにちょうどいい1,000〜10,000円以上の高級ワインまで豊富に揃う。
銀座三越新館1階に入る、自然派ワイン専門店。アルザスやロワールを中心に、フランスの自然派を多く取り扱う。自然派ワインをもっと気軽に楽しんでもらうための初心者向けセミナー(1,000円)や、銀座で続く老舗酒屋ならではの提案として、界隈の飲食店でワインとともに老舗の味を楽しむツアーなどを定期的に開催しているのも魅力。たとえば、天ぷらや鰻と合わせてワインを味わうといったユニークな試みなど、ワイン好きの心をくすぐるものばかり。しっかりした知識に裏付くスタッフの対応も心強く、銀座で買い物する時には立ち寄りたくなる店だ。
Copyright © 2014 Time Out Tokyo
コメント